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なんかエロイ第十話


 ポポとのバトルに夢中になりすぎてすっかり頭から抜け落ちていたが、俺が解決すべき問題はポポ以外にもあったじゃないかと思い出したのがついさっきのこと。


 その問題というのが、蛮族と化したこの街の住人たちである。


 そもそもポポと戦うことになったきっかけだって、俺達が魔王の手先であるという誤解を解くためだ。肉体的にも精神的のもクタクタなため俺もいい加減休みたいところだが、その前に街の住人たちを鎮静化しなければならないだろう。


 しかし――


「ヒキガネさん、どうでしたか?」


「さっぱりだ。ポポ、そっちは?」


「こっちも誰もいないぞ~」


 あちこちを探し回るも蛮族どもは見つからず。

 そこらに奴らが武器として手に持っていたものが放り投げられており、街の外に向かう足跡があることから『消えた』のではなく『逃げた』と推測できるが、しかしその理由が不明だ。


 この街に来たときはあれだけ燃え盛っていた炎も今ではすっかり鎮火しているし、自分たちで放った火に対処できなくなって逃げたというわけでもなさそうだし。


「どういうことなんでしょう……? ポポさんがただの魔王の手先というだけでなく、魔王軍幹部だと分かってさすがに逃げることにしたんでしょうか?」


「えへへ~、なんか照れるな~」


「そのぐらいで逃げるんだったら、ポポのあの破壊痕を見た時点で逃げてると思うが……それに、この燃え尽きたというより、まるで水をぶっかけて無理矢理火を消したかのような燃え跡も変だし……なんか不気味だな」


 この街の消防設備が整っているようには思えないし、雨が降ったわけでもない。なのに建物の下の方は全く燃えておらず、しかも濡れている。


 逃げる前に住人が水をかけて火を消したのか? ……いや、逃げるのにそんなことする必要はないか。だったらこれは一体……?


「おいエリン。一応確認しておくが、神連中が介入した可能性は?」


「ないはず……と思います。そんな通達は来てませんから」


「な~。そこまで気にするようなことか~? なにか問題があったとしても~、ど~せ最後には被害も何もなかったことになるんだろ~?」


「あ、はい。この火事も街の方たちが起こしたものとはいえ、私達が関わったものは全て元通りになります。この街も冒険が終わった後には火事が起こる前に元通りです」


「……じゃ、気にしないって方向で行くか。俺ももうさっさと寝たいしな」


「そうですね……なんだかんだ言って、この世界に来てからまだ休んでないですし」


「あ、じゃ~ポポも一緒に寝る~。ポポ、抱き枕があったほうがよく眠れるし~」


「ヒキガネさんよかったですね。女の子が一緒に寝てくれるそうですよ」


「ポポの抱き枕なんかになったら二度と目を覚ませない身体になるだろうが! 絶対に嫌だからなッ!」


 いや、Jバックを使えば行けるか……? 幼女とはいえ女の子と一緒に寝る機会を逃すのももったいない気が……うん、やっぱやめとこう。もしJバックに時間制限があったら死は免れないし、そもそもポポは観戦してる神連中の推しだ。嫉妬で殺されかねん。


「ま、というわけで俺はあっちの方でまだ使えそうな建物でも適当に探して寝床にすっから、お前たちも自分の寝床ぐらい自分で確保しとけ。んでポポはエリンを抱き枕にしとけ」


「りょ~かい~」


「え? う、嘘でしょ? 嘘ですよねポポさん? どうしてそんなしっかり私を捕まえてるんです? ちょっ、マジで……ああもうなんなんですかこの服! 脱ぐことも出来なければ破けもしない! 無駄に頑丈に仕立ててんじゃねぇですよ先輩のバカァー!!」


 引きずられて行くエリンを敬礼して見送る。さらばエリン、安らかに眠れ……。


 さて、敵前逃亡未遂の罰を与えることも出来たし、俺もさっさと寝床を探すか。


「にしても蛮族どもめ、どんだけ盛大に火を放ってんだ……自分たちの街なのに躊躇なさすぎだろ……無事な建物の一つも見当たらねぇ……」


 かろうじて原形をとどめているのもあるが、それはどれも例の不自然に濡れている建物だけだ。寝心地が最悪なのは間違いない。


 しかし、下手に濡れていない建物を寝床に選ぶのもよくないだろう。崩れて生き埋めになる危険性がある。となると、寝心地よりも安全性をとるべきか。それが賢い選択と言えるだろう。一応野宿という手もないわけでもないが……。


「お、ベッド発見」


 ベッドがあるのにわざわざ外で寝る必要もないな。幸いなことに若干湿っている程度だしあまり気にせず眠れそうだ。


 天井から水滴が垂れているのが残念ポイントだが、まぁそれもベッドの上には落ちて来てないし大丈夫だろう。


「……水滴か」


 そう言えば。

 そう言えばのそう言えば。


 俺はこの世界に来てから飲まず食わずだったな。

 あの色物女神によって目が潤うことはあっても、それで腹が膨れるわけでもないし喉の渇きが癒されるわけでもない。……あ、意識したら急に喉が渇いてきた。


「の、飲んでも平気……だよな……?」


 どこから湧いたかもわからない、そもそも水かどうかすら不明の液体。


 …………試しにエリンに毒見をさせるべきか? いや、どこを寝床にしてるかもわからないあいつを探すのも億劫になるぐらい俺は喉が渇いてるんだ。くそ、これならポポじゃなくて俺があいつを抱き枕に使えばよかった。


「…………うん? あれ?」


 なんか、水滴……さっきより多くなっていか?


 多くなっているというか、勢いが強くなっているというか……なんかこう、明らかに飲めなさそうな粘度のある液体が降ってきてるんだけど?


「――っておいおいおい!? 今度はなんだぁ!?」


 ドロドロとした液体が床にたまってきたと思うや否や、それはまるで意思を持っているかのようにひとりでに動き始め、少しずつ形を作り始めた。


 少しずつ、少しずつ……すらりと伸びる足を作り、モデル体型の胴体を作り、のっぺらぼうのように表情のない顔を作り、ストレートの髪を作り……そうして出来上がったのは、頭のてっぺんからつま先まで青い液体で構成された、明らかに人間ではない……そう、まさしく人型のスライムというのがぴったり当てはまる、そんな見た目であった。


 造形だけならスレンダーなお姉さんの人型スライム。全身に液体を滴らせ、艶めかしい曲線を描きそれを前にした俺に飛来する思いはただ一つ。


「こ、こいつ……な、な……っ!」


 なんか――――エロいな!


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