第12話 わずかに路線変更
駅に来てみたものの、バスが動いているわけもなく、電車ももちろん止まっている。無人の改札を通り抜けて線路を見てみると、遠くの跨線橋が破壊されているのが見えたし、分かってはいたことだが交通網は完全に停止していると見るべきだろう。
「で、これからどうする?」
駅ビルに誰かいないか散策しながら今後の相談を行う4人。そんなことをすれば『敵』に出会う可能性もないわけではないが、そんなの今更である。敵に出会いたくなければ、そもそもあの穴倉にこもっていればよかったのだから。
「う~ん。人もいないし、ここには何かあるわけでもないしなぁ」
浦賀は敷島の問いに答えながら辺りを見回す。
人がいないのもそうだが、駅ビル内の商店のはずであるものの商品の類はほとんどない。敵に回収されたとみることもできるが、その必要性は疑問が残るところ。さしずめ火事場泥棒と言ったところであろうか。モラルが高いとも言われる日本人も、こういう混乱の場では分からないものである。
「関門海峡を目指す?」
「それもいいかな?」
敷島は答えつつ割れた窓から双眼鏡で遠くを眺める。
「あ~、うろついてるねぇ。偶然、ここに来るまで出会わなかっただけで、いるにはいるみたいだ」
高いビルとなると遠くを俯瞰的に見られる分、情報量も多くなるものだ。敷島が確認する限り、駅前から伸びる大通りには武器を手にした十数人くらいの集団が2個ほど存在。中には日本では見られない、いや、地球上では見られないフォルムのSFチックな車両もある。
「やっぱり市街地は敵が多めか。駅に来たのはまずかったかな?」
「ど、どうするの? ここまでは上手くこれたけど」
敷島の軽い言い方であるが、水波は動揺を隠せない。そもそも敷島がこれだけ口調が軽いのが異常なのである。
「関門海峡に直行します?」
しかし葛城も軽い言い方。
「そうだけど、どうやって関門海峡に行くかだなぁ」
そして浦賀もやや軽い。緊張感が振り切ると開き直ってしまうものなのだろうか。
「市街地は多いみたいですからね。線路沿いなら迷わないかもしれませんが、開けていて危ないので山中や森を突っ切るのが安全でしょう」
「「異議なし」」
「あの……えっと、いえ、いいです」
水波にとっては、初心者が山を行くのは危険ではないのか。そもそもこの市街地をどうやって脱出するのか。だいたいなんでそんなに冷静なのか。とツッコミたい所も多いが、彼女の混乱した頭ではそのツッコミすらも難しかった。




