第37話 逃げてもアウト
危険を承知で、お仕事に乗り出すのは大変難しい。
「フィオさん、大丈夫かよ。二人で進むって・・・・・足引っ張ってるのは認めるけど・・・・」
「ルーク、まだ封印導石を見つけてません。それまでここを閉鎖、封印するのは危険です」
「大丈夫よぉ、ルークちゃん!フォオちゃんとあたしが組めば萌え萌えよっ!!」
「てめぇのせいで心配だって事が分らねぇのかよ、ゴルベーザッ!!あとクネクネすんな!!」
「いやね~・・・・・ゴルベーザじゃなくて、ル・ル・シェって呼んで?」
甘い声で顔をぐっと顔を近づけるゴルベーザに耐えかねて、フィオの影に逃げこむルーク。
ギルドナイトの序列は完全に実力順だ。
全員が顔見知りという訳ではないが、同じギルドナイトメンバーのルークと言う青年は、ランク上で云えばフィオより上のA+評価を受けていた。
しかし、
「コイツ、本当に大丈夫なんですか?」
「大丈夫です。ゴルベーザは女性には無害ですから・・・・むしろ貴方の方が狙われてましたよ?」
「なっ・・・・・このデカブツが、俺をっ!?」
「はい、主に貴方のお尻に熱い視線を送ってました」
「いやん~!!」
くねくね?
「いやん~じゃねぇっ!!」
口角を飛ばさんばかりに怒鳴るルークをなだめ、なんとか退却を認めさせる。
今必要なのは“超越時代”の遺跡内部の機甲を多少なりとも操る事が出来るようになる封印導石。
帝国の首都からあまりにも近すぎる位置の遺跡だ。
多少無理を押してでも、手に入れて安全を確保するようにしなくてはならない。
この手の遺跡探索で、強行軍をするのにフィオとゴルベーザの力は有効だった。
「ちくしょう、俺がついていくのも駄目なんですか?」
「流石に貴方の貞操の安全まで保証できませんよ」
「茶化さないでください!!」
「・・・・・簡単な話です。力不足なんですよ。魔法の使えない貴方では有効打を持ちません。おとなしく、言う事を聴きなささい。これは命令です」
「っ!!」
肩を落とし、その場を離れるルークに同情の視線を送るゴルベーザ。
声を潜めて指摘する。
「実力不足ねぇ・・・・・・これに関して言えば、相性の問題でしょうに。もう少し優しくしてあげたら?」
「・・・・・分かってるなら言わないで下さい」
「ふ~んだ。だったら外す理由をちゃんと言ってあげたらイイじゃない」
「・・・・・」
現状、他のギルドナイトのメンツは手が離せない。
応援が来るにしても、もう少し時間が掛かる。
しかし、応援を待つ間にどんな危険な機械が這い出て来るか分らない。
これまで接敵してきた危険度でいえば、ルークの実力は申し分ない。
しかし、今居る階層、10階層から脱出するにも、それ相応の実力が必要だ。
地下へ、地下へと潜っていくことになっているため、塔などと比べて脱出の手段も多少制限されてくる。
残りのギルドナイトメンバーは支援や援護型なので、ルークにはギルドナイト以外のパーティーを率いてもらわねばならない。
そしてなにより、ダンジョン内にいる敵を殲滅する事が目的では無い。
探知も可能なゴルベーザの精霊で、なるべく接敵を避けて進むつもりだ。
本当は透視能力のある、魔眼保持者などがいれば、ぐっと探索の幅が広がるのだが、無いものねだりを仕方ない。
「マァ、な~に、考え事?ダンマリさん?心配しなくても大丈夫よ」
(―――すごく不安)
めずらしく顔に出てしまった。
ゴルベーザの人格はともかく、類稀なる能力の持ち主なのだが、
「さぁ~て、そうと決まれば、きめなくちゃね~」
鏡を取り出し、化粧直し。
(―――メイド服は無い)
と思ってしまうフィオであった。
+++ +++ +++ +++
紆余曲折、何はともあれ32階層まで到達。
ここまで来るのに一週間と二日、九日間も潜るはめになってしまった。
予想よりも規模が大きい。
下手をすれば『ガーランドの迷宮』のように百クラスかも知れない。
(―――でも、そうだとすると、地下まで直行できる類の装置が見当たらないのはおかしい。閉じた隔壁の向こうにあるのかもしれないけど・・・・・)
「用意してちょうだい」
「貴方の言っていた人間の反応ですか?」
「う~ん・・・・・マキナに襲われてるみたいよ。その人」
「それを早く言いなさいっ!!」
襲われてるなら間違いないだろうと、駆け出すフィオ。
呆れ顔で一言。
「仕事熱心ねぇ」
スカートの裾をフワフワさせつつ、後を追従するメイドマッチョ。
*** *** *** ***
「っ!!」
落ちこんでいる暇は無かった。
視界の外に赤い線がよぎったと思った時には、鋼の刃が振ってくる直前だった。
膝を抱え込むようにしていた身体を前転。
あわやというところで、命を永らえた。
ガチャン
優は緑色の線が走る不気味な壁を背にし、強襲してきた相手を見た。
「SFロボかよ」
軽口を叩ける余裕があることに苦笑し、身体を動かせたで思考を一旦排除した。
赤いレーザーポインターのようなガラスの瞳に、六本の手足と呼んでいいのだろうか?
さらにはグネグネと軋みをあげる尻尾。
見た目はサソリに近かったが、金属に覆われ、尚且つ1.5mほどの巨体はかなり威圧感がある。
後ろの壁と同じく、全体的に白く、時折線に沿って緑色の光が走る。
「保護色ってワケじゃなさそうだけど、天井から降ってきたよな?」
他にも居やしないかと視線を天井に向ける。
『―――索敵カラ、迎撃ニ移行』
「嘘つけっ!!おもいっきし攻撃しただろ、おまえ!!」
思わず手まで入れて突っ込む優に対し、
『―――声紋>>>>・該当無し。敵対言動アリ。警戒レベル4』
「ロボッ、容赦ねぇ――――!!」
振るわれた刃を死ぬ気で避けた。
六本の内二本は片刃の刃がついており、それで敵を排除するようだ。
「三十六計、逃げるが勝ち」と心の中で呟き、四肢にエクシードを漲らす。一歩、ニ歩を踏み出し駆け出す。そして、エクシードの流れを感じながら気が付いた。
(―――いや・・・・いやいやいや。だとするとまずいかも)
瞬速でその場を離脱するも、迎撃に入った所為か、やたらとがしゃがしゃ音を立てて追ってくる敵もかなり早い。索敵時はかなり音をセーブしていたようだ。
体力が尽きて、追いつかれる図を想像して、今思いついたことを確かめることにする。
広場から抜け出して、数瞬。
おあつらえ向きの直線の道に出た。
ガシャンガシャンッ!!
ぐっと手の平を伸ばし、魔法を唱える。
「おうおう、追ってきてるな。よし・・・・『其の手に掴めるは風・・・・風牙ッ!!』」
緑色の薄い光を帯びた風の刃が・・・・・出ない。
「ああ・・・・『其の手に掴めるは雷、雷網ッ!!』・・・・・やっぱりか」
馬鹿みたいな魔力が取り柄だったのに、魔法が使えなくなっている。
(―――この刺青の所為かな)
優は長いこと考えていた。
エクシードとエナジーの関係を。
そして、卦繋法の存在に気がつき、また違うことにも気がついた。
エクシードは言われているほど、万能じゃない。
魔法を防げる“拒絶”も、魔力障壁ほどの効果は無い。
こんな風に考えて、感じた。
さまざまな事が不自然だ。
どこか気持ち悪い。
と、
顔面に垂直に振るわれる刃を見て、軽く身体を揺らす。
スッ
前髪を攫っていく凶器をどこか達観した気分で眺め、エクシードで強化した視力で観察する。
目の前のロボットをみて考える。
こんな精巧な機械はもとの世界でも、見たことが無かった。
そこで以前、アクアレイアで出会ったヴァンシード兄妹の兄、アルが言っていたことを思い出す。
『魔法は己の体内にあるエナジーを強化・放出・凝縮の3段階に分けて使う事で、魔術は道具を媒介としてエナジーを使い、さまざまな現象を起こす事です。最後に、魔導は魔法と機械を融合した技術だと聞いたことがあります』
「これ、魔導機械か」
何時ものように腰に手を伸ばし、ダガーを掴もうとした手は空を切る。
「あっ・・・・・あれ?うそだろ?」
リアから貰ったフォースダガーが。
そこには無かった。
これで魔法が出せない今。
徒手空拳で戦わざる終えなくなった。
突然ですが、サブタイトルの付け方って難しいと思いませんか?
ぱっと良い具合なのが思いつく時もあるにはあるのですが、、、、ぬぬぬ!!特にテーマが無い時など、苦戦します。
現在、スピード重視で書いてるので、文字数はだいぶ少ないですがどうでしょう?
何文字ぐらいがベストなのかな?あっ、ちなみに今話は三千文字ちょっとです。
次の更新は少し時間を空けますが、あしからず。
では、ごゆるりと




