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第12話 公開閲覧日のざわめき
北辺誓約庫の公開閲覧日には、予想以上の人が集まった。
再発行待ちの未亡人、婚約証を勝手に使われた商家の娘、離縁証の控えを失くした貴族夫人。王都で追い返された人たちが、雪道を越えてここへ来る。
「王都では、後日また来いとだけ」
「押印者が不在だから無理だと」
ざわめきの中で、私は机を二つ増やし、未整理箱をすべて開けた。照合で道筋を出し、アルノーの側近ベルトが台帳を写し、シスター・ノーラが控えを整理する。
返せる証はその日のうちに返し、足りない証は理由を明記して預かる。曖昧にしないだけで、場の空気は驚くほど落ち着いた。
「誓約庫って、こんなふうに使えるんですね」
クララがぽつりと言う。私は頷いた。
「本来は、そうあるべきなんです」
夕方、閉庫後の机には空になった箱と、感謝の言葉を書き残した小さなメモが積まれていた。派手な祝宴の招待状より、ずっと重い紙だった。




