表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

9/9

第9話 元婚約者の釈明

フェリクスが北辺へ来たのは、雪解け前の曇った夕方だった。


「セレナ、落ち着いて話をしよう」


 王都にいたころと同じ柔らかな声だった。だがその声で、何度私の仕事が後回しにされたかを私は知っている。


「君が婚礼主任では目立たない。ミレイアの方が表向きに都合が良かっただけだ」


「私の認証まで使って?」


 フェリクスは言葉を詰まらせた。


「局長命令だった。私は君を戻すつもりだったんだ」


「戻して、また裏で番号を消させるつもりですか」


 私は四八七二の写しと偽婚約印の控えを机へ並べた。フェリクスの顔色が変わる。


「君はこんなことで自分の将来を潰すのか」


「潰したのはあなたでしょう」


 静かに言えたのは、北辺で自分の声を取り戻したからだ。フェリクスは最後に「まだ間に合う」と言い残して去った。


 扉が閉まると、アルノーが短く尋ねる。


「未練は」


「ありません。紙より薄い男だって、ようやくわかったので」


 その返事に、彼の口元がほんの少しだけ緩んだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ