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第20話 侵入

 夜。日が落ちてからの経過時間からして8時くらい。この暗い中で山道を移動するのは半ば自殺行為と言ってもいいところだが、そんなことを考えていられない3人である。


 敵の夜中の動きをあくまでも遠くから見る。と、敷島には伝えている。いやにすんなり了承したのが浦賀には気になるところであったが、彼も彼で嵩佐木の不安な気持ちは分かっているということだろうか。


「少しでも中が見られたらいいんだけど……」


 水波は森の中を歩きながら懸念を口にする。


 ライトは相手に気付かれる可能性を考えれば使えないし、遠くをみるための双眼鏡なんかも持ち合わせていない。自らの視力だけが頼りという状況である。浦賀にとってもそこは懸念事項であり、近づける距離的に誰かがいることは分かるだろうが、それが誰なのか分からないのではないかというものであった。


 歩いてしばらくすると、発電所や送電網もストップしている真っ暗闇のはずの市街地の中で、はっきり光る建物が見えてくる。それ自体はただの学校の校舎なはずなのだが、こうしてみると深夜のネオン街のようでもある。


「ほら、姿勢を低く。見える?」


 浦賀は嵩佐木に指示すると彼女もそれに従う。さらにその横では水波も同様の行動を取るが、反応はお互いに怪しいところである。


 その一方で浦賀は建物自体よりもその周辺に目を向ける。建物は比較的残っているし、見る限り警備が厳重というほどでもない。時折、巡回するかのように隣接する道を車両が通過するものの、せいぜいその程度というものである。もっとも学校の敷地内に目を向けると、怪しげな装備をした人型の影がそこら中にいるが。


「ちょっと近づいてみる?」


「え? 大丈夫なの?」


 その提案に驚くのは水波。気になるのは間違いないが、そんなことが可能なのかと思うのはもちろんのことである。


「幸い、高校の近くまで住宅があるから。そこらへんの家にちょっとお邪魔してみれば多分」


 ところどころ曖昧な部分を含む浦賀の発言だが、ここまで来たからにはそうしたことは気にならないものである。すぐに小さく返事をした女子2人と共に浦賀は山を下り、ふとした瞬間に敵に会うのが怖いというのもあって、森から出るなりすぐさま近くの家の敷地に入る。


 浦賀は警戒がてら塀から顔を出して周囲を確認。道には誰1人いない。大破したパトカーが2台ほど放置されているのが、事態の深刻さをより際立たせる。だがもともとこうした市街地の道には敵がうろつかないのか、それとも夜だからか。いずれにせよ道にも敵はいないが、こうした家の敷地内であれば遮蔽物が多く隠れられる分、敵にもより見つかりにくくなる。もちろん逆に潜んでいる敵を見つけづらくなるデメリットもあるのだが……


「ここの家の2階からなら見れそう」


「ここまできてなんですけど……いいんですか? 人の家なのに」


 浦賀が適当な民家を目標に定めていると、嵩佐木は不安そうな表情を向ける。


「なぁ~に。緊急避難、緊急避難」


 彼は適当な窓に手を伸ばし、音を立てないようにゆっくり開けてみる。最初の窓はカギがかかっていたようで開かなかったが、意外にも2つ目に見つけた窓は既に半開き。家の主はいないようであるが、あまりの事態に戸締りをする余裕がなかったのであろう。そうしてそこを完全に開ければ、十分に室内に入り込めるほどである。


「野宿も大変だし、そこらへんの民家に入り込んで休むのもアリかも? もしかしたら備蓄食料や水もあるかもしれないし」


「えっと……大丈夫なんでしょうか?」


「なぁ~に。緊急避難、緊急避難」


 災害地などにおいても店などから無断でお金を払わず商品を持っていく行為は、必ずしも犯罪とは言えない。もちろん持っていく必然性があること、連絡が取れるようになった場合に払う意思を見せることなどが必要であり、それを満たさないと所謂『火事場泥棒』となるわけだが、確かにこうした場において野宿に使わせてもらう、食べ物を貰うといったことは緊急避難ともいえるだろう。


 それでも他人の家に入ることは不安を覚えるものである。嵩佐木は少し戸惑っていたが、決心すれば早いもの。窓が少し高いところにあるため、水波と嵩佐木は浦賀に尻を持ってもらいつつ中へ入り込む。そして浦賀自身は水波に引き上げてもらい中へ入り込む。なお浦賀はちょっと緊張していたようだが、水波や嵩佐木は特に意識していなかったようである。


「水波。ちょっと先に2階に行っておいて」


「どうしたの?」


「ちょっと探し物」


 彼はそういうと彼女たちと離れる。こうした場において単独行動は不安でしかないのだが、活動範囲がこの家屋内となれば何かあった時は音くらいするだろう。水波は嵩佐木を連れて2階へ。学校に面しているはずの部屋のドアをゆっくりと開いてみる。


 室内は荒れていた。窓ガラスが割れており、そこから入り込む微風によって閉じられたカーテンがはためいている。床には割れたガラス片もそうだが、教科書の類やぬいぐるみなどもある。子供部屋、それも置かれている物や教科書に書かれる学年からして、小学校5年生の女子の部屋と想像できる。


「ここから見える?」


「どうでしょうか……」


 嵩佐木はカーテンの隙間から学校へと目をやった。

活動報告で小説内の犯罪云々という話をしましたが、

実はこの話を書いていた時に「どうなんだろ?」と思った話です。

まぁ暴力行為だとか働いているわけではないですし、

登場人物も極限の状況で生き延びるためにやっているわけですし、

これくらいセーフだよね(言い訳っぽいコメント)

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