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第13話 不慣れなサバイバル

 土地勘のない山をまともな装備も無く、山登りの経験も無く行くなど危険極まりない行為である。しかし今この状況においては市街地を行く方が危険である。そうした意味ではまだまだ安全なのかもしれない。少なくとも敵に遭遇するリスクは遥かに低いだろう。


「はぁ、疲れた……」


「少し休もうか」


 水波の一声にふと自分たちの疲れに気付いた他3人。敷島の提案で一休みすることにする。


 彼らは決して運動が苦手なわけではない。しかし慣れない山道であることに加え、朝から荷物を背負って歩き通し。さらに言えば平和な日本に生まれたただの高校生が、生死の入り混じる戦場を行く緊張感。それらによって恐ろしいまでに体力が削られる。


「どれくらい歩いたんだろう?」


 絶望感と疲労感の入り混じる浦賀の独り言。横に座る葛城は変わり映えしない周りの景色を見ながら答える。


「感覚的に10キロ以上は歩いてそうですけど……」


「まぁそれくらいだろうなぁ」


 敷島も葛城の感覚に同意する。だがそれに反応する水波。


「まだそれだけ……もうそれ以上に歩いた気分」


 彼女は呼吸を荒くしつつ項垂れる。いつもの正常な心理状況ならば、彼女のその赤みが買った顔に色気を感じなくもないのだが、そんな余裕は一切ない。


「こんな重い荷物も背負ってるからね……」


 浦賀は水波の意見に再び同調する。全員のリュックサックに入っているのは食料に水。その他サバイバルグッズなどなど。これがただ「九州外に歩いていく」なんていう学生のノリと勢いに任せた挑戦であるならば、整地された場所を歩いて必要物資も途中で買えばいい。だがそうはいかないのが今回である。


「本当に、どうしてこんな事に……」


 もはや水波は泣き出しそうな表情だ。平和な国だったはず。戦争とは縁遠かったはず。だがどこからともなくやってきた『敵』によって、その平穏は乱された。そしてその結果がこの状況である。


「悔やんでも仕方ない。方角は合ってる。そうすればいずれは……」


 少なくとも敷島が手にしている方位磁針。自分たちの進んでいる方向は北を意味するNを指している。しかし果たしてそちらに向かえれば助かるのかどうかは分からない。味方がいるであろう場所に近づくだけである。そこから先は闇だ。


「ラジオは? 何か情報は入ってないかな?」


 浦賀が敷島に問うと彼はラジオの電源を入れる。しかし期待した音声は流れなかった。小型のソーラー発電機を用いているだけに電池切れということはないが、やはりこの山の中で電波を拾うのは簡単ではない模様。もしくは単純に近くの基地局が破壊されているだけなのか。


 一寸先は闇の彼らにとって、仮にデマであっても希望となる光が欲しかった。だがまがい物の光ですらもたらされることはなかった。


「どうしますか? そろそろ野宿の準備をしますか?」


 葛城はペットボトルの水を取り出し半分近く飲んでしまう。


「いや、いくらなんでも早すぎる気が……まだ昼過ぎ。昼食にはいいだろうけど、野宿には」


 そして落胆する皆の中での唐突な葛城の意見に戸惑う浦賀。ところが彼の意見は意外とはずれでもなかった。


「でも野宿するには準備が必要ですけど、そんなに準備の経験ありませんし」


「まぁ確かにな。慌てて準備するより、どっしり構えて夜を待ってもいいかもなぁ。というか疲れた」


「賛成」


「私ももう休みたい……」


 彼の意見に3人が賛同。慣れていれば日が落ち始めてから準備してもいいだろうが、彼らはサバイバルには不慣れである。今朝までいた防空壕のようなものが簡単に見つかるとは限らないし、準備はしておいて間違いない。


 そこでこれからは野宿のための場所探しに移行する。あたりを見回して適当な場所を探すのが目的となる。開けたところがいいように思えるが、『敵』に見つからないためにも物影がいいともいえるだろう。


 一見すればかなり迷いの多そうな事だがそこからの行動は早かった。皆も早く休みたいのだろうか。開けてもなく、かといって狭くはないとてもいい場所を葛城が発見。やることといってもできることは寝転べるように石を避けて小さいシートを敷くくらいのものだが、それでもこれだけ早くに準備できたのはとてもいいことではあった。


 午後14時31分。少し早いが今夜の野宿地点を決定となった。


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