2-20 割と気が合う?
(とてもわかりやすかったわ。先生の授業よりもすんなり頭に入ってきたぐらい……)
2時間ほどルシウスに経済学を教えてもらったベルローズは、彼の話を聞きながら取ったノートを見返しながら感動する。
ルシウスは2時間の間ずっと話し続けていたので喉が渇いたらしく、飲み物を取りに行っていた。
「どーだった? あいつの授業」
「とてもわかりやすかったわ。経済学でここまですんなり理解できたのは初めてよ」
「ふーん」
ベルローズの反応につまらなさそうに発したリアは不貞腐れた表情で言葉を続ける。
「まあ確かに、話をちょこちょこ聞いてる感じではわかりやすかったけど……でもあの性格がなー、やっぱり嫌い」
ムスッとしながら言うリアにベルローズは苦笑した。
「でもリアがそこまで嫌うなんて珍しいわよね」
「私も別に最初から嫌ってたわけじゃないんだよ? あっちは最初から嫌いですオーラ出してたけど。まあ多分私がずっとあいつを警戒してたのが面倒だったんじゃないかな?」
「警戒?」
「そ。ベルローズに前世の記憶があるのは街で会ったときから知ってたけど、ストーリーから逸れたとは断言できなかったじゃん? だからあいつのことちょっとだけ警戒してたんだよね、まぁ本来なら自分を監禁する相手だもん。仕方ないよね」
「それは……そうね」
リアの言葉に前世を思い出した自身がルシウスから離れようと躍起になったことを思い出したベルローズは少し表情を暗くして頷く。
しかし、リアはそんなベルローズに気づいていないようで言葉を続けた。
「で、あっちもなぜか嫌いですオーラ出してたから仲良くは絶対なれないなぁと思ってたんだけど、まぁ関わらないっていう選択肢も普通にあったから、あっちがレイン先輩の生徒会の仕事が終わるのを待つためにちょくちょく生徒会室に来てたときに会釈するぐらいの関係だったんだけど……」
「だけど?」
「私1回ベルローズが入学する前に、レイン先輩とリオネ先輩にベルローズと会ってみたいって言ってるんだよね」
「そうだったの? 知らなかったわ」
「知らないのは当たり前だよ。あいつが止めたんだから」
ベルローズの驚いた表情にリアは苦虫を噛み潰したような表情で返した。
「ルシウス様が?」
「あいつしかいないよ、そんなことするの。色々理由つけて止めてきてさ、その後1回二人きりになったとき派手に口喧嘩しちゃって……私はズバズバ言いすぎる所あると思うけど、あっちは回りくどすぎてさ。多分相性が壊滅的に悪いんだろうね。まあその後からはずっと今みたいな感じ」
「そうなんだ……」
思い出すだけで顔をしかめるほどルシウスが嫌いらしいリアは、うんざりとした表情で話を閉じた。
その後もしばらくぐでーんとしていたリアは、おもむろに身体を真っ直ぐに戻してベルローズのほうを見る。
「あいつと色々あったけど、結局最初からやり直すってレイン先輩から聞いた。ほんとうなの?」
「……えぇ、私も頑ななところがあったから」
「そっか」
ベルローズの言葉にリアは真面目な顔でそう呟いて、ふいっと視線を逸らした。
「リアは反対する?」
「……しないよ。ベルローズが決めたことを応援するって決めてるから」
「リア……ありがとう」
リアの心強い言葉にベルローズはじーんと感動しながら感謝する。
「あいつが嫌いなことには変わりないけどね」
少し真面目くさった空気を飛ばすように、軽く笑いながら言ったリアにベルローズは苦笑した。
「でもだったら今日も私はいないほうが良かったよね。過保護発動しちゃった、ごめん」
「ううん……ルシウス様との関係をやり直すとは言ったけど、どうすればいいのか戸惑っていたから多分二人きりだとぎこちなかったと思う……だからリアがいてくれて助かったわ」
「ベルローズぅ、大好きだよー!」
照れくさそうに笑いながら言ったベルローズにリアは涙目になりながらぎゅっと抱きつく。
「でも、明日からは私も生徒会に行かなきゃだし二人きりになっちゃうね」
「そうね、でも多分もう大丈夫。普通にできそう」
「そっか良かった!」
ベルローズの言葉にニカッと笑ったリアはその後もしばらくギューギューとベルローズにくっついていたが、飲み物を持って帰ってきたルシウスによって引き剥がされた。
「ベルにくっつくな、お前の荒々しさが伝染ったらどうする」
「ベルローズが私ぐらいで荒々しくなんてなるわけないじゃない」
「それは確かにそうだな」
刺々しく発されたリアの言葉に妙に納得したように頷くルシウスを見て、(この二人、割と気が合うのかしら……?)と思うベルローズであった。
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