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138 偶然の再会

《SIDE:大鳳(おおとり) 蒼獅(あおし)


「ハハ……ざまぁみろってんだよ……クソクソ……」

 薄暗い部屋で、青い髪をした男がキーボードをカタカタと叩いていた。

 モニターには大型掲示板が開かれており、【ハルカスレッド】という文字が記されている。


 そこで蒼獅はただひたすら、自分の怒りをぶちまけていた。

 自分がひどい目にあったのはすべてハルカのせいである。


 蒼獅はそう認識していた。

 そのため、誹謗中傷、過去の捏造、とにかくハルカの評判が下がりそうなことは何でも書き込んでいた。


 掲示板への書き込みは、身元を隠すために特殊なツールを使用していた。

 それこそ警察が介入しない限り絶対に、絶対に、絶対にばれないはずだ。

 蒼獅はそう考えていた。


「クソ……。俺ちゃんがなんでこんな目に……」


 ハルカのチャンネル登録者数を見て、怒りが再燃する。


「そこにいたのは、俺ちゃんだったはずなのに!」


 蒼獅は疑わない。

 ハルカにさえ陥れられなければ、今のハルカの地位にいたのは自分だったはずなのだ。

 彼はそう思い込んでいた。


「そんなズルは、絶対に許さない。潰してやる」


 蒼獅は燃やしてきた。

 ネット上でたくさんの人間を燃やしてきた。

 歌手も、女優も、配信者も。


「俺ちゃんに燃やせないものは、ない……!」


 蒼獅はハルカを貶めるために少なくない金額を使っていた。

 資金源は親にねだったお小遣い、または、過去に他人の秘密を暴いて脅迫同然にして奪った金銭である。


 それらを使って、とある伝手で紹介してもらった海外の動画作成会社にハルカ叩き動画を作らせていた。


「真実はいつも……俺ちゃんが作る!」


 そうだ。

 ハルカは若くして成功している。

 卑怯なやり口だったとしても、成功している。


 それは認めなければならない。


 だが、彼を妬む人間はたくさんいる。

 自分よりも下の人間が上に行こうとしたとき、引きずり下ろしたくなるのが人間だ。


 蒼獅は信じている。

 人間を信じている。

 彼らの暗い欲求を信じている。

 実際に蒼獅はそれを何度も利用してきた。


「上に行った人間が失敗したら、みんな喜ぶ。俺ちゃんは、みんなの笑顔のために仕事してんのよ」


 実際に蒼獅の支援者もいる。

 連れていかれた海外から脱出する手引きをしてくれた人間。

 蒼獅に応援メッセージを送ってくれる人間。


 そいつらはみんな、ハルカを叩き落としたいと思っている。


 ――年齢相応に、ただの高校生まで落ちろ。

 ――いいや、それじゃ足りない。今までいい思いをした分、これから先ずっと底辺で生きていけ。


「おし。いったん作業おわりっと」


 蒼獅は動画のアップロードボタンをクリックした。

 複数あるパソコンは、すべてエンコーディング作動中だった。

 日本語すら怪しい業者もいるため、一部動画の仕上げ作業は自分で行うこともあるのだ。


「にしても、腹ァ減ったな。なんか食いに行くか」


 蒼獅は上着を羽織り、キャップをかぶって部屋の外に出る。


「へっ……。俺ちゃんの仕業なんてわかるわけがねえ。怯えろよ、ハルカ。お前の人気もここまでだ」


 誰に攻撃されてるかもわからず、永遠に怯えろ。

 違法行為と断定できる行為はしてないから、警察も介入しづらいだろう。


 絶対にバレるわけがない。


 そんなことを考えながら、蒼獅は近くの喫茶店に入り店員を呼んだ。

「ミートソーススパゲティ、コーラ」

 店内の壁掛け時計は午後七時を少し回っていた。

 そりゃ腹も減るわけだ。


「あ、待って。コーラ。氷多めで。ぬるいのいやなんで」


 そう言ってから舌打ちする。

「よく来てんだから、覚えろよな。ほんと使えねーなこの店」

 小さくつぶやく。


 届いたスパゲティを食べながら、蒼獅は思った。


 ――ハルカ、てめえもこのスパゲティのように、ぐっちゃぐちゃにしてやるよ。


 恨みを込めてスパゲティをフォークで突き刺し、ぐるぐると巻き取った。

 口の中に放り込み、まるでストンピングでもするかの如く荒々しく噛む。


 食べながら、スマホを取り出しネットに口コミの書き込みを始める。

「〇〇喫茶 ××通り店。ほんとこの店のバイト、マジで態度悪い……っと」


 その瞬間、ウィーン……と自動ドアの開く音がした。


 ふと、そちらを見てブホォ――! と蒼獅はスパゲティを口から跳ねさせた。


 そちらには、何度も何度も、夢にまで見た顔があった。




 ハルカである。


 一瞬、呼吸が止まった。




 蒼獅の行きつけの喫茶店にハルカが現れたのだ。




 心臓の鼓動が強くなる。

 冷汗がだくだくと顔から下へと流れていく。



「お、おち、おちおちおちおち落ち着け俺ちゃん」


 ――たまたまだ。偶然だ。バレるわけない。


 だって匿名化ツールはすごいのだから。

 ハルカのような一介の高校生が、わかるはずがない。


 警察などの機関が介入し、プロバイダから情報を得なければ、身元が露見するわけがないのだ。



 蒼獅は目を伏せる。


 どうか、こっちへ来ませんように。


 ハルカはレジで注文してトレイを受けると、まっすぐ蒼獅のほうへと歩いてきた。


 ――こっちくんな! 他にあいてる席なんていくらでもあるだろうが!


 しかし願いもむなしくハルカは蒼獅に向かって歩いてくる。


 ──やめろやめろやめろ! 遠くの席へ行け! 近くに座るな!!


 そして、蒼獅の前に立ち止まった。


 ――なんで……? 話しかけるなよ? 話しかけるなよ!?


 ハルカが口を開く。


「ここ、相席いいですか?」


 あまりの、想定外すぎる言葉に蒼獅の頭は真っ白になった。

 最悪の展開だ。


「え、ハイ……。ウッス……」


 さっさと食って逃げよう。

 クソ、覚えてろよ。

 マジで日本にいられないぐらいぶっ叩いてやるからな――!


 蒼獅はそう思ってスパゲティを口に急いで詰めた。


 しかし、最悪の展開はさらに絶望の最高記録を更新していく。


「えっと、蒼獅さんですよね」


「……へ? あ?」


 まさか、ばれてる……?

 キャップを深くかぶってるのに!?

 うそ、うそ、うそうそうそうそうそうそ!

 うそだろ!?


「や、その……えっと、ちが……」


 蒼獅がかみかみになってそういっていると、思いもよらない展開になっていく。


 なんと、あのハルカが頭を下げたのだ。


「ちょうどよかった。あの、あなたにお願いがあるんです」


「へ?」


「あなたは数々の炎上事件に関わってきたと聞いてます」


 やっぱりバレてる!?


「い、いやいやいや。俺ちゃんは、炎上なんて、ほんとに、全然、何にも関係ないですけど!?」


「オレを助けてくれませんか!? 炎上して、大変なんです……!」



 ――え?


 ――もしかして、バレてない!?


 蒼獅は天に感謝した。

 こんな悪魔みたいなやつ、関わるだけ損だ。

 こういうやつには、安全圏からぺちぺち遠距離攻撃をするだけでいいのだ。


 なんとかこの場を切り抜けて、これからも叩き続けよう。



 やはり、匿名化は最強だ。

 ――俺ちゃんの仕業なんて、ばれるはずがない!


 そうだ。助けてくださいと言っていたな?


 この機会に手伝うふりをして、さらにハルカ追い詰めてやる!


 そう思った瞬間、ハルカが一瞬だけ笑ったように見えた。

お待たせしました~!!


めちゃくちゃ楽しく書いてます!!

この章、書いててめっちゃ楽しいです!


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そのうちお目見えすると思うので、楽しみにしていただけたら嬉しいです!


次の更新は

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ここまで読んでくれて、本当にありがとうございます。

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