番外編 魔笛 上
あー、やってしまった。
どう考えても今後の展開に根拠が足りない・・・。
ということから、今回の番外編。
メリッサの登場からぶつ切り感満載ですが、リアとの絡みが足りん!!ということで、スグルが異世界に飛ばされてから2週間の間に起こったお話です。
上、中、下の構成を今のところ考えています。
正直言って悩みましたが、番外編刊行?です。
お楽しみいただければ幸いです。
では、ごゆるりと
ギルドのクエストカウンターにてのことであった。
「“あなたもダンジョンの探索に出て見ませんか?初心者用に考慮された、快適な探索。基礎的経験をあなたもお手軽につめます!!”だってさ、これなんかどうだろう?」
「・・・成功報酬50ユンロか。初心者限定クエストってやつだな。これは・・・・・・どうやら、ギルド側が運営してるクエストのようだ。これなら安心だな。とはいえ、私がついていれば本格的なダンジョンに入ったからといって、死ぬことも無いと思うが・・・・なにごとも経験だからな。
スグルがそのクエストを受けたいというならば、受けてみるのもいいと思うぞ」
「よっしゃ、お手軽そうなこれ、行ってみよう!」
意気揚揚と、俺はそのクエストが記載されたファイルを手に受付に向かう。
「“洞窟ダンジョンクエストパート4”を受領いたしました。これはランクFの方の専用クエストです。成功報酬50ユンロ。クリア条件は、ダンジョン内の一番奥にある水晶を持ち帰り、受付に提出することです。時間制限はございません。なお、報酬は水晶と引き換えで渡されます。なにかご質問はありますか?」
1~3もあるのかっ!?場合によってはそれ以上も!?
驚愕の内容に戦慄するスグル。
「ご質問は?」
「・・・・・ないです。」
「そうですか。それでは、御武運を。」
相変わらず無表情の受付嬢。
冷たそうなところが良い、クールだ、縄で縛られて鞭で叩かれたい、など。理由はさまざまだが、言い寄る冒険者は少なくないそうだ。
無理やり襲おうとした者は氷漬けとなって帰ってきたとか何とか。
幸いにして氷漬けになった人を御目にかかった事はない。
・・・あな恐ろしやである。
+++ +++ +++ +++
うってかわってここはダンジョンの内部。
ゴブリンの時の二の舞にならぬように、今度はきっちりと情報を集めてある。
「こんなダンジョンって誰が作ったんだろう。リアは知ってる?」
転ばないように足元に気を付けながら聞く。
「今現存しているダンジョンで製作者が判っているのは、『悪魔の地下迷宮』、『紅壁の迷宮』、『トラップムーブ』、『ガーランドの迷宮』だ。順に、魔王グリモハデス、名工グリン・ムック、黒耀鬼、大魔導師ガーランドの作だ。どれも有名で、かつ最深部までの攻略がなされた事の無い危険なものだ。
このダンジョンも誰かが作ったものを流用して使っているのだろう。
・・・・そこの壁、トラップがある触らないように気をつけろ」
「お、本当だ、出っ張ってる。・・・それで、魔王と大魔導師っていうのは想像つくけど、名工グリン・ムック?と黒耀鬼ってのは何者なんだ?」
「名工グリン・ムックはドワーフだ。彼の手がける作品は魔法具、刀剣、建築であろうとみな一級品だったという。実際のところは、ドワーフの共同作業だったそうだが、指揮を執った彼の名前が一番有名になったのだ。
黒耀鬼だが、こいつは殺人鬼だ。しかし狂っていたわけではなく、冷酷なものの考え方をする暗殺者だったらしい。彼自身が鍛練する場としてトラップムーブを作ったそうだ。
更に、黒髪であったことからシャングリラの人間であったのだろうと推測されてる」
「・・・・・・なんか、わくわくするな。そういうのを聞いてると」
「君ならそう言うと思った・・・なにかくるぞ!!」
リアはそう言うと戦闘態勢に入った。
後ろで弓を構える気配がする。
前衛である俺は、魔法をホールドしながらフォースダガーを構えた。
洞窟に鳥の羽ばたきのような音が響く。そして、明かりの魔法内に照らし出された者は・・・。
「ジャイアントバットだ!」
リアがそう叫ぶと同時に弓矢を放つ!
比較的広い洞窟内で、両手を伸ばしたくらいの大きさのコウモリが飛びかう。
俺は、リアが放った矢が2匹を同時に仕留めるのを見届けると、まけじと叫んだ。
「光矢っ!!其の手に掴めるは風、その身を守護せよ。風身!!」
事前情報で光に弱いことを知っていたため“光矢”を放ち、スピードの向上と多少の防御力の向上が望める“風身”を唱えた。
情報通り“光矢”でかなりの数が撃ち落された。
そして、混乱し、悲鳴とも奇声ともつかない声をあげている、残りのジャイアントバットに飛びかかり、手当たり次第に撃ち落していく。
・・・あっという間に駆逐されたジャイアントバット。
辺りには十数個の“しずく”が落ちているだけである。
リアが苦笑しながら言った。
「・・・私が居なくてもよかったようだな」
「そんなことないさ、リアが居てくれて助かってるし。リアと一緒に居るのは楽しいからね。」
「・・・そうか、そうであればいいのだが。」
リアがどんな顔をしているのか判らない。どうやら、少し光量が落ちてきたみたいだ。
俺はリアに声をかけて、一旦明かりを消すと、無詠唱で明かりの魔法を唱える。
「光よ」
手の平サイズの明かりが完成!!
「・・・・・たいしたものだ。光闇風雷水の五属性を操る上に、簡単な魔法とはいえ、起動語なしで唱えられるようになったのか。・・・・私もエルフの中でも出来た方だが、君を見ていると自信を無くしそうだよ。」
「いやいや~。それほどでも~。やっぱ師匠がよかったんですよ、ねっ?」
「・・・・・ふう、騙されないぞスグル。君が人一倍努力家なのは知っているんだ。私も負けないようにしないと」
手をぐっと握って対抗心を燃やすリアは、これはこれでなかなか、かわいいです。
俺的には、複雑ではあるけど。
~~洞窟に潜り出して1時間経過~~