トールキンにあれこれ質問する
祖父の商隊がメーリングに到着するまで、サーラ王国に行くのは、メリルに拒否されたので諦めたアスランだった。
メーリングのバザールを見学して、レイテのより品質が悪いのをチェックする。
「高い商品は、後ろの商館で扱っているのか。まぁ、それはレイテでも同じだが、より品質は悪いって感じだな」
東南諸島連合王国から運ばれた品物は、その通りだが、イルバニア王国の農産物も売っている。
小麦やワインは人気商品なので、大きな商館も多い。
「乳製品は、航海の間に劣化するから、危険なのだな」
アスランは、風の魔法で冷やせないか考える。
東南諸島連合王国の首都があるファミニーナ島から、少し離れたケーレブ島は美味しいフレッシュチーズが特産品だ。
そのチーズ専用の運搬船には、風の魔法を使う船員が乗って、新鮮なうちにレイテにと運ぶのだ。
ヒューゴ王の王宮でも、たまにフレッシュチーズが供されて、アスランも好物だった。
メリルと飛べるようになると、フレッシュチーズを買っては、母上と祖母にプレゼントしていたアスランだ。
商館の召使いに、各種のチーズを買って来させる。
日持ちのするのと、味が良いのを選びたいからだ。
交易するのには、日持ちするのが良い。自分が食べるのは、味が良いのを選ぶ。
フレッシュチーズよりは、どれも日持ちが良いので、帰りにはお土産にしようと考えるアスランだ。
ヒューゴ王の第二夫人として、他の妃からの嫉妬を買っている母上が少しでも気が晴れると良い。
アスランなりに優しさも持っているのだが、本当にリアンナ妃の心を穏やかにするのなら、第一夫人のスーリヤの指示に従った方が良いのだ。
ヒューゴ王の第一夫人に逆らうアスランの悪評は、レイテ中に広がっている。大人しいリアンナ妃は、ヒューゴ王やスーリヤ様に申し訳ない気持ちでいっぱいで日々を過ごしている。
アスランが、月に一回は後宮に顔を見せてくれるが、女官の付き添いもあるので、やんわりと「第一夫人の言われる事に従うのですよ」と忠告する事しかできないのだ。
この気の弱さがアスランには全く遺伝していない。祖父のトールキンは、心の優しい娘を愛していたが、ほんの少しだけ孫のアスランの強気を持って欲しいと願う。
そうでないと、ヒューゴ王の後宮で第二夫人など務まらないのではと案じていたのだ。
だが、竜で勝手にメーリングに飛んで行ったアスランには、きっちりと説教をするつもりだった。
あまりに傲慢な態度は、レイテでも知られており、娘のリアンナも案じているだろうと思っていたからだ。
「アスラン王子!」と自分の商館なのに、主人のように寛いでいる孫に雷を落とす筈だったが、反対にアスランから質問責めにされた。
「スーラ王国には、小麦、ワイン、チーズ、それに上等な更紗と香辛料を持って行くのだな? 香辛料は、スーラ王国から買うのだとばかり思っていたぞ」
トールキンは、商売が大好きだ。本当なら、息子に譲る年になっているのだが、まだまだ自分で売り買いしたいと考えている。
「それは、東南諸島連合王国で取れる香辛料とスーラ王国で取れる香辛料が違うのですよ」
ついつい、商売の話で盛り上がり、アスラン王子を叱るのを忘れるトールキンだ。
「スーラ王国は、東南諸島連合王国と同じ米を食べる文化だと教わったが、麦をこんなに輸入するのか?」
「それは、庶民は米を食べていますが、贅沢好きな王族や神官達は、北の大陸の食文化に影響されています。ワインに合う料理を好むのでしょう」
「ふん! 千年を超える王国だと偉そうなくせに、北の大陸の食を好むのか? 馬鹿ばかりだな。自国の産業を疎かにして、国は成り立つのか?」
トールキンは、何回もスーラ王国に行った事があるので、苦笑する。
「あちらは、何事もゆったりと進みますし、王族と神官に逆らっては、商売も成り立ちません」
自国の官僚達の賄賂を求める体質に苛立っていたアスランは、眉を顰める。
「それで国が成り立つのは不思議だ!」
「スーラ王国には、蛇神様がいらしゃいますから。あまりに酷い場合は、蛇神様が成敗なさるのでしょう」
ヘビが嫌いなアスランは、必死で平静を装うが、スーラ王国に行くのが嫌になってきた。




