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妖の親玉と退治屋

 敬子達に気付いた麗華が、助けを求める声を上げた。

 麗華が生きていたことに、敬子は一先ず安心する。

「こっちよ! 早く、お祖母様を助けて……!」

 そう言って麗華が指差す先には、一人の老女がいた。老女は、巨大な鼠の左手に大事そうに抱えられている。

 敬子は、自分達の周りに再び結界を張りながら、彼女を観察した。

 結界の中には、怪我人の次郎や真、子供の退治屋も入っている。


 黒鵜がゆっくりと視線を上げ、敬子の方を見た。

 目を大きく見開いているところを見れば、自分の張った結界に驚いているのだろうか。それとも、敬子が生きている事に衝撃を受けているのだろうか。

 どちらにしても、敬子は黒鵜に良い感情を持ってはいない。不快な視線はさっさと無視した。

 その間に、豪也と香葉が巨大な鼠の妖の前に立っている。

「香葉、いけそうか?」 

「何とも。かなりの大物だね」

「ああ、ここまで力を付けた奴が、なぜ宮殿に入り込んでいたのか謎だが。俺達がすべきことは、一つだけだ」

「鼠退治だね」


 その言葉を聞いた巨大鼠が、大きな咆哮を上げた。甲高い、耳障りな鳴き声だ。

 敬子は思わず耳を塞いだ。

 巨大鼠の鳴き声を合図に、小さな鼠達が退治屋を取り巻く。


「うわあっ、やめろ!」

 一番若い弟子の退治屋に、小さな鼠達が一斉に飛びかかった。

 鼠は退治屋の弟子の足を伝って背に、腹に一斉に登り、退治屋の弟子の全身が鼠で覆われる。

 しかし、小さな鼠達の反撃は止まず、鼠の上から更に別の鼠達がよじ上り、弟子の一人がいた場所には鼠の黒山が出来上がった。

 師の退治屋が弟子の名を呼びながら、必死で鼠達を追い払おうとするがキリがない。

 もう一人の弟子は、自分に這い上がろうと迫る鼠を巻くのに精一杯だ。


 そんな中、豪也と香葉は、迫り来る大量の小さな鼠達を無視して巨大鼠に攻撃を仕掛けていた。

「あーあ。せっかく集まった退治屋があの程度じゃなあ……豪也と僕だけの方が効率が良かったね」

「……俺達だけでは、この親玉鼠を見つけるのも一苦労だったぞ」

「僕は鼠と相性が悪いんだよ」

「お前は、虫の妖のときも鳥の妖のときも文句ばかり言っていたな」

「だって、豪也が僕の嫌いな妖の相手ばかりするんだもの!」


 人食い花の妖である香葉が、大きな刺のようなものを鼠に突き刺した。

 鼠の動きが多少鈍くなったところに、豪也が剣を振り下ろす。県は、鼠の肩をかすめた。


「ギャッ」

 苦痛に声を上げた巨大鼠だが、すぐに体勢を立て直して豪也に反撃する。巨大鼠の腕が豪也に当たり、豪也は壁に叩き付けられた。

「「豪也!」」

 敬子と香葉が、同時に声を上げる。


 巨大鼠は、手に握っていた祖母を手放すと、両腕と尻尾を振り回した。退治屋達は慌てて巨大鼠から距離を取る。

 逃げ後れたのは、鼠に包まれた弟子とそれを庇う師の退治屋だった。


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