↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アスランの風  作者: 梨香


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
13/15

アスランとフラナガン

 東南諸島連合王国のイルバニア王国駐在大使のフラナガンは、ヒューゴ王に信頼されているが、第四王子の悪い噂も少しは耳にしていた。


 だが、まだ幼いので自分とは関わりが無いと、情報を積極的に集めていなかったのを後悔する。


「フラナガン、メリルにイルバニア王国の太った牛を手配しろ。メーリングで脚を食べたが、まだ入る筈だ」


 いきなりメリルを大使館の裏庭に置き去りにしたと思ったら、数時間後に呼び出して、メーリングに帰ったのだとばかり安堵していたのに、夜に戻ってきた。


「どちらにおいでだったのですか?」


 メーリングに戻って来たのでは無さそうだ。それに、どうもユングフラウの竜騎士隊が落ち着かない。


「ふん! お前に説明する義務はない」


 いや、大使であるフラナガンに命じる事ができるのは、ヒューゴ王と外務大臣だけなのだ。


 ヒューゴ王は、何故か宰相を置いていないのが、フラナガンにとって不満だと気持ちが逸れそうになる。


 長椅子に寝そべって偉そうなアスランを目にして、王子と言えど、まだ幼く成人前なのに、噂どおり傲慢だとフラナガンは溜息を押し殺す。


 ヒューゴ王の寵愛を欲しいままにしている第二夫人の王子として、第一夫人の言う事も聞かない我儘王子だとレイテで悪評が立っているのだ。


「牛は手配しますが、お祖父様はここにいるのをご存知なのでしょうか?」


 フラナガンは、傲慢なのは別に構わないが、王子を第一夫人が一人で航海させるわけがないと分かっている。


 アスラン王子の外祖父のトルーキンは、レイテでも一番の大商人だ。その商隊でイルバニア王国に来るのは、第一夫人も許可をしているのだろうが、単独行動は?


「トルーキンは、明後日にはメーリングに着くだろう」


 勝手に竜で飛んできたのだと頭が痛くなる。


「第一夫人のスーリヤ様は、そんな勝手な事をして良いと言われたのですか?」


 フラナガンは、ローランド王国、カザリア王国と外交官で赴任して、旧帝国から独立した大国の竜騎士を尊重する考えも理解している。

 だから、イルバニア王国の大使に選ばれた外交官畑のエリートだ。


 だが、東南諸島連合王国の第一夫人システムの重大さも理解している。特に、ヒューゴ王の第一夫人であるスーリヤ様の意に反する事は、絶対に駄目だとアスラン王子に注意する。


「口煩いスーリヤの言う事を聞いていたら、真面目だけど何もできないお人よしか、王族ぶる馬鹿か、軍艦しか愛さない男になる!」


 うっ、とフラナガンもヒューゴ王の王子の盛大な悪口に口籠る。


 王の後継者問題に口を出すのは、死刑宣告に等しいタブーだけど、皆が案じているのも確かだ。


 穏やかだか物足りない第一王子、王族の母を持つ威張りん坊の第二王子、軍艦にしか興味がない第三王子。そして、傲慢で第一夫人の言う事を聞かない第四王子。


 ハーレムには大勢の美しい妃がいるのに、ヒューゴ王には王子が少ない! 


 野心を持つ武官、文官、大商人達は、美しい娘を後宮へと送り込もうと必死だが、アスラン王子の母親が第二夫人として、ヒューゴ王の寵愛を独り占めしていると噂されている。


 そのリアンダ妃も、悪評の一翼だ。ヒューゴ王が王太子だった時に寵愛していた妃を、前王が横恋慕して聞きにくい大スキャンダルになった。


 その時、自害した妃の姪がリアンダ妃なのだ。


 傲慢そうなアスラン王子の凄く整った顔を見ると、リアンダ妃も素晴らしい美人なのだと察せられる。


 手配された牛の半身を、大使館の裏庭でバリバリとメリルが丸齧りしているのを見るアスラン王子の横で、フラナガンも仕方なく立っているが、胸がむかついてくる。


『美味しい牛だ』とメリルが喜んでいるのを見て、アスランも大使館の中に入る。


「お食事もまだなのでは?」と胸のムカつきを抑えて、フラナガンは用意をさせようとする。


「いや、食事は済ませてきた」と言うアスラン王子だが、どう見ても食欲不信なのは、竜の食事風景のせいだとしか思えない。


「気分が悪くなるなら、使用人に食事を任せたら宜しいのでは?」と提案する。


 アスラン王子は、同じ年頃の男の子としても、小さい。王宮で食事もたっぷりと用意されているだろうに、竜の食事を見て食べられないのではと、フラナガンは心配したのだ。


「竜の食事を管理するのは、竜騎士の勤めだ!」


 どうやら、食欲も出てきたらしいアスラン王子に遅い夕食を用意させる。


「食事は済ませた」と言うのが嘘だったとわかる、小さい身体の割に大食だ。


 そんな瑣末な事など、気に留めていないアスラン王子だが、食欲の後は、知識欲を満たそうとフラナガンに次々と質問する。


 その中に、ローラン王国のイルバニア王国への侵攻の危険についての質問が多く。


 フラナガンは、幼い王子の賢さに舌を巻く思いだった。


「もう、寝る!」と突然立ち上がり、召使いに寝室に案内させる傍若無人振りに呆れて、物が言えない。


 だが、慌ただしい動きを諜報活動させていた者が「北の砦に竜に乗った子どもが侵入したそうです」と報告したので、頭が痛くなった。


「アスラン王子!」と寝てしまったので怒る事もできないが、朝になったらキッチリと指導しようと考えるフラナガンだった。


「アスラン王子は?」


 朝起きたら、夜明けと同時に竜と飛び立ったと聞き、フラナガンは『絶対にヒューゴ王がアスラン王子を後継者にしませんように!』と祈った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。