第3話 『未来』防衛戦
「ジジイ。何なんだよ。こいつら」
水波に肩を貸す浦賀。よほど恐怖心を抱いていたのであろう彼女は、安心からか彼の服を強く掴む。本来ならばその行動に可愛らしさを感じるところであろうが、そんな余裕などあるわけがない。
「さぁな。ワシも戦争に行ったことがあるとは言っても最近の軍隊はよく知らん」
足元の銃らしき武器を手に取るも、雷ジジイはいまいち使い方が分からなそうな反応。彼は武器を使ったことがあるし、なんなら戦争とはいえ人を撃ち殺したこともあるとかなんとか。だがそれは既に70年以上前の話である。その時と今とでは武器の形もまったく別物となっている可能性は隠し切れない。
「まずい。奴らが」
奴らの仲間が来たことに気付いた浦賀に対し、雷ジジイは舌打ち。
「……持って行け」
「この鍵は?」
ポケットから取り出した古びた鍵。ここ数年のものではなく、それこそ骨董品店にありそうなものである。それを、水波に肩を貸している浦賀に代わって葛城が受け取った。
「裏山に太平洋戦争中の防空壕がある。そこならひとまず身は隠せる。場所は……まぁ自力で探せ。中腹の辺りだ。分かったら早く行け」
雷ジジイはトラックの荷台から鉄パイプを取り出す。
「ジジイは?」
水波を起こしながら問うが、雷ジジイは相変わらず怒鳴り散らす。
「いいから早く行け。年寄りの話は聞くもんだ。これだから若者は嫌いだ」
「ジジイ……」
「それとちゃんと名前で呼べ。ワシにだって鵜来という立派な名前がある」
「ジジイ、いや、鵜来さん。絶対に来てください。待ってます」
「ふん。帝国陸軍の元兵士に生意気抜かす。殿は務めるから行ってこい」
腰が抜けてしまったのであろう水波を支えながら浦賀が、そして葛城が鍵をしっかり握って撤退を開始する。時折、浦賀は不安そうに後ろを振り返るも、ジジイの「振り返るな」とばかりの偉大な背中に前を向かされる。
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そして一方のじいさんも後ろは気になっていた。果たして若者たちは逃げているだろうか。自分のことを気にして立ち止まってはいないだろうかと。後ろを振り返り確認したい。そして立ち止まっているなら今一度一喝してやりたい。その思いもあるが、そうはさせないとばかりに目の前に敵が迫る。
「……いつかこの国が再び戦火が迫る日が来るとは思っていたが、まさかワシが生きている間に来るとは」
浦賀が去り際に発した『鵜来さん』という名前を思い出しながら小さく微笑む。
「平和を信じて戦ったあの日々。あんな辛い思いをするのはワシらだけで精一杯だ。あの若者たちにそんな思いはさせん」
目の前から迫ってくる生命体。目の前のじいさんだけではなく、背を見せながら逃げていく子供たちも視界に捉えているようである。目の前の相手だけに襲い掛からないあたり、知性を持った生き物ということか。複数居る生命体の1人がじいさんの横を通り抜けようとしたが、じいさんは鉄パイプで思いっきり頭部を打つ。そして転んだ相手の胸に鉄パイプの先を突き刺す。おそらく人間ではないのであろう生命体からは、血の代わりに紫がかった赤色の液体が噴出す。
仲間が倒されたその様子を見て1歩2歩と下がる生命体。そんな中でじいさんは鉄パイプを抜いて正面に構える。
「かかってこい。今は無き大日本帝国は決して弱くはないぞ。子供たち、この国の若者は絶対に守り抜いちゃる」
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「はぁ、はぁ。歳には……勝てんか」
さすがに多勢に無勢。10分以上は戦い抜いたが、これまでのようである。
じいさんは頭や腕から血を流しつつ、自分の運転してきた軽トラにもたれかかる。あれだけ強引に突っ込んだだけに、壊れてこれで逃げることは叶わないだろう。そうしているとじいさんを取り囲むように近づいてくる生命体。じいさんは諦めたように胸ポケットから煙草とライターを出す。
「最後に一服……っと」
しかし箱の中にあった最後の一本を、手を滑らせて排水溝に落としてしまう。
「まったく、ついてない……本当は子供たちにこれを持たせてやりたかったが、渡せなかったしのぉ」
荷台に乗っているものに目をやる。
「防災用品に食料、水。それと……」
そこまで見て気付いたじいさんは、タバコを吸おうと持っていたライターに日を付ける。
「お前たちはワシを殺すだろう。だがワシはただでは死ぬ気はない。最後の最後まで、あの子たちの未来を守る」
じいさんは大きなタンクのフタを開けると、その注ぎ口の近くにライターを近づけた。
「……頼んだぞ。未来を担う子供たちよ」
実はあの爺さんにはモデルがいます。
某アニメを見ながら「あぁ、こんなキャラいいなぁ」と思って、自分なりのアレンジ入れてみたわけです
……なお、超絶劣化した模様。やっぱプロってすげぇわ




