第22話 暗殺者は、今日も王女を。 ★最終話
かつて、悪逆王女などと呼ばれていたのが、信じられないような、清廉さだ。
そんな彼女を見て、俺は思わず――
「――――ウオッ、眩しすぎるッ」
『え。……キャーッ!? 国一番の暗殺者さまが、何か急に出てきたわー!?』
『まるで初めからあそこに座ってたみたいだわ!? いつの間に~!?』
「ヤベッ排した一切の感情が漏れ出て気配を殺しきれなかった。不如意の意」
やれやれ、全く王女は、俺の暗殺を悉く妨害してくれる。だが、それでこそ俺のターゲット、そうこなくては張り合いがないからな!
ちなみに今は、さすがにドレスは着ていないが……いや外出用というか、お忍びの私服も可愛いな、清楚系っていうか、可憐な花を彩っているというか……。
いやとにかく! ……彼女がこうして顔も隠さず出歩けるのは、人目を離すようにあの塔に隠されていたからだろう。そこだけ、本当にそこ限定で、感謝すべきかもしれない……いや、彼女を貶めた連中に、そんな必要はないな。
まあ、だからとて、完全に無防備という訳でもない。
『オイ、本当にいたぞ……第一王女がこんなとこで無防備に、不用心ってモンだぜ……急進派の底力、見せてやらぁ――』
『――ごみ発見~~~っ! 王女サマ狙ってんじゃねーわよ、残党ってか残飯みたいな連中ねホント! お掃除お掃除~~~!』
『ゲエッ、《焔髪の戦乙女》!? 何でメイド服!? ムムッ、こりゃ色んな意味でたまらん、ひとまず逃げ……ることも許されねぇ! 強すぎギャアアアアア』
適職についたメイドさんも、大活躍のご様子だし。
まあ、俺も傍で王女の命を狙っているから、心配はいらないが。……獲物を横取りされる心配はない、という意味でな!
さて、俄かに慌ただしくなってきた店内で、〝?〟と首を傾げる王女(かわいすぎて鼻血飲んだ)へと俺は促す。
「さて……ここは少し、騒がしい。まだ今日は、始まったばかりだしな。そろそろ、次へ行くとしようか、王女よ――」
「あっ。ダメですよっ、わたくしはお忍びなのですから、暗殺者さまっ」
「おっと、これは失敬……だがそれは、あなたの方こそ、だな?」
「きゃっ。わたくしったら、ついクセで……お恥ずかしいですわ♪」
そう言いつつ、おどけて笑う。そんな彼女の顔に、かつて全てを諦めていた儚い面影は、もうどこにもない。
一切の感情を排した国一番の暗殺者は、釣られて失笑し――彼女へと、手を差し出した。
「では、行こうか。ミッション達成率120%越えの俺が。
120%越えで――エスコートしてみせよう!」
「はいっ! 今後とも、末永く……どうか、よろしくお願い致しますっ♪」
「フッ、暗殺者に言うことではないな! まあ、いいさ……それでは」
俺が差し出した手を、儚いまでに細い手で、けれど力強く握ってくる。
その手を決して、離さぬようにと――秘めた誓いを胸に抱いた。
暗殺者である俺は、ターゲットたる彼女へと――
未来に続いてゆく暗殺の日々を思い描きながら、告げた。
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「さあ、共に歩いて行くとしようか、ミルフェ」
「はい、ソウマさま……あなたとならば、どこまでも♡」
~ Fin ~
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