第33話 安全地帯へ
「……う、う~ん」
頭が痛む。
静かに目を開けるとそこには白い天井が広がっていた。
「あっ、目が覚めた?」
そして聞こえてくる女子の声。
「水波?」
「はい。水波さんです」
顔を横に向けるとそこには薄汚れた顔や服はなく、きれいな顔にきれいな洋服の水波が椅子に腰かけていた。しばらく前まではせいぜいクラスメイトくらいのものであったが、これだけの困難を乗り越えてきただけに特別な気持ちにもなる。
「ここは……病院?」
「そう。大阪」
そこから水波が事の次第を説明してくれる。なんでも福岡県北部で陸上自衛隊に保護されたメンバーは広島県の病院へと救急搬送。安定期に入ったのを確認した後に、最前線から遠い大阪までさらに移送されたとのことである。
「そうだったのか……みんなは?」
「嵩佐木さんも葛城くんもこの病院にいるよ。特に嵩佐木さんは宇宙人に捕まっていたって経緯から、政府の人に情報を渡しているみたい。もしかしたら浦賀もそのうち政府の人からいろいろ聞かれるかもね」
「……敷島は?」
浦賀の最後の記憶は敷島を残して撤退。直後に大爆発を起こしたところまで。彼はその爆発に巻き込まれ、不運にも転倒時に気を失って今に至るのである。つまり事の顛末はなにひとつ分かっていない。だが……
「分かんない。爆発があったことは知ってるんだけど、私たちも必死だったから」
「そうか……」
と、浦賀が気付く。
「宇宙人?」
「そう。正体がある程度分かっていたみたい」
考えてみればここはもう戦場を抜けているのである。やろうと思えば目の前のテレビなんかで情報を得られるわけである。そうなるとある程度の情報が集まり、そして敵の解析も進んでいるということであろう。
「どうしてそんな宇宙人が地球に?」
「さぁ? それは分からないけど」
聞きたいことがいくつもあり、聞けば聞くほど真新しい情報が入ってくる。水波は彼よりも早く目が覚めていただけであり、基本的には彼と同じ側の人間。そのことを考慮するならば、政府の人間はこれ以上に情報を持っているとも考えられるわけである。別にそれらの情報を知ったところでなんとかなるものではないわけだが、一方で今まで自分が戦ってきた相手の正体を知りたいところでもある。これはただの知的好奇心というヤツである。
「ただなんにせよゆっくり休んでね。またゆっくりお話ししよ。知ってる人いなくて暇だったんだよね」
「親族や友人は?」
「いろいろあるの」
彼女は壁にもたれかかりながら隣に置いてあった車いすに乗る。足にギプスをしているあたり、足を怪我している様子、長きに渡る九州脱出での疲労がたたったのであろう。彼女はゆっくりと部屋を出ていくと、扉を閉めてから病室前で天を仰ぐ。
「浦賀も辛いと思うよ……これがきっと」




