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二百二十三

 木製のテーブル上に置かれたタマゴ型の宝石を、対面に座る美幼女は驚きの眼で見つめていた。


「なに……これ、綺麗……」


 白大理石とは比べ物にならない滑らかな曲線と光沢。透けているにもかかわらず、中身が見えないという、神秘的でそれでいて生命の息吹すら感じられるタマゴ型の形状に、マリエッタ王女は魅入っている様子だった。


「渡したいモノってコレ……?」

「ええ、そうですよ。ただし、条件が御座います」

「い、いいわ。何でも言って頂戴。何でもするからっ」


 今なら裸で町内一周。とか言っても実行しそうではあるが、それをグッと飲み込んで要求を伝える。


 私からの要求とは、私から貰ったという事は誰にも明かさない。コレの出所は一切聞かない。この二点。


「あーうん。分かった分かった」


 空返事してるけど本当に分かってんのか?


「ところで、コレに名前ってあるの……?」


 そういえば、名付けはしてなかったな。うーん……ポーチドエッグ。あ、それ食べ物か。


「え、エンジェルエッグ……」

「エンジェルエッグ!?」

「私の国の言葉で、天使のタマゴって意味です」

「天使のタマゴ。エンジェルエッグ……素敵な名前ね」


 我ながら安易なネーミングセンスだが、気に入ってくれた様でなによりだ。


「でも、こんなの貰っちゃって良いの?」


 (シルク)製のハンカチに包んで、大事そうに仕舞いながら王女はそう言う。


「ええ。ですけど、さっきも言った様に――」

「お姉ちゃんから貰ったって言わない、何処から見つけてきたか聞かない。だったわね」


 なんだ、しっかり聞いてたんだ。


「はい。あと、お持ちになっている『ブラッディルビー』は、必ずラインマイル卿にお渡し下さい」

「うんっ。それは任せておいて」


 ホクホク顔で王女は応え、帰って行った。どうやら、あっち(ブラッディルビー)の方はもう飽きたらしい。


 よし、これで余計なトラブルに巻き込まれる心配は無くなったな。後は、カーン君の冠位任命式をどうするか……だが、それはオジサマ達と話し合うしかない。


「今はとにかく、自分磨きの修練に集中しよう」


 任命式まであと二ヶ月を切った。剣術も作法も、貴族として不審に思われない程度のレベルまで上げなくては。


「いよっし。やるぞぉー」


 外に向かって、えいえいおー。と気合と共にポージングをし、真っ黒な空と(ふくろう)の様に鳴く鳥の声を聞き、すごすごとベッドに入った。あ、明日からね。

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