スーパー
海外旅行の楽しみの一つはスーパーだ。私が行くような国には大抵スーパーがある。ただ、バングラでは少ないし規模も小さい。都市部ではスーパーというよりショッピングモール的な施設が多い。中は基本的にテナントの店が並んでいて、スーパーは入っていない事が多い。シレットのUnimartという所はショッピングモールだが、立派なスーパーがある。全体に新し気で、フードコートもあり、ゆっくり過ごすのに良いので毎日のように行ってしまった。朝から半日ほど茶畑なんかを散策して、Unimartでお茶と買い物をしてからホテルに帰る、というのがなんとなく日課になった。混んではいないので快適に過ごせる。Unimartは立派なのでモノも高い。フードコートなど、外の露店で食べる何倍もする。でも、ちゃんとお客は居る。子供の頃、田舎の方に住んでいて、年に一回くらい親と都会に出てデパートでごはんを食べた覚えがあるが、バングラ人にとってはそんな所なのかもしれない。
バングラのスーパーは、見た目には日本のそれと同じ感じだ。でも、まず目に付くのはやたらと多い店員。そして必ず、「何かお探しですか」などと声を掛けて来る。そこからがさらに違う(iow、面白い、奇異、etc.)所で、私が店内を移動しても付いてくる。再び移動しても、また付いてくる。かなりしばらくの間、離れない。時折、私が手に取った商品を覗き込んで説明を始める。このスーパーは、いつ行っても混んでおらず、店員は明らかに客より多い。いきおい、マンツーマン対応が可能なのは分かる。で、実際にそうなっている。
最初は万引きの監視かと思った。そのくらい、ピッタリと付いてくる。でも、どうやらそうではないようだ。バングラ流のサービス、おもてなし、の様だ。電車やバスや街中で話しかけて来るバングラ人に対してもそうだが、やたらついて来られたり話しかけられたりするのを厭わなければ、なんという事は無い。ただ、現代日本の様に公共交通機関からスーパーまで「無言&セルフ」が浸透している中で暮らしている人からしたら鬱陶しく、困惑するだろう。まずは慣れる事で、慣れてしまえばバングラの旅は快適で、むしろ楽しくなる。いい機会なので、買い物に関係ない事を聞くのもいいだろう。生活事情を収集するのに良さそうだ。ただ、英語が「良く」出来る人は稀で、大抵は元気な英語の挨拶のやりとりの後は、話しがややこしくなると通じなくなる。
レジ袋は気前良くくれる。普通のレジ袋だったり、網だったり、マイバッグに使えそうなものまで色々だ。先に「環境先進国」なんて書いてしまったが、レジ袋やビニール袋はガンガン使われている。しかし、日本のスーパーに付き物の食品トレイが見当たらない。というか、生鮮食品は大抵、包装無しでそのまま並べて売られている。果物や野菜なんかも単に山積みだ。そして秤が置いてあり、重さで売っている。考えてみると、これはヨーロッパと同じだ。スーパーに良く行く私は、日本で肉や総菜を買った後の食品トレイにいつも、何とかならないものかなあ、と思っていた。バングラにその回答は有った。食品トレイはもちろんリサイクルできるが、リサイクルは最後の手段であって環境を考えるなら如何にリサイクルを避けるかが重要だ。その点、バングラは優れている。でも、少し豊かになったらバングラもリサイクルに手を染めてしまうのだろう。それが先進国のやり方だと勘違いするかもしれない。
包装をしないどころか、鶏なんか生きたまま大きな籠に入れて売っている。買った人は足を持ってぶら下げて帰る。環境面から考えたらこんな合理的な事は無い。おしゃれなスーパーではペットショップよろしく、ガラス張りのいくつかの小部屋に生きた鶏が入っていて、値段票が付いていた。そのまま買って帰る方式なのだろう。言えばさばいてくれるのかもしれない。新鮮さでは魚も負けてはいない。大きな魚を除いて、あまり切り身では売っていない。一匹まるまる売っている。スーパーなどでは敷き詰めた氷の上に綺麗に、時に芸術的に、並べて売られている。一方、市場では同様に並べて売られているのだが、魚が生きている。口をパクパクさせたり時折跳ねたりする。これ以上の新鮮さは無い。生け簀で売っているものもあるが、大抵は生きたまま単に並べてある。
スーパーにはペットボトル飲料は普通に並べられている。そこで面白いものを見つけた。ラベルに「パレスチナを支援します」と書いてあり、パレスチナ国旗があしらわれている。1本買うと、1.4円ほどパレスチナに寄付される仕組みだ。これは今般のイスラエル・パレスチナ戦争以前からのようだ。同じイスラム国家として、同情的なのが伝わって来る。
輸入品は高い。これはたぶん国の政策だろう。同じ飲料でも、バングラ製造は20円で、輸入品は100円だったりする。お菓子もそうだ。これでは私でもバングラ製を選んで買ってしまう。
フードコートにはサラダバーがあった。サラダバーだけで5人くらい店員が居たのはまあいいとして、1g=1.4円の量り売りシステムだ。日本でも、1g=1.5~2円くらいの量り売りのサラダバーはある。つまり、非常に高いのだ。私は試しにと、軽い? 食材を選んで盛りつけたのだが、400円くらいになってしまった。外に出れば、安い食堂では1食50円から100円の物価だ。えらく高級な「サラダ」を食べる事になった。もちろん、味はとても良かった。
お米の値段に興味があった。日本では安い所を探して、キロ350~400円の玄米を買っている私だが、バングラのコメはさぞかし安いのでは、と期待していた。何せ、見渡す限りの水田だ。スーパーでも市場でも量り売りが基本だ。一部、日本のような袋入りもある。見れば、値段はキロ50~100円程度だった。これには、あれっ、と思った。もちろん、日本よりは遥かに安い。ただ、露店ではてんこ盛りのご飯を20円くらいで出すので、さぞかし米は安いだろうと勝手に思い込んでいたのだ。
乳製品は、自国で生産している割には高かった。でも、例えば200mlの牛乳パックは20円とそれほどでもなかったので時々購入した。日本の牛乳よりコクがあっておいしい気がした。この「パック」が面白い。さすがにスーパーに並んでいる物なので、ビニール袋では無いが、単に封筒型なのだ。使用途中で立たせておくことが出来ないは不便だが、ゴミ箱への収まりがいい。いちいち切って開いたり、潰したりが不要だ。製造も楽だろう。日本で日常的に見ているモノが違う形態で並んでいると、「あっ、こんなんもアリか」と思う。食品に限らず、バングラを旅するに付け、ありとあらゆる日本の「当たり前」に「?」がついていくのは面白かった。




