1話 桜舞う新学期、悪縁の幼馴染とお隣さん
「わぁ、桜並木が綺麗ー!」
窓を開けると日差しが入ってきた。決して暑くはなくポカポカしていてちょうどいい気温。
「綾香ー! 学校遅れちゃうよー!」
下から大親友の優芽の声がした。
窓から身を乗り出して声のしたほうを見てみると、優芽が私に気づき手を振った。
私も手を振りかえして、この景色をもっと見たかったなぁ、と後ろ髪を引かれる思いで準備をした。
春はいつも桜並木の桜が満開に咲く。
今からあそこを通るってだけでわくわくしちゃう。
だから、私は春が大好き。
ルンルンの気分で部屋を出る時に近くの本棚に小指をぶつけてしまった。
前言撤回。
こういうのがあるからやっぱり春は大嫌い。
「いったぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
うう、と半泣きで階段を降りるとさっきの叫び声でお母さんが近寄ってきた。
「綾香、大丈夫?」
「あー、多分?」
と、いいつつお母さんに見せると、ちょっと擦りむけてるわね、と言って絆創膏を取りに行った。
「朝から俺の妹はドジかー もうちょっとまともな妹が欲しかったね」
パジャマ姿でご飯を食べている凪兄。
「私も、もうちょっとまともな兄が欲しかったよーだ」
んべっ、と舌を出す。
喧嘩しないの、とお母さんが私の足に絆創膏を貼ってくれた。
「はい、これでよし。優芽ちゃん待ってるんでしょ? 時間大丈夫?」
パッと時計を見ると、45分を指している。
「やばっ、本当じゃん!」
ダダダダッと慌てて玄関に走る。
前につんのめりそうになりながら靴を履いて、「行ってきまーす!」とドアを開けた。
「もぅ、綾香遅ーい!」
「ごめん、ごめん。つい、春の雰囲気に浸ってて……」
「じゃ、行こっ!」
優芽に手を引っ張られて桜並木の下を通る。
やっぱりここは毎年綺麗に咲いてる。
小さい頃はお花見もしたっけ、とか思い出に浸りながら通っていたけれど、すぐに気分はどん底に下がった。
後ろから、「綾香ー!!」と誰かが私の名前を呼びながら走ってきたからだ。
振り向いて思わず「げっ」と言いそうになるのを堪えた。
「陽翔、おはよう」
コイツは私の幼馴染の陽翔。幼稚園からずっとクラスが一緒の男子。
腐れ縁、とかいうらしいけど私は心底いやだ。
「はぁ、はぁ、おはよ! 綾香!」
息が荒い、朝から元気だなーと思わず思ってしまう。
「今年はスマホ、落ちないように気をつけるんだぞ!」
ニヒヒ、と笑って友達の方に行く。
「あのやろー……っ!」
去年の冬、雪合戦をしていた陽翔の雪玉が見事私のスマホに命中し、雪解け水にジャポンと落ちてしまったのである。
中学祝いでもらったばかりのスマホをまた買い替えなくてはいけない事態になっちゃったんだよ!
私はあの出来事から、さらにあいつが嫌いになった。
(あいつ、なにかとちょっかいかけてきやがって……っ!)
「綾香、不機嫌にならないの」
優芽が慰めてくれたけれど、私は一生許さないもんねっ!
しばらく歩いていると、白い校舎が見えてきた。
ここが私達が通う「星ヶ丘中学校」。
星、とか丘、とかあるけどぜーんぜんそんなことないから!
星は街の光で見えないし、丘ですらない。
私が唯一気に入っているところはたくさん花が咲いていること。
今年も園芸委員会に入るんだっ! と意気込んで見慣れた校門を通った。
ー下駄箱前ー
「もうクラス替えの紙張り出されてるって!
見に行こっ、綾香!」
優芽に手を引っ張られて見に行く。
「綾香、なんでそんな手を合わせてるの?
「優芽と一緒のクラスにはなりたいけど、アイツと同じクラスだけにはなりたくなくて。神様に願ってるところ」
人が多いてなかなか進めないでいると、優芽が笑顔で駆け寄ってきた。
「綾香、同じクラスだった! 2年3組!」
「えっ、嘘っ!?」
走ってみにいくと、
「ゆ、夢じゃないっ! やったー!!」
優芽と手を取り合ってぴょんぴょん飛び跳ねている。
ルンルン気分で教室にいくとまさかの人物が…………
「な、なんで陽翔が3組にいるのよ……?」
言いたいことがありすぎて、私の口元が不自然にヒクヒクと波打つ。
「なんでっていわれてもなぁ、ここ俺のクラスだし」
のんきに、ポリポリと頭の後ろをかきながらいう陽翔。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
いや、嘘でしょっ!?
幼稚園のひよこ組から数えて…………
まさかの11年連続同じクラスゥゥゥゥ!?
呪いかっ!?
陽翔と一緒のクラスにしかなれない呪いなのかよっ!
まじでギネスに申請してやろうか、この悪縁っ!
お前のその緊張感なさそうな顔は見飽きてるっつーの!
一人で肩をプルプルと震わせていると、陽翔は何か察したのか、
「じゃ、俺友達のとこいくから……」
と言ってどこかに行ってしまった。
(はぁ、憂鬱!
また1年アイツと一緒とかあり得ないんだけどっ!? 去年で終わりかと思ってたわっ!)
怒りで爆発してしまいそうだった私は突っ伏して気持ちを落ち着かせていた。
すると、トントンと誰かに叩かれた。
顔を上げると心配そうに覗き込む高いポニーテールの女の子。
「大丈夫……? 具合、悪かったりする……?」
「あっ、いや、大丈夫! ごめん、心配かけて。
あ、えっと……」
「私? 佐藤日葵。
ひまり、って呼んで。」
ニッコリと笑ってくれた日葵ちゃん。
…………………………え、天使?
「私、咲野綾香。綾香って呼んで」
「ん、よろしくね、綾香!」
新しいクラスで、友達できたっ!
陽翔のおかげ(?)で友達できたから、まぁ許してやろう!
その後は、担任の先生発表があった。
私たちのクラスは大人気な藤ちゃん先生こと、藤原紀香先生だった。
その後、集会とか課題集めとか色々あってあっという間に帰りの時間になった。
「明日はお弁当が必要になるので忘れずに!
では、気をつけて帰ってください、さようならー!」
さようならー、とバラバラに挨拶をして去っていくクラスメイトたち。
「綾香、私達も帰ろっ!」
「うん、帰ろー!」
下駄箱の前には大きなイチョウの木がある。
そこで、女子二人組が話しているのを聞いてしまった。
「ねね、明日2年3組にイケメンの転校生くるらしいよ!」
「えっ、まじで!?
私のクラス大当たりすぎん!?」
「しかも、前の学校でファンクラブあったんだって!」
「イケメン確定じゃん!
明日は絶対学校来よ!」
アハハー、と笑って通り過ぎる二人組。
「…………気になるし、私も明日は絶対来よ」
いつのまにか私は独り言をつぶやいていた。
校門を通りすぎたあたりで、優芽が段差に気づかず転びそうになる。
(やばっ、優芽転んじゃ…………)
次に聞こえてきたのは、
「っと、危ねぇな。優芽、怪我してないか?」
という、にっくきアイツの声。
「えっ、あっ、うん。大丈夫! 陽翔君のおかげで怪我してないよ」
「ならよかった。気をつけて帰れよー!」
ニコニコ笑いながら友達の元へ走って行ったアイツ。
優芽も手を振っている。
(ちょっ、待て待て待て。
今の誰っ!? あの陽翔?
私にはちょっかいしかかけてこないアイツ??
私にはあんな笑顔みせないくせにーーーー!!!!)
「優芽、本当に怪我ない?」
なぜか、ぽけーっとしてる優芽。
「…………優芽?」
「えっ、あ、大丈夫! なんともない!」
あれ、優芽の顔ちょっと赤いような……?
ま、気のせいか。
そして、話しているとあっという間に別れ道に。
「じゃあ、また明日ね!」
「ん、また明日ー!」
そう言ってポテポテと家に帰っていると、
「あれ、引越し? 誰か来たのかなー?」
隣に引越しのトラックが2台。
そして玄関前では聞き慣れない男子の声が。
「…………これ、つまらないものですが皆さんで召し上がってください」
「あら! ご丁寧にわざわざありがとう。
今日お引越しだったのね、大変でしょうに
お隣なんだから、何か困ったら言ってね」
少し覗くと、エプロン姿でにこやかに話しているお母さんと、白の少し大きめなTシャツと青いデニムを着た男子の姿が。
「……じゃあ、僕はこれで」
「ありがとう、娘と同じクラスになったらよろしくね」
男子はお母さんにニコッと笑ってから戻っていく。
すれ違いの時軽く会釈をしてその男子は去って行った。
「お母さん、あの子誰ー?」
「あら、綾香おかえり。
帰ってたのなら会えばよかったのに。
お隣に引っ越してきた月城さんよ。綾香と同じ中学に明日から通うらしいわ」
「ふーん」
明日くる転校生ってもしや、彼?
とか思いながら「ただいまー!」と元気よく帰宅した。
こんばんは! 雪乃めぐみです!
今日から新しい小説がスタートしましたー!!
読者の皆様にキュンキュンしてもらえるような小説にしたいと思っているので、最終話までお付き合いいただけると嬉しいです!
今作もどうぞよろしくお願いします!!
今回は新学期のお話でしたね!
綾香ちゃんまさかの11年同じクラス!!
今年も陽翔君からは逃げられないようです(笑)
そして、優芽ちゃんの様子もちょっと気になりますね……
最後に現れた彼は一体誰なんでしょうか……?
ここで次回予告です!!
転校生はまさかのあの子だった!?
綾香の恋がついに動き出す……?
2話は15分後に公開予定です!
お楽しみに!!




