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第19話 分裂?

 まだ野宿の場所を確保するにははやいはずであり、明るいうちに目的地に近づきたい。だが状況が状況だけに結局はここで立ち止まらなければならない。もっともまだ場所的にはよかったのかもしれない。少し離れれば敵には簡単に見つからないだろうし、水場も既に確保しているのである。


 そうした万全な構えで日没を迎えようとする中、物思いにふけるような表情で空を見上げる少女。その後の話では『嵩佐木(かささぎ)つぐみ』を名乗った子である。


「助けてほしい。って、あそこに誰がいるの?」


 そんな彼女に、同じ女子として水波が声をかける。


「家族? お友達?」


「……分かりません。家族とも、友達とも離れ離れになりました。でもあの学校に行くまでは一緒でした。だからきっとあそこにいるんじゃないかって……」


「そっか……」


 野宿を決定した後、嵩佐木を除く4人で話し合いを行っている。そんな中で意見は2つに割れた。


 敷島は「自分たちに助けに行けるだけの技術も力も持ち合わせていない」との理由で、いち早く目的地にたどり着くこと、その上で自衛隊や外国の軍隊に情報を提供して救出してもらう。といういたって合理的な意見。


 一方で浦賀と水波は「彼女があれだけ助けを求めているのだから、助けてあげたい」というよく言えば人間の良心に基づく、悪く言えば感情的で合理性を欠いた意見。

葛城は敷島の意見を支持する一方で、嵩佐木の感情にも配慮するようなやや中立的な対応を取っているが、ほぼ敷島派とみていいだろう。もちろんここで「じゃあ勝手にしろ」と2つに別れてしまうのは、それはそれで危険である。どちらの意見を支持するにせよこの場は協力しか選択肢にないのである。


「ねぇ、浦賀。なんとかならない?」


 水波は少し後方にいた浦賀に問う。


「僕ら、軍人でもなんでもないし……」


 助けてあげたいと思う浦賀。しかしそれでも確かに敷島の意見に合理性があることは分かっているのである。今の彼は「助けてあげたい」との思いを持ちつつ、一方で何も手段がないという状況なのだ。


「じゃ、じゃあさ、家族や友達が生きてるってことを確認するだけは無理かな? 建物の中に入らなくてもそれだけなら」


「う~ん……山も近いし、住宅地だから物影は多いからもしかすると」


 もっともその住宅地も敵の進行によって破壊されているのだが、学校の原型があることから分かるようにこのあたりは比較的爆撃の緩やかな地域でもあった。それだけに遮蔽物のない場所に収容所があるなんてことはない。ということは陰に隠れて近くに行けるかもしれないということでもある。


 収容所となっている学校周辺を見た浦賀だからこそ分かる意見で立案すると、水波が表情を明るくする。この荒んだ状況下でここまで積極的な子ではなかったはずだが、彼女の力になりたいという心が普段の彼女を引き出したのだろうか。


「だったら、夜なんてどうかな? 夜ならきっと敵の目にも映りづらいんじゃないかな?」


「でも夜だと建物の中自体が見えないんじゃ……」


「えっと、その……」


 懸念を口にした浦賀であるが、そんな中で嵩佐木が小さく手を上げる。


「暗くなったら電気は付いてました。学校の電気とかじゃなくて、あの人たちが持ってきた照明器具のようなものですけど……」


「じゃあもしかしたら」


 元気な声でやる気を出していく水波に浦賀も便乗する。


「じゃあ、敷島や葛城にも」


「待って」


 だがそんな浦賀を彼女は制す。


「もし敷島に言ったら絶対に反対するよね」


「いや、意外と理屈は通じるし、しっかり説明すれば……」


「ううん。女の勘。絶対に反対する」


 いったい敷島との間に何があったのかと思うほどの否定。


「わ、分かった。分かったから」


 浦賀はため息を漏らしながら彼女の顔を立ててやる。


「じゃあ、僕と水波、それと嵩佐木の3人で夜に行こう。敷島や葛城には適当な言い訳しておいて」


「OK」


「よ、よろしくお願いします」


 女子2人に頼られるのは男冥利に尽きるところではあるが、それでもやはり懸念とはあるものである。


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