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07 超能力学園

 一年後。


 二〇一九年六月。


 超能力者はSABCの四ランクに格付けされた。Sランクは世界で三人のみ。大半はBランクで、AランクとCランクがほぼ同数。


 各国はAランク超能力者を囲い込み、年齢性別問わず国土の防衛や治安維持など要職にあたらせた。



 日本でもAランクの大人は超能力対策庁に、子供は超能力学園に所属させられるようになった。


 Aランクも五人が力を束ねれば海岸から上陸してくる巨人を迎撃できるので、大人・子供問わずに防衛任務が義務化された。


  ちなみにAランク五人は巨人一体を消滅させるのに必要最低限の人員であり、Aランク五人とSランク一人の戦力が同等というわけではない。


 その他にも超能力を利用した犯罪に対抗した捜査や鎮圧、検挙。また震災で崩れた建物やインフラを復旧させたり、超能力による植物の育成や畜産の成長促進などによる食料確保も積極的に行われた。


 数ヶ月経つと、Aランク超能力者同士の子供は上位のAランクになりやすく、成長も早いことが発見された。


 すでに世界は超能力者の質と数が軍事、生産、運輸、あらゆる国力の源となっており、この発見によってAランクの遺伝子情報の売買が活発化。


 遺伝子を狙ったハニトラが激増し、他国からの諜報員やバイヤーが入り乱れ、誘拐や誘惑から国防政策の一環として国家ぐるみでAランクを守れなければいけない事態に発展した。


 Aランク超能力者の子供を隔離した全寮制学園である超能力学園。


 全国各地の公立校を改造し、日本各地に四十七ヶ所新設された。


 その代表となるのが世界に三人だけしかいないSランクのうち、最年少のSランク、超能力番長こと野村隼人である。


 一年の歳月を経て一七歳。


 表向きの役職は生徒会長。


 しかし、巨人が世界中に現れた『恐怖の夜』にベスパを駆って学ランをたなびかせ、次々と巨人を粉砕していった姿から誰もが彼を超能力番長と呼んでいた。




「婿殿、浮気はいかんのじゃ~!!」


「誰が婿だ。メイリン、いつまでも居座ってないでとっとと帰れ。」


「ひどい! 婿殿ひどい! これはDVというやつなのか? これは愛じゃないと動画で見たのじゃ! 贅沢いわないから普通の愛がほしいのじゃ~!」


 中華風のドレスに身を包んだ赤い髪の少女が抗議した。小学生くらいだ。


 超能力番長、野村隼人は全寮制の超能力学園で二人部屋を一人で使っているどころか、二人部屋を三つ分、壁をぶち抜いて使っている。


 つまり六人部屋の広さだ。


 特例中の特例である。


 そこにはソファが四つとベッドが二つあり、ソファの一つを隼人が。


 あとは同居人達がそれぞれ使っていた。


 同居人の一人はメイリン。大陸から海を超えて押し掛けてきた偉いところの娘である。


 もちろん一人ではなく、チャイナドレス(胸の部分が大きく開いたうえに下はミニ)の上にエプロンを着用したメイド軍団を連れてきている。


 流石に全員いれると狭いので二~三人づつ交代で番長の部屋に通っている。


 メイリン本人は『閃光娘々』の異名を持つ上位Aランク、メイド達ももれなくAランクである。


「にゃあ。」


 次の同居人は黒猫。名前はない。皆好き勝手呼んでいる。メス。


 暇を見るとソファで横になっている隼人の腹の上にダイブして丸くなる。メイリンから最もライバル視されている相手である。


 それでいいのか。


 今も隼人の腹の上に座り込んでいた。隼人も悪い気分じゃなく、喉を撫でたりして構うのでメイリンがかわいく嫉妬する。


「ああ~嫉妬するメイリンかわいい! おこなフェイスもロリキュート! ハァハァしちゃう……興奮してきた!」


 部屋の隅のソファでクッションを抱えて悶ているのが香住可憐かすみかれん。小さい女の子に欲情する変態だがれっきとした女子高生。


 生徒会の副会長で、生徒会長の護衛の名目で無理矢理同居しているが、目的はもちろん別である。小等部立ち入り禁止令を受けているため、ロリと触れ合いに常に飢えているゴータッチな危ない変態だ。毒をもって毒を制すために配置された生徒会の最終兵器である。こんなのでも上位Aランクだから世界は終わってる。


 この部屋のベッドはメイリンと可憐が一つづつ使い、隼人は領地を主張している専用ソファで寝る。黒猫は日によって気まま。メイドは部屋の外で交代で休憩をしていた。


「婿殿、かまってほしいのじゃ~」


「後でな。」


 なついてくるメイリンを小脇に抱えて隼人はタブレットを滑らせ、各地の学園からの報告書を読み進める。


 海岸沿いの支部でAランクチームが海から上がってくる巨人を迎撃。漁業の護衛。


 内陸でも超能力対策庁と共同で警察や農水畜産の現場で超能力を駆使して活躍していた。


 それだけでも大した業務量なのに加えて、学生を誘惑する遺伝子情報の売買や怪しい外部との交際に目を光らせなければいけない。


「また注意喚起が必要だな……対策庁の大人よりこっちの学生を的確に狙ってきてやがる。特に高等部と中等部の上位Aランク連中。騙されて使用済みテッシュを十万円程度のはした金で売ったら最後、数百人の子供が湧いてでてくるぞ。」


「使用済み?」


「メイリンに変なこと聞かせるんじゃない!」


 可憐のジャンピング踵落としをソファごと念動で回避してすっ転ばせる。いちごパンツが見えたが隼人は硬派なので無視した。


「メール通知だけだと放置されて読まれないから全校集会だな。サボりと居眠りは制裁。各地の生徒会に通達。上位Aランクは特に気をつけろ。ゴミ箱にも捨てるな。トイレに流しても回収されるかもしれねぇ。超能力で燃やして処分を徹底しろ。火事には注意。」


 全国の生徒会へ全校集会を指示するメール送信。国家に忠実な超能力者の数と質が国力とイコールなため、やりすぎということはない。手ぬるい方である。


「アルバニア・マフィアの動きが活発だ。誘拐にも注意しなきゃな……」


 メイリンをちらりと見た。遊んでくれるのかと期待に目を輝かせてる。


 隼人は心中で一人嘆息すると黒猫とタブレットを脇においてソファから跳ね上がり、メイリンを襲おうとしている可憐にアイアンクローをキメて空中にぶら下げた。


 隼人より可憐のほうが背が高いのでソファの上に立つ。


 不埒な変態は男に触られて抗議の鳴き声をあげた。

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