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「スタンピート発生!魔の森の見張りからの報告あり!10時の方向に小型の飛行魔獣、2時と、正面から昆虫型の複合群生の突撃だ、第6騎士団、総員要塞から出撃せよ!!」
この第6要塞に年に数度ほどあるスタンピートの発生だ。
のんびりと騎士団の控室で武器の手入れをしていた騎士達は、普段はのんびりとしたダンダップの厳しい警戒の声に、事態を把握して一目散に持ち場に向かう。
第6に要塞が設営されている理由がこれだ。
ここの要塞の近くにある魔の森から年に数度ほど魔獣が大発生して、人の居住地に向かって襲いかかってくるのだ。
ここ辺境の地で魔獣たちを止められなかった場合、魔獣たちはそのまま勢いを増して王都に突入する。
辺境の牽強なる守りは、王国の安寧に必須なのだ。
警報音が要塞に鳴り響き、騎士達があちこちを走り回る。
今日はマティアスとカイルの二人は、久しぶりに第1要塞での会議に出席するため、第6を離れていた。
今日魔の森の警備の担当だったのは、ヒューイ、デューイー、そしてルイの3人組だ。
この騎士団に入る前からの幼馴染という事もあり、戦闘の際も3人の息はぴったりだ。
まだ若いながらも勇敢で、この危険な魔の森の警備をいつも率先して引き受けている。いざとなれば隊が到着するまでの足止めとして、命をかけて武を振る舞う。
3人は騎士という己の仕事に誇りを持っていた。
スタンピートの発生を目視で確認し、緊急連絡魔法を要塞に打つと、3人の頭脳であるルイが言った。
「いいか、訓練通りだ。ヒューイがまず正面から大型魔獣の最初の一撃を引き受け、群れの足止めする。受けきってスピードが鈍くなったらすぐに後退する事。ヒューイが大型の攻撃を受けているその間に、デューイが10時の方向からの飛行型魔獣に炎を放ってあいつらの数を減らす。そして俺が囮になって谷まで逃げて、他の個体を群れから引き離す。
第6の本部隊が応援に到着する来る頃には、群れが散り散りに乱れて、一気に壊滅できる状態にしておく。なんとか逃げるのに成功したら全員要塞に戻る事。死んでしまう前に救援要請の信号魔法を打つこと、みんな、分かったな」
何度も訓練してきた通りに戦えば、この規模のスタンピートであれど間違いはない。
ただ、ここにいるのはたったの3人、この3人で限界までスタンピートを足止めするこの戦い方は尊い犠牲がともなう作戦だ。
特にヒューイは一人で大型魔獣の一撃を引き受ける事になり、攻撃を受けそこねると致命傷になりかねない。
だがこの3人はそんな事に怯むような騎士達ではない。
赤い目を爛々とさせて襲いかかってくる魔獣たちに、計画どおりに3人は切り込んでいった。
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「はあ、はあ、なんとか逃げられた。まさか一撃を受け止めた後に、魔獣の足がぬかるみに取られて転んでくれるとは・・」
大型魔獣の懇親の一撃を受け止めた後に、作戦通り逃げ出したヒューイは、まさかあの大きな魔獣の攻撃を真正面から受け止めた自分が、無傷のままで要塞に戻ってこられるなど、考えもしなかった。
(最近怖いくらいに運がいいんだよな)
「おい、まさかヒューイか? 一体なぜお前ここにいるんだ? 大丈夫か?」
驚いた顔でヒューイの前に立っていたのは、飛行型の魔獣に炎を放っていたはずのデューイだ。
下手をしたら飛行型の魔獣にさらわれて、崖から落とされかねない危険な役割だったはずだというのに、デューイは頬にすこしかすり傷を負っただけで無傷なようだ。
「上手く一撃を受けた後に魔獣がぬかるみに足を取られて転んでくれて、その隙にそのまま逃げ出せたんだ。きちんと一撃をくらったけれど無事だったぜ、ほら」
ヒューイはそういって、持っていた盾をデューイに見せた。
ヒューイの盾には見るも無惨な大きな魔獣が作ったばかりの凹みがあった。
「デューイー、お前こそどうしたんだ」
「俺は飛行型の魔獣にあの後火を放って、魔獣の怒りを買って足を掴まれて空を飛ばれたんだ。だがその後、魔獣の足の下でもがいていたら、空からそのまま真っ逆さまに落とされたんだ。そして落ちた先が奇跡的にあそこの鶏小屋だったんだ」
デューイの指さした先には、綺麗な人の形にへっこんでいる鶏小屋のトタンの屋根が見えた。
次に遠くから歩いてくる騎士が見えた、ルイだ。
「ルイ、お前どうした ?? なぜお前、無事なんだ??」
ルイは全身がずぶ濡れではあるが、傷はない。
「わからん。必死で魔獣の群れから逃げていたら、川までたどり着いて、そこから泳いで逃げ切る事ができたんだ。俺に攻撃を掛けてきた魔獣は、ラッキーな事に嫌水性の魔獣だったらしいんだ。
どこかで魔獣に囲まれて、ひどくいたぶられるとおもっていたのに、一体全体この所の運の良さはどうなってるんだ・・」
そして、ヒューイは大事な事に気がついた。
「おい、ちょっとまて。ということは・・」
3人は要塞の物見の台に大急ぎでかけ戻って、先程3人が逃げてきた魔の森の方を見た。
黒い煙がモウモウと上がっている。
あわてたルイが魔の森に通信魔法を展開すると、ビリビリとした魔力の中、騎士仲間の焦った大声が響いた。
「おい、お前ら3人一体どうなってるんだ!!! 作戦はどうした、なぜ誰も前線にいない!!」
ヒューイが答えた。
「先輩なにいってるんですか、俺達みな立派にやりとげました! みな無事に逃げ切って今要塞に戻っています、全員無傷です!」
「そ、そうか。それは本当によかった。だが、お前らが無事逃げ切れてしまった事で、誰もスタンピートの魔獣の群れの足止めがいなくなったんだ。中央が突破された。まずい事になったぞ・・・」
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それより少し前。
「あれ?ドルマちゃんは今日どうしたの?」
要塞内で昼食配達を担当するメイドが誰よりも朝が早く、夜の遅い制服管理室の明かりがついていない事に気がついた。そして隣で一緒に配達する同僚に話しかけた。
「ああ、あんた知らなかった? 今日はめずらしい事にドルマちゃん高熱でお休みなんだって。
寮の部屋からでていないらしいけど、あの子は対人恐怖症で誰とも話しもしないし、心配だからメイド長がさっきわざわざ部屋の前に薬とおかゆを届けてあげていたわよ」
「そうだったの。若いのに対人恐怖症だなんて気の毒だわ。一人で病気で心細いでしょうに。
ドルマちゃんは騎士団の管轄なのに、私らメイドのエプロンでも、孤児院の繕い物でも、何でもよろこんで繕ってくれるいい子なのにね。しかもあの子に繕ってもらうとちょっと運が良くなるとか、そう言うじゃない」
「そうそう、第6の騎士団に兄がいるのだけれど、ドルマちゃんに繕ってもらえるようになってから、滅多に、怪我しなくなったって騎士団では有名な話しだよ」
「でもそんな良い事ばかりってあるのかしら。運とか不運とかそういうのの帳尻ってのは、どこかで合うもんじゃない?」
「さあねえ・・難しい事は分からないわ。さあ、まだ半分も配達終わってないよ、早く行こう」
「あら、大変! 急がないと」




