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お茶畑

アッサム地方が近いからか、シレットはお茶で有名らしい。実際に、街から歩いて行ける所にお茶畑が広がっている。街中(まちなか)には、それほど興味をそそる観光スポットは無さそうだ。でも、街歩き自体が楽しいに違いない。観光地だからだろうか、渋滞する通りを人を乗せた像がいきなり現れ、のっしのっしと通り過ぎたりする。

ホテルで朝食をとった後、歩き始めた。地図にはお茶畑と、その先にエコパークが載っていた。動物園(ZOO)とも書いてある。今日は、ここまで歩いてみよう。片道1時間ほどだろうか。バワール国立公園の経験から、施設的には余り期待していなかった。着いて見ると、エコパークの入口にはしっかりゲートと窓口があった。ただ、入場料は20円と安い。支払っているのは私だけの様な気がしなくも無かった。

歩いて行くと、「ZOO」は確かにあった。いくつか檻がある。でもほとんど動物はおらず、空っぽだ。「シマウマ」と書かれた広い柵の中に、かろうじて普通の鹿が何頭か居た。まあ、概ね想定の範囲内だ。一番奥まで行くと、普通に裏手の村に出た。そこにもゲートらしきものはあったが人はいない。つまり、こっちから入れば入場料を払わずに済む。

さて、エコパークを抜け、いよいよ茶畑に向かった。途中、これまでダッカなどでは見かけなかった農村風の通りを過ぎて行く。もちろん道は未舗装で、裸足で歩いている人も多い。街中よりさらに家畜はそこここに居て、人間と一体となって「住んでいる」という感じだ。戦前の日本の農村風景もこんな風だったのかもしれない。道を聞くと丁寧に教えてくれる。案内してくれる場合もある。見た目は少し朴訥としているが、やはりバングラ的親切さ、壁の無さを感じる。子供たちはどこまでも明るい。

着いた茶畑は広かった。思わず、「うん、これだ!」と笑顔になってしまう。濃い緑と小川の流れ、青い空。ちょっとした桃源郷のようだ。車も少ない。時折、トゥクトゥクやバイクが走り過ぎるくらいで至って静かだ。全体に緩い丘陵地帯になっていて、散策にほど良い。道は舗装されていたり、未舗装だったり、狭かったり、広かったり色々だ。地図の情報を頼りに近くの村に抜けようと、歩いていると山道に入ってしまった。そして直ぐに小川に出た。橋は無い。3mくらいの幅がある。見れば、人や牛の足跡が対岸に続いている。つまり、ここで渡渉しているのだ。バングラで渡渉をするとは思わなかったが、裸足で草履で歩いていたこともあり、そのままじゃぶじゃぶと川に入った。幸い泥底は思ったより固く、潜らない。難なく渡り終えて対岸の道を進むと、やがて目的の村に出た。牛の取引でもしているのだろうか。村の中心の広場には大きなテントが張られ、沢山の人と牛が居る。そこを通り過ぎて、しばらく田園地帯を歩いた後、ホテルへの帰路についた。

国立公園も良いが、別に管理された緑の森に行かなくても、シレットではこの「茶畑散歩」で十分に森林浴を楽しめる。お奨めだ。市街地に近いので歩いたって行ける。ここには人々の生活感が息づいている。近隣の村から茶畑に「出勤」して行く人達と、抜きつ抜かれつ歩く。大きな荷物を頭に載せたり、手に鎌を持っている。受け持ちの茶畑に向かっているのだろう。しばらくすると、そこここで作業を始める。茶摘みをしている人、枝を払っている人、水路を点検している人などなど。茶摘みは小枝を鷲掴みにして手鎌でバシッとぶった切っているので、余り「茶摘み」と言う風流な情景ではないかもしれない。茶畑は人力で維持されているので、日本のように機械を入れるための畝が奇麗に作られている訳ではない。どちらかと言うと庭木がボウボウと茂っているように見える。道では、数頭の牛を連れた人も時折通り過ぎる。近くの村から茶畑に放牧に行っているようだ。実際に、お茶の木に見え隠れしながら草を食べている山羊がいたりする。カルガモ農法のように、草刈りの変わりなのかもしれない。

何はともあれ、茶畑ののどかな光景には心を癒される。それほど風光明媚という訳ではないが、人々の生きる息吹が感じられる所が、安らぎと落ち着きを与えているのだろう。同じ自然と接する行為にしても、登山やカヌー、スキーなんかと何かが違う。人と、自然がゆったりと溶け合っているような心地よさを覚えた。そんな良き散策であった。

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