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百九十六

 リリーカさんが見せた似顔絵に、ソレがどんな生き物なのか即言い当てたタドガー。まさか、コイツが飼い主……?


「もしかして、『へミニス』様がお飼いになられているペットですか……?」


 私からの問い掛けに、はあ? といった顔をするタドガー。何もそんな迷惑そうな顔せんでも……


「別に私は飼っていませんよ」


 違うのかよ。


「そうですか。カナさんが飼われていたのですね。では、お返し致しましょう」


 返す……? 言っている意味を頭で整理でしていると、タドガーは白衣のコートの片方をバサっと翻す。中には肩からベルトで括られた小さなカゴがあり、そのカゴにはもふもふ。とした何かが入っていた。


「あっ! 『にぃちゃん』っ!」


 そのもふもふの正体は、行方不明の『にぃちゃん』だった。


「屋敷に迷い込んでいた様でしてね。飼い主の捜索依頼を出そうと思っていた所なんですよ」


 用事というのは依頼を出す為だったのか。顔はアレだけど、根は優しい人なのかな……


「丁度良いですから、このままお返し致しましょう」


 タドガーはベルトからカゴを外し、カゴごと『にぃちゃん』を渡してくれた。その振動で『にぃちゃん』は目を覚まし、私の顔を見てにぃ。と鳴く。


「なるほど、それで『にぃちゃん』ですか……安直ですね」


 タドガーはプッと吹き出す。やかまひいわっ。


「あ、あの。何かお礼を……」


 実験を中断してまで届けようとしてくれたのだ。何かお礼はすべきだろう。


「お礼? お礼ならば、今しがた良い表情(かお)を頂きましたから、ソレで十分ですよ」

「いえ、でも……」

「そこまで仰るのならば、カーン殿に鉱物の出土場所をお聞き下さい」


 うっ、そうきたか。


「彼は『リブラ』の婚約者。婚約しているという事は、近いうちに挙式を挙げるのでしょう? その時に……いえ。あるいはスグに会えるかもしれませんね。さて、長居をしてしまいました。私は実験に戻るとしましょう」


 タドガーは踵を返して一歩を踏み出し、その動きを止める。


「そうそう、一つ忠告しておきます。その『にぃちゃん』……ぷっ。は、希少な動物ですからね。バレれば大騒ぎになりますから、部屋の中で大事にして外へは出さない方が良いですよ」


 そう言い残し、タドガーはこの場から立ち去って行った。ご忠告は有難いが、名前で一々吹き出すな。


「性癖はともかく、根は良いヤツなのかもね」

「そうだと良いのですが……」


 タドガーの後ろ姿を見ながら、何か考え事をしているリリーカさん。


「何か心配事?」

「ええ、少し気になった事がありまして……」


 その『気になった事』を、タドガーが居なくなった裏路地を見つめたまま話してくれた。

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