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百九十七

 終始タドガーを見ていたリリーカさんが不審に思った点とは、『にぃちゃん』を私に渡した事であるという。……別に問題無いと思うんだけど?


「ペットを探している事と、似顔絵を出したのは(わたくし)です。にもかかわらず、彼はお姉様のペットだと思っているフシがある様です」

「でもそれは、私がこのコの名前を言ったからじゃないのかな」


 あの、プッと小馬鹿にした様な吹き出しは、何度思い返しても腹が立つ。


「それだけでお姉様が飼い主だと判断出来るものでしょうか……?」

「思い過ごしだと思うよ。それより私は、カーンになりすましていた事を突かれたら、どうしようかと思っていたけど……。『似ている』だけで済んで良かった」

「いえ、お姉様。彼は完全に知っておりますわ。知っていてあの様な事を言ったのです」


 私がカーン=アシュフォードと知っていてあんな事を言ったっていうの!?


「え……? な、何の為に?」


 リリーカさんは首を横に振る。


「分かりません。ただ、彼はお姉様に興味がある事は分かります」


 リリーカさんと話をしている間も、ちらりちらり。と視線を私に向けていたのは知っている。その度に、ゾクゾクゥっと寒気が走り抜けていたものだ。まさか愛の告白。って事にはならないと思いたいが……勘弁して欲しいなぁ。


「ま、まあとにかく、こんな辛気臭い場所で考察しているよりおばさまと合流しましょう」

「そうですわね」


 カゴに入った『にぃちゃん』に、タドガーの忠告通りに布を被せて誰にも分からない様にし、裏路地を出た。




 裏路地から大通りへと出た私達は、そのままオジサマのお店へと南下する。裏通りとは違い活気溢れる大通りには、道の両側に売店が並び、街に来たばかりの冒険者や、夕食の買い出し客であろう人達が、ちらりほらり。と見られた。


 そんな中、矢鱈と肉付きの良いトドが、お店のカウンターにのし掛かっていた。あ、おばさまか。一瞬トドに見えたよ。


「お母様」


 リリーカさんの声に反応し、カウンターにのし掛かる様にして店主と話をしていたおばさまは、満面の笑みで迫り来る。


「リリー、カナちゃん。そっちはどうだった? おばさん一生懸命聞いたんだけど、全然見つからないのよ」


 おばさま、口元に付いている青のりは何ですか?


「お母様。口元に青のりを付けたままですわよ」

「え……? あらやだ……」


 おばさまは、服の袖で口元をグィッと拭う。多分、その袖に付いていたのだろう。青のりの代わりに、今度はソースがベッタリと顔に付いた。


「全くもう……」


 リリーカさんは大きくため息を吐き、ポケットから取り出したハンカチでおばさまの顔を拭う。


「こ、これはあれよ。じ、情報料ってヤツよ」


 何が情報料か。ただ買い食いしてただけだろっ。

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