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第10話 王都持参金庫の空箱

ヘレナの持参金宝飾を追うため、私は王都持参金庫の搬出記録を取り寄せた。


 箱番号三一は確かに入庫している。だが出庫欄には「婚礼飾付用仮借出」とあり、借出人の名が空欄になっていた。ありえない記録だ。


「箱そのものを見たい」


 私が言うと、アルノーは即座に王都監査府へ書状を飛ばした。数日後、届いた報告には短い一文だけがあった。


 箱は空。


 中身の耳飾りと首飾りは、祝宴用の飾付品として転用後、返却記録なし。


「死人の宝飾を花嫁席へ回したのね」


 私は唇を噛んだ。ミレイアの祝宴がやけに豪奢だと噂になっていた理由が、こんな形でつながるとは思わなかった。


 アルノーが机の端を指で叩く。


「宝飾は動く。紙だけより追いやすい」


「どこかで誰かが着けるから」


「なら、祝宴で光る」


 私は顔を上げた。義妹の首元で、未亡人の持参金が光る。それはもう、偶然では済まない。


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