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23 機雷戦

「これより、現在捕捉中の艦隊を『敵』と呼称する。全機雷のスリープ解除、目標設定。目標、敵全艦艇。起爆は手動モードに切り替える」


 マレアの船長が冷静に指示した。敷設長が聞く。


「次の侵攻に残さなくてよろしいですか? あと、起爆は自動の方が確実ですが」


「ああ、出し惜しみは無用だ。一気にカタをつける。どのみち、ここを突破されれば火星に勝ち目はないからな。あと、確かに自動起爆の方が確実だが、敵さんの降伏をぎりぎりまで待ちたい」


「承知しました」


 敷設長が納得した様子で言った。


「設定終わりました!」


 敷設員の村田が、緊張した面持ちで報告した。続いて電測員が報告する。


「攻撃可能圏まであと四十秒」


「攻撃可能圏に入った機雷から順次自動追尾開始。同時に降伏勧告を行う」


 船長が静かに言った。しばらくすると、村田が声を上げた。


「最初の機雷が自動追尾を開始しました!」


 共有ディスプレイの中国・インド両軍の艦隊の進行方向前方に、輝点がひとつ現れた。輝点は次々と増え、十以上になった。


「降伏勧告送信!」


 通信士官が報告した。


 同時に共有ディスプレイに機雷の予想軌道と想定危害円が表示された。何重にも重複し広範囲に広がる危害円は、どうやっても避けられないように思われた。


「起爆予定時刻まで六十秒」


「敵、回避行動に入りました」


 村田と電測員がそれぞれ報告した。中国・インド両軍がそれぞれ進行方向左右に軌道をずらしはじめた。


 機雷がそれぞれの目標に向かって軌道を変えた。


 予想軌道と想定危害円が更新されたが、中国・インド両軍は、減速中とはいえかなりの高速度のため、軌道は大きくは変わっていなかった。


 対する機雷群は、艦隊に正面から邂逅する軌道に乗っていた。


 仮に、中国・インド両軍のミサイルやレーザー砲が有効射程に入ってから機雷を破壊できたとしても、かなりの相対速度で機雷の破片の中に突っ込むことになる。無事に機雷の破片から逃れる可能性はなさそうだった。


「起爆予定時刻まで二十秒」


 村田がうわずった声で報告した。


「再度降伏勧告!」


 船長が命じた。通信士官が改めて中国・インド両軍に降伏勧告を送信する。


「どう足掻あがいても逃げられん……頼む、降伏してくれ」


 船長が思わず声を出した。


「起爆予定時刻まで十秒、八、七……」


 村田がカウントダウンを始めた。船内に村田の声だけが響く。


 誰もが祈るように共有ディスプレイを見つめていた。


 中国・インド両軍の進行方向正面を包み込むように機雷群が接近していた。もはや機雷群から逃げ切れないことは、誰の目にも明らかだった。


 中国・インド両軍は、すでに有効射程内のはずだが、機雷に対するレーザー砲やミサイルによる攻撃は行っていなかった。この段階での攻撃が無意味なことを理解しているようだった。


「……三、二、一、起爆予定時刻です!」


 村田のカウントを聞いた船長が起爆の指示を発しようとしたそのとき、通信士官が叫んだ。


「降伏信号受信! インド……いや、中国もです!」


「攻撃中止!」


 船長が叫んだ。村田がすかさず機雷群に自動追尾中止・衝突回避を指示した。起爆予定時刻を十秒過ぎていた。

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