二百一
オジサマから聞かされた話に、おばさまもリリーカさんも、そして私も唖然としていた。
「それは、本当ですの……?」
「ああ、そうだ」
誰も居ない店内に、蛇口から滴り落ちる水の音だけが響く。オジサマの話はフォワール卿に代わる、第九位に任命された人物の事。
「冠九位はルレイルに決まった」
ルレイル=イクテュエス=パーソンズ。港を取り仕切る通商ギルド『アルカイック』のギルドマスターにして、現冠十二位の貴族様だ。それが九位になるのだから、実にめでたい事だ。後でおめでとう。と言ってあげよ。
「じゃあ、ルレイルさんに代わる十二位は誰なんですか?」
「それが……」
オジサマの口から、あり得ない単語が紡がれる。
「え……? オジサマ、それは冗談ですよね……?」
「いいや、本当だ。冠十二位に任命が決定したのは、カーン=アシュフォードだ」
な、何だってぇぇっ!?
冠十二位はカーン=アシュフォード。その決定に、開いた口が塞がらない。
「ど、どうしてですか?! 素性もよく分からない人物を国家の重鎮に据えるなんて。他に幾らでも相応しい方が居らっしゃるのにっ」
そもそもカーン=アシュフォードは架空の人物だ。しつこいフォワールを遠ざける為だけの役割だった。
「オレもそう進言した。しかし、陛下は考えを改めてくれはしなかったよ」
国王陛下は、カーンがリリーカさんと夫婦になれば、冠七位の職務を任す事になる。イキナリやらせても戸惑うだろうから、その慣らしとして任命するのだという考えの様だ。ウーン。話がどんどん大きくなってゆく……
「カーンを十二位に。と、一番熱心だったのは、意外にもタドガーでな。どういう訳かそれに賛同する者が過半数を締めた」
タドガーがカーン君を推した……? その上、過半数の人が賛成しているって事は、ヤツを毛嫌いしていた五位六位のマダム達も賛同したって事だ。『あるいはスグに会えるかもしれませんね』。あの時言った言葉はコレを暗示していたのか……
「となると、ちょっと不味い事になりそうだわね」
おばさまはウーン。と考え込む。事情を知らないオジサマは首を傾げていた。
「何の話だ……?」
「お父様、タドガーの狙いはお姉様がお持ちになられた鉱石かもしれませんの」
一連の事情を話すと、オジサマはふむ。と考え込んだ。
「成る程な。それであのバアさん供も目を輝かせていたのか……」
まあ、光り物に目が眩みそうな人達ではあるけど、バアさん供って。
「では、王女殿下から鉱石を返して貰い、ソレを与えてやればどうだ?」
医療機関ならまだしも、一個人にアレを根掘り葉掘り調べられるのはちょっと……




