不死身の売人
ワン・ケイプの年齢を23にした。
「マリファナをくれ…早くしろ。長いのは嫌いだ」
ある若い男はワン・ケイプに言っていた。
「あぁ、良いぜ。だがな、お前は前に覚醒剤の代金を払って貰ってない」
男の隈は広く。頬は痩せこけて、中毒であった。
薬が欲しくて、ハアハアと息を上げている。今にも手を出しそうであった。
「なんポンドだ」
「200…いいや、500ポンドだ」
500ポンドは日本円にすると約70000円である。
「ああ?…前は150と言っただろう?」と撃鉄が倒された。カチリと音が鳴った。
「それでも、僕は何日も待った。待った料だ」
ワンはそう言うと、コートをひらりとした。
銃身は男に向けられていた。
いつでも撃てるぞと、銃を隠していたのだ。
男は歯をカチリと鳴らして、ポケットからボロボロの折られた財布を出して、縦にして、さっと500ポンドを出し、ワンに手渡した。
「持ってるじゃねえか。それでいい」とワンは銃を男に向けながら、ポケットに入れた。
「ほら、マリファナを出してくれ」
「マリファナ……これだ。ほらよ」
ワンは裏ポケットにしまっている小さなケースを出した。
「これにマリファナがある。15ポンドだ」
日本円だと2500円。
「おい、量多めにしろ」
「勘弁しろ。お前に渡すのは最高品質のもんだ」
ニヤリとしたワンはケースを渡した。
「ふん」
「安いぜ…他だと250はする」
日本円だと35000円。
男は背中を見せて、歩いて道に出て行った。
ワンは煙草を吸い始めた。
…ワン・ケイプにとって、毎日が命がけであるのは言うまでもない。
これは安全な方であり、最も危険な思いをしたのは、あの日である。
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そこは飛行機をしまう収納庫である。
飛行機はない。つまりその収納庫は廃墟とかしていた。
煙草を咥えたまま、ワンは現れた。
大量の薬物が入ったケースを左手に持ち、右手にはリボルバーを持っていた。
傷だらけの男が、両脇にガタイのいい男を連れてそっと歩いてきた。
「そこで止まれ」
男は言う。
ワンは素直に従う。
「金は用意したか」
「ああ、100万ポンド…このケースにある。三二一で投げるぞ」日本円にすると一億円。
「3…2…1…」とワンが言う。
そして二人は同時に投げた。
ガタンとワンの前に男が投げたケース。ガタンと男の前にワンの投げたケース。
二人が同時に、ケースに触れて、持ち上げた。
「これで取引は成立だ」
ワンがそう言って、踵を返して、収納庫から出ようとすると、男がバン!と銃を撃った。
放たれた弾丸はワンの脹脛に命中した。
ワンは重いケースを落として、倒れた。そしてゆっくりと忍び寄る足音を聞きながら、いつ死ぬ時間は、カウントダウンとして受け取った。
「すまないな。これでもまだ楽に死ねる方だ」
男は銃をワンの頭につけた。
足音は一つだけ、ワンは覚悟を決めて、左手で男の銃の銃身を掴んでは素早く、頭からずらした。
銃身を引っ張って、男の姿勢を崩すと、男はワンに覆い被さる。
二人の男は銃を構えて撃とうとしたが、覆い被さる事によって撃てなくなった。
そして男は呆気にとられて、銃を離してしまい、ワンは二丁持ちとなった。
「動くな、動くなよ。撃つぞこの野郎」
ワンは強気で言う。「よ、よくも俺の足に…」
だが、男は隠していたナイフで、ワンの腹部にナイフ刺した。
ワンは口から血を吐き出しながら、左の銃を男の頭につけて、バンと撃つと、右の銃で、遠くにいる男二人を殺した。
死んだ男を退かして、ナイフを掴んでは、遠くに投げた。
ほっと息を吐いて、もう一度、男に撃った。
「このクソ野郎。クソが、クソ。血が…ああ、初めてだ。落ち着け、落ち着け俺…」
と、男のジャケットを脱がして、刺された箇所に当てた。
プルルル。と男のジャケットの裏ポケットから携帯が鳴った。
ピ。と耳に当てると『おい!どうなってんだ。早くしろ。警察が来ちまう!』と男の仲間からであった。
「はは、はは、お前、お前の仲間は死んだ」
ワンは高揚になった。
戦争の英雄のように、そんな気分になっていたワン・ケイプ。
「次は、次は、次はお前だ。───」
背後から来ている男に気づかず、ワンは頭を殴られて気絶した。
宙吊りにされて、全裸のワンは眼を覚ました。
「この男の名前は」
目の前に広がる光が徐々に落ち着き、二人の男の背中が見えた。
ガラス張りの先に、見張りであったのはワンはすぐ理解した。
「ワン・ケイプ…イギリスのウォーテルズ街で売人をしている男です」
「…ワン……ああ」と薄気味悪い笑い声を上げた。
「有名なんですか」
「有名も何も、…薬物を買う人間なら誰もが知っている」
『この男の声…聞いた事があるぞ』ワンはそう思う。
「俺様以外に、この愛する街を知る者はいらない。部下も殺された。だから」
『思い出した。この男はウィルソン家のザック・ウィルソンだ』
ウィルソン・ギャングはウォーテルズ街にいる小さなギャング集団である。
重い足音は徐々に近づいてきた。
ワン・ケイプは足を見た。
紐で結ばれている。
「よう、ワン」
左目のない男がワンの前に現れた。
左目がなく、右目は白内障で白く濁り、額は傷だらけで、頬も黒ずんでいる。
片耳の無い。スキンヘッドで、深く窪んでいる眼。
絶望をよく見てきた貫禄を持つ、その男の右手にはナイフがあった。
ナイフを見るとワンは幻肢痛に襲われるように、腹部が痛んだ。
「お前は」と口が開くと、唾が糸を引いた。
歯は黄ばんでいて、舌は白い。
「お前を殺してやる」
ニヤリと笑った。
そして、収納庫で刺された所に、新しいナイフが深く刺さった。
歯軋りを立てながらワンは悲鳴を上げない。
いつ逃げるか。その隙を考えていた。
「もっと奥に行くぞ」
笑いながら、右目を大きく開けた。
「なあ、待てよ。俺の家を教える。教える。そこ家に、その…」
ナイフは一度離れた。だがまた刺された。
「クソ野郎…」とワンはザックを睨んだ。
「家の場所を教えろ」
「その前に、やる事があるだろう」
するとナイフが離れた。
「家には…大量の薬物が眠ってる…お前らが今まで吸ってきた、……薬よりも多い」
「ほう」
「俺の……俺の……俺の家は」と小声で言おうとした。
ザックは自然に耳を澄まそうと、近づいてきた。
「───俺の家は…あの辺だ」
と、ワンは近づいてきたザックのナイフを持っている右手首を掴んでは引き寄せた。
ザック姿勢を崩しながらもなんとか耐えようと、胸に刺そうとした。
次にワンは唾をザックの右目に吐き、視界を奪う。
そして右手と左手で、ザックの右手首に力をこれでもかと入れた。
先端が胸に当たり、じりじりと刺さっていたった。
大胸筋に刺さった。
もう逃げられない。このクソ野郎野郎をぶち殺してやるとその強い願いがかなったのか、ザックの力が少し弱まった。それを見逃さないワンはナイフを胸から離して、次にまた胸に近づけ、ザックの手からナイフが離れた。そして近いザックの顔にナイフを刺した。
右頬に刺さったナイフはまた離れた。ザックは刺された痛みで頬を手で覆った。
「痛えええええ!!」とザックは一度離れた。
その隙にワンは足に縛りつけれている紐を解こうとした。
紐を切ると、地面に落ちた。
頭に血が溜まっていて、少しくらくらとしながらも立ち上がると、ザックに殴られた。
「この野郎!」と首を掴まれた。
だがワンにはナイフがあり、それをザックの手首に刺した。
声を上げながら、ザックは離れた。
ワンは逃げようと、拷問室から出た。大きな机を動かして、扉を開けさせないと、扉の前に机を動かした。
ドン!ドン!とザックが扉を蹴るも、開かない。
ワンは勝ちを確信したその時に、後頭部に銃をつけられた。
「動くな」
ワンはすぐさま屈んで、後ろに振り向いては、男にタックルして、姿勢を崩させた。
傷口が大きく開くにも、それでもワンは目の前にいる男の顔を殴った。
銃を奪っては、すぐに男の頭に撃とうとしたが、傷のない男はワンの銃を上に上げて、壁に当たった。
力強く離さないと、ワンはまた唾を吐いた。
男の顔に当たった。それは開いていた眼に入り、男の力は弱まった。
そして男の頭に銃をつけてバンと撃った。
「クソ野郎」と、血だらけのワン・ケイプは拷問室のガラス張りに銃を向けて撃った。
その先にはザックの頭があり、もう血を流し、倒れた。
過去編は21歳の頃。
ちなみにポンドが日本円で書かれているけど、調べて書いてるから、間違ってたらごめんね。




