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第25話   技




(―――俺の人生~岩だらけ~け~、うひゃひゃひゃひゃ・・・・・・・限界だ)

辺り一面岩だらけ、これを全部避けるか壊すかで生き残った事が信じられないくらい・・・・。



(―――いやね、反復が力なりだという事は知ってるんだけど)

「いましたわ!!逃がしませんっ!!」



(―――特訓という名の虐待だから・・・)

「精霊から逃げられると思ってるのかな~兄さん!!」



「俺はにげるんじゃ嗚呼ああアアァァーーーーー!!」



・・・・スグルは逃げた。




+++ +++ +++ +++




 現在、スグルが護衛中のキャラバンは“ココの村”に差しかかっていた。本日はここで宿泊するらしい。道中さしたる危険もなくここまで着いた。ほぼ護衛が必要ないぐらいだった。

 スグル達は四つの馬車からなるキャラバンの最後尾、つまり殿(しんがり)を務めさせられていた。しかし、精霊と会話が出来るサラが居たため大した注意を払わず、思い思いの過ごし方が出来ていた。


 サラは読書。

 ティナは監視。

 スグルは監視をされながら・・・・修行。


・・・・・言い直そう、特定の人物を除けば思い思いの過ごし方が出来ていた。

そんなこんなで、一行。目的地の折り返し地点まで来ていた。それがこの村“ココの村”だった。



「・・・へ~あの青っぽい果肉の“ココナチ”ってここで出来てたんだ。」

「そうですわ。ココナチの木は葉っぱから根っこまで使えないところがないという、大変利便性の高い木ですの。でも、どうゆうわけかここら辺の地質でしか栽培できないという話。ですから、ココの村の特産品として有名ですの」

「なるほど~・・・・・で、今俺の手を拘束してる縄も・・・」

「ココナチの蔦を編んだものですわ」

スグルの手はがっつりとココナチの蔦で拘束され、その拘束されたヒモを握るのはティナだった。最近スグルは身の危険を感じて逃げ出す事が多くなった。そのための応急処置である。


「・・・・日に日に扱いが厳しくなってる気がする。気のせいなのだろうか・・・シクシク」


 我関せずとばかりに本を読みふけるサラ。実際のところ、スグルの修業(ぎゃくたい)の手伝いをきっちりしている。自分の手を汚さず、精霊を使ってるところがスグルには恐ろしい。



「ちょっといいかい?」

馬車の幌幕をめくり声をかけてきたのは雇い主のジーナさんだった。彼女、風態は盗賊の女頭といった様子だが遣り手の商人らしい。豊満なバストについつい目がいきがちで、スグルとしてはたびたび命の危険を感じる・・・・なんとなくだが。


「何かご用件でしょうか?」

口を開いたのはサラ。

スグルは現在、フォースダガーにエクシードを流しこむ浸透の量の調節に忙しい。

ティナはそのスグルを見張るのに忙しい。

よって、サラが口を開くことと相成った。


「あー、大変言いにくいんだけどね」

さばさばしたジーナらしくない物言いだ。なにか迷惑をかけるようなことをしただろうか?

サラは若干身構えて先を促した。


「・・・ココの村に居る間、スグルの修行禁止」

「・・・はっ?」

予想外の答えに間抜けな声が出た。




+++ +++ +++ +++




「なるほどなるほど。つまり、村の人が怖がって迷惑になるから、大きな音を立てちゃ駄目と。そういうことですね」

「まっ、そういうことさね」

「仕方ありませんわね」

途中から作業を中断して話に加わったティナだ。

「・・・・それで、何日ここで滞在するんですか?」と、スグル。

「2日を予定してる。まぁ、それより長くなる事はないから心配しなくていいよ」

「きゃっほー!!心配!?しませんしません。どうぞ好きなだけ、ここにいてくださいよ」

小躍りして馬車を降りてくスグルを見て、呆れた様にジーナが言った。

「・・・・あんた、あんまり束縛しすぎると彼氏に逃げられるよ」


「か、彼氏じゃありません!!」


真っ赤になって抗弁するティナに首を傾げ、ジーナは聞き返す。

「それじゃあ、サラちゃんの男かい?」

それに対して、サラは余裕の表情で言った。

「僕のじゃないですけど、大好きな兄です」

ぴきりと固まった空気。そ知らぬ様子で読書に戻るサラに冷汗(ひやあせ)をかきつつジーナは悟った。

(―――こりゃ、スグルのやつも苦労するだろ。自業自得な気がしないでもないけど)




+++ +++ +++ +++




一方、スグルは浮かれ気味。リュートなどあろうものなら弾き語りだってこなして見せただろう。


「・・・やけに機嫌がよさそうだな、スグル。地獄の特訓はお休みかい?」

「あっはっはっはっはー!!そうなんですよ!ジンさん、2日!!2日も休み!!」

「・・・追い詰められてるな~おまえ」

剣の手入れの手を止めてジンが苦笑した。手には錆び落しの布とコーティングクリーム。脇には四角い砥石なども置かれていた。


「実際、どれくらい使えるようになったんだ?」

「えーと、強化は集中して持続できるのは三十分くらいかな?凝縮はなんとなく体内では出来るんですけど、放出と拒絶っていうのがよくわからないんですよね」

「・・・浸透は?」

「できます」

「変なやつだな~。放出できなかったら浸透の段階にいけないだろ」

「ああ、いや出来るっていうか。俺の場合はこれでやってますから」

腰から抜いて見せたのはフォースダガー。リアに買ってもらった武器だ。これは基本的に(エクシード)(とお)りがよいのだ。そのため、多少といわずともエクシードを扱える者なら切れ味が増す事が出来る優れものなのだ。


「ふ~む、それで逆に感覚が掴めやすいんじゃないのか?」

「そうでもないんですよね~」

スグル的には勝手に吸われてる気がする。


『強化、放出、凝縮、拒絶、浸透』

 エクシードの基本にして秘奧という話だが、スグルとしてはその在り方そのものに疑問が残る。ティナは最初の三つは魔法を使える物ならわりかし簡単に出来ると言っていたが、そもそも体内に感じる(エクシード)魔力(エナジー)は全然別物だ。

 前者がふわふわと掴み所がなく、水蒸気みたいに感じる。後者はひんやりとしていて、そう、手に出したばかりのシャンプーみたいな感触がするのだ。そして、違和感なく両者はスグルの中に同居している。それは“気”と“魔力”という属性が相克である事に反しているのではないか?

 そもそも相克という事だとしても魔力には属性があり、気にはそれがない。光と闇は属性間で相克が成り立っているのだから、それと同じことが言えるのではないか?

 スグルは今までこの疑問を口にした事がない。なんとなく自分で答えを出さなければいけないような気がしたからだ。しかし、拒絶を修められないのはそこに疑問を感じている所為かもしれないと思う。ティナがあれほどバイタリィ―に燃えているのも当り前の事が当り前に出来ない事と関係があるのかもしれない。

・・・・スグルとしてはいざとなったら魔法障壁で防げばいいじゃんと思っているのだが・・・・許してくれないだろうなぁ、とも思う。


「課題がいっぱいだな~」

「・・・そうか。それじゃあ、ひとつおもしろい技を見せてやろう。君のやる気が出るようにね」

「?技、ですか・・・」

手入れしていた剣を持って、林の奥の方から手招きするジン。

技といわれて引かれるものを感じながら、スグルはジンのほうへ寄って行った。

ジンは岩の前で剣を構えると剣にエクシードを徹《てっ》した。


(―――エクシードが・・・・・・黄色い?)

それまでエクシードに色があるなんて考えた事がなかったスグルは驚きに目を見張る。


チィリ、チィィリ、チィリ・・・・・


剣に徹され収縮するジンのエクシードは物を焼く時に聞こえるような音を発し始めて、そして、


「っつう!セイッ!!」

ジンの剣が強化したスグルの目にすら捕らえられない速度で振られ、剣の先から黄金の軌跡が伸び岩に衝突!


バチィ、ザッザザザザ・・・・・


スパークを放ったと思うと岩はカッ、と軌跡通りに割れた。剣を振られた位置から3メル以上は離れていたはずなのに!?

目には岩が割かれる瞬間が焼き付いている。


恐ろしいものを見た気がして、スグルは声が出せなかった。

荒い息を治めるように深く息を吐くジンの様子から見ても、今の一撃が尋常なものではない事が分かる。

単純な破壊力だけで言ったら、あの仮面の男の放った“クリムゾン・ダーク”の方が威力も範囲もあったように思う。しかし、単純なエナジーには成せない何かがそこにあった。


「ふぅ、私もまだ修行中の身でね。今の技は実用的とは言えないんだな、これが」

「・・・・今のはいったいなんですか?」

「私から言えるのは、真にエクシードが修めた境地がそこにあるという事だけだ。これを運用できそうな人間がいたらまず敵わないと見て逃げた方が良い。いろんな呼び名があるけど、私の師は『卦繋法(かけいほう)』と呼んでいた」

「・・・・卦繋法」

「ふ、クリスティーナ君には内緒だぞ?段階があって、これをいきなりやると大怪我をするんだ。本来は自分で至らなくちゃいけない境地だし、やり方を教えたからといってすぐにできるものでもない。君の師はクリスティーナ君のようだし、あまり余計な口は出すまいと思っていたんだけどね。これを励みにしてがんばってくれよ」

「・・・・はい、ありがとうございました」

彼はそれに応えるように軽く手を挙げると、去っていった。



残されたスグルはこなごな(・・・・)になった岩を見つめた。そう、岩は滑らかな断面を見せた後、ゆっくりと崩れ落ちた。あたかも砂の城が崩れ落ちるように、音も無く。



「やばいなぁ、これ。どうすればいいんだ・・・・?」

顔から表情を消し、相当(こた)えた様子で言った。



力の天井はどこまで手を伸ばせば、この手に掴めるのだろうか?


このままリアに追いついたとして、俺は彼女の力になれるのか?



ほのかな焦燥感と、元の世界でも味わった劣等感がスグルの身を焼く様に舐めとった。

浅木優は身体のどこかで“ギチリッ”と何かが(うごめ)く音を聞いた気がした。




夏が!!終わりそう!?《すずかぜらいた》です。

ご意見ご感想お待ちしております。

ごゆるりと

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