二百二十一
ゴトリ……。その音を聞いて、心臓と呼吸以外の時が止まった。
「……へ?」
今日は週一でも月一でも無い事は分かっている。処理に困る様な事など無いから意気揚々と、良く手入れが成された白磁の器に腰掛けたのだが、これは全く予想だにしていなかった。
「そ、そんな、まさか……」
恐る恐る尻を上げる。器に盛られていたのは茶色の粘土質なアレではなく、確実に何らかの鉱物だった。
「な……なんじゃこりゃぁぁっ!」
思わずお隣さんに迷惑が掛かる程の大声を上げてしまった。器に盛られていたモノが、何時もの銀や金では無く白い物体であった事が、そうさせた。
器に盛られた白い物体。それは、テレビで見た事のあるダチョウの卵よりは遥かに小さいものの、スーパーで見掛ける卵よりは断然大きい。
「ついにタマゴを産んじゃった……」
軽い目眩に襲われ、倒れぬ様壁に手を付いて項垂れた――
自室に戻り色々と調べた結果、今日はこの世界に来て半年の日であった事が判明した。
「だんだん扱いに困るモノが出てくるなぁ……」
木製のテーブルに置いたタマゴの様な鉱物を眺めながら、どう処理したものかと頭を悩ませる。お金に困らないのは有難いが、銀や金ならともかく、未知の鉱物なぞ売ろうにも売れない。また要らぬ騒動に巻き込まれるだけだ。
「誰かに押し付けちゃおっか……」
そう決めると頭にリリーカさんの顔が真っ先に浮かんだ。
「でも、必ず出所を聞かれるだろうな……」
それはおばさまも同様だろう。ならばルリさんは……? うーん、喜んで受け取るだろうけど、彼女も出所を聞いてくるだろうな。私の血が混ざって出来た『ブラッディルビー』は森の中で見つけた事で納得させたが、流石に同じ場所で見つけたって言い訳は通用しないだろう。
「となると、残りはマリエッタ王女、か」
タドガーに渡したと思しき『ブラッディルビー』の代わりだ。と言えば嬉々として受け取ってくれるだろう。加えて、私からでは無く知人から献上された事にして貰い、出所は分からない様にしてもらえば、私への言及が出なくて済むだろうな。
「よし、その作戦でいこう。まずはオジサマに頼んで、王女を呼んでもらわなきゃ」
テーブル上に置かれたタマゴを夢中になって、てしてし。と肉球パンチを繰り出す『にいちゃん』から取り上げてクローゼットに仕舞うと、訓練をすべくオジサマの家に向かった。




