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第38話   火力武装しました。   




 三十ニ階層。

 超越時代の遺跡の中、精霊使いのゴルベーザの話によれば、この先で魔導機械に人が襲われていると言う。

 冒険者ギルドの高ランクの猛者でも梃子摺るような遺跡。

 その上、一般人は入れ無いように、入り口も封鎖されているはずだった。

 どうやって、入りこんでここまでやって来たのか?

 疑問を覚えつつも、現場に駆けつける。



 そして、広場に走りこんだフィオは見た。


 バラバラになった。

 魔導機械の残骸を。


 その破片の中心には一人の男が立っていた。


「グラナスッ!!なぜ、てめぇがここにいるんだっ!!」


そして、その男を見るや否や、叫んだのはゴルベーザだった。

(―――男言葉になっていますね)


周りがうろたえてれば、意外に自分は冷静になるものだ。

と、一人納得しながら頷く。


「ん?誰かと思えば、変態オオカミか・・・・」

振り向きざまに反応する男。

その男は上は黒のレザーコートに、下は青いジーパンにブーツ。

全体的にがっしりした体格で1.8メルはありそうだ。

見た所、目立った武器は所持してないが、ゴルベーザのそれと同じように、空間に左右されない武器なのかもしれない。

薄暗い黒のサングラスで少し隠れているが、鼻の頭に横に走った傷跡がある。


「・・・・ゴルベーザ。知り合いですか?」

男の名前を叫んだ時の剣幕から、だいたいの関係は掴めるが訊ねた。


「・・・・・ただの戦闘狂で、碌でもない奴。ハイエナみたいな男だ。・・・・・それと、あ・た・し・は変態じゃないわよッ――――!!」


メイドマッチョはあらぬ嫌疑に異議を申し立てた。


「あんだと?コラッ!!、きっしょく悪い格好しやがってからに・・・・・ハイエナは結構だが、おまえのその格好は犯罪だ。死んでも直らないだろうが、いっぺん死んだほうがイイぞ、ゴルベーザ・・・・」


「ふぅ、初対面でアレですが・・・・・同意です」


「ふぃ、フィオちゃんの裏切り者――――ッ!!いけず、ぼけ、ばかばかばかっ!!」


「吐き気がします」


「俺も同感だ」


「・・・・・ちょ、なんで馴染んでるのよっ!グラナス!!あんたどうやってここまで来たのよ~」



(―――そう、何が目的でどうやってここまで来たのか?)


ゴルベーザが既に得物(えもの)をいつでも取り出せるようにスタンバイしてるのを見て。

確かに碌でもない相手なのだと確信できた。

ゴルベーザも自分もプロだ。

ふざけ合いながらも、グラナスの挙動には目を光らせていた。

しかし、男はなんの気負いもなく、伸びを一つすると背を向けようとする。


「待ちなさい」


フィオの左手には無詠唱でホールドされた氷の刃がある。

いつでも、グラナスに向けて攻撃できた。


「ちっ、ぎんじゃなかった・・・・・シルバーの旦那とジェノンのおっさんも、ややこしいこと任せるな」


「・・・・・何を言ってるのです」


「ま、おつかいは終わったし、帰るとすっかぁー」


「答えなさい!!貴方はここで何をしていたのですかっ!?」


「ふん、さぁな。そこにいるおっきなメイドさんにでも聞けばイイんじゃないの?」


「グラナスッ・・・・・あんた!!」


「あー騒ぐな騒ぐな。耳にキンキン響くから。本当にわかんねぇなら・・・・・キコル。そいつに聞けばイイさ」


スッとグラナスの指が背後を差す。

直後、


「フィオちゃん!!」


ゾクリッとした殺気が降りかかる。


ゴルベーザの声がかかる前に体は動いていた。


“氷よ”


左手の刃はそのままに、下に右手をかざす。

床に霜が張り、背後の殺気の主からの攻撃を逃れるために横っ跳びに地面を蹴る。

凍りついた床を滑るようにして回避する。


間一髪。


フィオが風切り音から身を逃す。

と、


「土産にくれてやらぁ!!」


「ミョルルンッニルルンッ!!」


グラナスの声と間の抜けたゴルベーザの武器名が叫ばれるのは同時だった。


―――辺りを雷鳴と光が包み込む!!




+++ +++ +++ +++




ブンッ!!


スライディングでサソリの脇をすり抜ける。


立ちあがりざまに回し蹴りをかまして、バックステップ。

襲ってきた尻尾を手刀を使って撫でるようにして軌道を逸らす。

上に跳ねあがったそれを上段蹴りで跳ね上げると、さらに後退。


『―――戦闘パターン解析・試行<<<タイプB』


音声入力か、はたまた合成音かは分らないが、女声で嫌な事を言う目の前の魔導機械。


「・・・・・どうする」


完全に決定打不足だった。

特殊なアイテムも持ち合わせてないし、見渡すかぎりでは利用できそうな物もない。

やはり、身一つで挑むしかないのか?



ザッ、という足踏みで間合いに入りこむと、これまで縦横に降りまわしていた剣を突き出して来た。

これまで通りに身体を揺らして避けると、ニ撃目の左突き。

腰を大きく落とし、上受けの姿勢で拳の甲の上を刃が通りすぎる。

そして、三撃目の右突き。


(―――これは!!)



連撃だった。


突く。

ただひたすらに突く。

疲れを知らない機械はただ愚直に突きまくる!!

これまで的確に急所を狙っていた攻撃から、転じた。

恐ろしいまでの刃の嵐。


まるで、身体が温まってきたように速度を徐々に増し、銀閃と共に緑色の光が線を帯びる。

乱反射する光は蛍火のように鮮やかで優雅。峻烈(しゅんれつ)だった。


それに相対する優は完全に生身。

武器一つなく。

鉄の嵐の暴力を耐え忍ぶ。


青痣、打撲、往く筋も血を流しながらも、抵抗を諦めない。

こちらもただひたすらに、愚直なまでに身を守る。


「くっ」


しかし、耐えきれずに足をもつらせる。

態勢を崩した隙を見逃さず、止めとばかりに心臓目掛けて突きが放たれる!!

しかし、

(―――かかった!!)


優には見えていた。

己の未熟さ故に全てを完全に受け流す事は出来なかったが、ただ蹂躙(じゅうりん)されるばかりでもない。


よろけたように見えたのはフェイク。

崩した方の足にすぐさま体重を移動させると、迫り来る刃に手刀を走らせる。


刃は大きく空を切り、優は魔導機械の懐に完全に入りこむ。


「りゃぁぁぁ――――――!!!」


両腕でサソリの足を掴むと、前のめりになった態勢を崩すように大きく足を払う。

一瞬の攻防だった。


自らの身体と重みで態勢を崩すサソリ。

見事にひっくり返る。

じたばたともがく、が立ちあがれないようだ。


「うしっ」


喜んだのもつかの間。


『―――応援要請>>>>武装変形・火器解禁』


「へっ?」


女声で自らに指令を与えると、ひっくり返ったままの状態で腕の剣が外れる。


ガシャン。

ウィ、ウィ――――ン。

ガチャ、キュキュキュキュキュ・・・・・。


「は、はぁ?」


足や尻尾が複雑に動くと普通(・・)に立ち上がり、片刃剣の外れた腕を背中にやると背中から迫り上がってきた武器にジョイントする。


あっという間に、アラ?不思議!!


「右は火炎放射器に見えますね、はい。左は・・・・・・・あれれー?ガトリングっぽいように見えるんだけど、17歳の少年に過剰防衛じゃねーコレ?」


ガトリングガンのチェーンを小気味良く回すと一言。


殲滅(ジェノサイド)―――開始!!』


「こ、声がちょっと嬉しそう――――!!!」


嬉々として、鬼ごっこを再開する機械と優、しかし・・・・・。


ガシャンガシャンガシャン!!


「はぃいいいいいいっ!!?」


後ろの通路からも、応援が来た。


五体ほど。


「武装が同じ型っだぁ――――――!!!」


サソリの援軍。

五体。

全機体。火力武装してました。

スグルピンチ!!




もうしばらくはコメディーパートが続きそうです。

9万PV越えしました。読んでくださってる方に感謝の意を。

感想お待ちします。


では、ごゆるりと

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