第21話 逃走
視線を向ける先にあった校舎。確かに嵩佐木が話していたように何かの照明によって明るくなっていた。そんな中で確かに地元民と思われる姿も多数見かけられはするが、さすがに個人までは判別できない。
「ねぇ、そういえばあそこって地元の人たちを収容しているだけなの?」
「そ、それは……」
ふとした疑問を持った水波。彼女は嵩佐木に対して聞いてみるが、彼女はとても話しにくそうな対応。当然と言えば当然なのだが、敷島の見立てでは地元民が少なくとも人体実験につかわれているとのこと。そうした扱い方をしているとするならば、それは国際条約によって守られたいわゆる「捕虜」よりもひどい扱い方なのかもしれない。あのUFOのような乗り物からして宇宙人の線は濃厚とすると話は本当に厄介である。強制労働や暴行の類は十分に想定の範囲内として、極端な話、食べられたり、あの空飛ぶ乗り物で母星に連れていかれたりなんてことも考えられる。実際に嵩佐木も首輪を付けられているあたり、単純に収容している場所から逃げられないようにというだけではなく、『何か』に使われる寸前であったと考えることも可能である。相手の生態・文化が分からないからこそすべて推測の域を出ないが、推測でしか物を語れないことが不安を冗長させる。
「ごめん。話したくないならいいよ」
水波はそう口にして話を打ち切りながら改めて校舎へ視線を向ける。
2人はしばらくそうしていたが、建設的な発見は何もできず。近づいたことで細かいところははっきり見えるようになったともいえるが、夜であるということ、加えてこちらの建物の高さがせいぜい2階であることから、校舎に視界を遮られてあまり数多くの情報をつかめているとは言い難い。
そうしてしばらく経った時だった。静かに見ていたせいで水波が気付いた。これはこの建物の廊下の音だろうか。わずかにきしむような音がする。
「え?」
「どうしたんですか?」
「誰か来る?」
水波と嵩佐木は耳を澄ます。すると明らかにその音は階段を上るような音に変わり、自分たちに近づいてくる。
「う、うそ? バレた?」
「え? でもカーテンの隙間からちょっと覗いてただけですよ?」
だが相手は詳細不明の相手である。どんな科学力を持ちうるか分からないわけで、最新技術のようなもので人間がいるところが分かってしまうのかもしれない。
「窓から逃げ……られない」
水波はカーテンの先にあるガラスの割れた窓を思い出すが、考えてみればこちらは敵の根拠地たる学校に面しているのである。むしろこちらから逃げ出してしまえばそれこそ勝ち目がないともいえる。
「だ、だめ。もう、逃げられない」
「ご、ごめんなさい。私がわがままいったばかりに」
水波は怯えた顔で壁を背に座り込み、嵩佐木も怖がりながら彼女の腕にしがみつく。そうしていると明らかに大きくはっきりしてきた足音は、この部屋の前で止まった。これはもう完全にバレていると見て間違いない。
閉じていたドアのノブが音をしない程度にゆっくりと回され開いていく。
「「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁ」」
その悲鳴と共に、
「ちょっ、うるさい」
浦賀現る。そう、冷静に考えてみればこの家にはもう1人いたのである。
「もぉぉぉ、浦賀ぁぁぁぁ。怖かったでしょうがぁぁぁぁ」
彼女は涙目で浦賀の胸に飛び込みながら訴えるが、浦賀自身はしどろもどろ。別に相手が女子だからとかそういうわけではなく……
「うわっ」
「きゃっ」
「何っ⁉」
銃声のようなものが聞こえ、照明のようなものが家に向けられ、浦賀・水波・嵩佐木は頭を下げる。
「もう、大声出すなよ。バレただろうが」
そういうことである。ただでさえ周りは静かで声が響きやすく、窓も割れているせいで一切遮るものがない。そんなところで大声なんてだせばどうなるかなど言うまでもない。
「退避、退避ぃぃぃ」
もうこの際、後先考えずに逃げ出すのみである。3人は急いで階段を駆け下りる。建物に入るときはそこらへんの窓から侵入したが、でるのはいたって簡単、内からカギを外すだけである。すぐさま1階のリビングから直接庭に出ると、壊れて低くなった塀から隣の家の敷地内に入り込む。
足の速い浦賀が真っ先に、次に足の速い嵩佐木が飛び込む。そして家から出る際にソファにつまづいてしまった水波は……
「いやっ、た、助けてぇぇぇ」
腕を追いついた敵によって捕まれてた。
男女差別って訳じゃないんだろうけど、
映画やアニメにおけるヒロインキャラってちょくちょく主人公の足を引っ張る気がする
なお日下田小説においては、
ちょくちょく主人公がヒロイン(を含むみんな)の足を引っ張ってる模様




