幕間 4 理由
幕間 理由
「ねえ、結衣って好きな人いるの?」
突然でした。
恵子ちゃんがいきなり聞いてきました。
本当に突然です。
さっきまで今日のお弁当もおいしそうだねなんてありきたりな会話をしていたのです。
恵子ちゃんがいきなり話を脱線するのはいつものことでしたがそれにしてもいきなりすぎて、思わず慌ててしまった私はごまかすこともできずに正直に答えてしまいます。
「い、いるにょ…」
恥ずかしいです。
恥ずかしさのあまり途中で消え入りそうな声になってしまいました。
しかも噛みました。
うう…
恥ずかしいです。
それに恵子ちゃんは、
「やっぱ結衣は可愛いなぁ…」
と言い、何やら少し興奮気味のようです。
ちょ、ちょっと怖いです。
「で、誰、誰?」
「……くん」
「もっとはっきり!」
怒られてしまいました。
「杉村くん…」
何とか言えた私の顔はもう真っ赤です。
鏡を見なくてもわかるほど顔が火照っています。
「えーー。杉村?あんないつもボッチで根暗で不良みたいなのが好きなの?」
もうボロクソです。
杉村くんかわいそうです。
ちょっと怒りながら、
「そんなことないよ…。確かに学校はサボりがちだけど、いつも周りの人に気を使ってるし優しい人だよ…」
と反論します。
いつもあまり自己主張しない方ですがこればっかりは譲れません。
それにちょっと驚きながら恵子ちゃんが言い返します。
「気を使ってる?優しい?っぷ、はははっ。何それ少女漫画みたく不良が子猫を助けたところでも見たの?」
というか笑い過ぎです。
いくら親友でもちょっと怒りますよ?
「そういう特別なことを見たわけじゃないよ。普段の杉村くんを見てるとわかるよ。人とすれ違う時には相手よりも先に気が付いて道を譲るし、机から物が落ちてれば何も言わずに戻しておくし、他にも普通ならだれも気にしないようなこといっぱいしてるよ。そんなの周りのことを想って無意識にしてなきゃできないよ。」
「ふーん。そんなもんかね?」
「そういうものだよ。」
私は言い切ります。
それから何日かして、
「確かに結衣の言うとおりだったよ。アイツ悪ぶってるわりには全然いいやつっぽい。」
「でしょ?」
こうして親友に認めてもらうこともでき、無事に片想いをしています。
別に恵子ちゃんが認めなくても好きなことには変わりませんが、それでも親友に認めてもらえないのは悲しいです。
これは私の初恋の話…
まだ誰もいなくなっていなかった頃の…




