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彼女を助けるために、俺は乙女ゲームの攻略キャラになりました  作者: しぃ太郎


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10/10

SS 春に咲く、優しい花(エルリック視点)

 ※本編後のSSです。

 重い展開を経た二人が、ようやく辿り着いた「その後の春」を描いています。

 ダーク要素・トラウマ描写を含む作品ですので、苦手な方はご注意ください。

 

 



 空から優しい日差しが降り注ぎ、ミリィと俺を明るく照らしてくれていた。

 満開の桜の下で、俺と彼女は並んで座っている。

 花がヒラヒラと舞い落ちて、とても美しい光景だった。


 ミリィが幸せそうな笑顔で、大きくなったお腹を撫でながら、オルゴールについて、ゆっくりと語りかけている。


 小さなオルゴールから、澄んだ旋律が流れ出す。

 柔らかく、少しだけ不器用で、それでも不思議と心に残る音。


 優しいその音色は春の風に溶けていった。



「これはパパからの大切なプレゼントなんだよ」

「お腹の赤ちゃんも、ママは音痴だなぁって思ってるんじゃない?」


 その光景があまりにも眩しくて、少し照れてしまい、軽い口調で言った。


「もう! だから、そこまで酷くないってば!……でもいいの。この曲で、この音程で私を見つけてくれたんだから」


 ――あの春の日。入学式で。

 君を見つけた時の、俺の震えを知らないだろう。

 刻まれた痛みとともに、それでも。

 それ以上の喜びが胸をいっぱいにした、あの瞬間を。


「……音楽がなくても、音痴じゃなかったとしても、俺はすぐに『優花』を見つけ出したよ」


 軽く笑いで終わらせたかったのに、上手く笑顔が作れなかったみたいだ。


「こら、なにそんな顔で笑ってるのよ……。泣かない泣かない」

 ミリィはそう言って俺の目元に優しく指を添えた。


「でも、乙女ゲーム設定がエルリックの嘘だったなんて、まんまと騙されちゃったわ。……何、自分までちゃっかり攻略対象にしてるのよ」


「俺にもチャンスが欲しかったんだよ……。もう、いいだろ、そんな事」


 二人を、いや――三人を包むように、優しい春の風が通り過ぎて花を空に舞い上がらせた。

 

 春は始まりの季節。

 優しく花を咲かせ、新しく芽生えさせる季節だ。


「そんなの、『あなた』以外を選ぶわけがないでしょう?」


 美しい旋律が静かに響く中、彼女の少し照れた声が俺に届いた。

 

 おわり。

 

 

この物語では、

「守られること」も「依存」も、

 生き延びるための一つの選択肢として描きました。

 最後まで読んでくださり、ありがとうございました。

 

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