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【第1章完結】僕だけ戦う素材収集冒険記 〜集めた素材で仲間がトンデモ魔道具を作り出す話〜  作者: 花村しずく
閑話集

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閑話 父と子のその後の話

少し遅れてしまい申し訳ありません

 POTENハウスでの、あまりにも手厚い歓迎を受けた翌日の午後。

 ハルとカイルは魔道列車に揺られ、懐かしいカムニア町へと戻ってきていた。


 車窓の外に流れる景色は、どこか見覚えのあるものばかりだ。

 街道沿いの石垣、畑の向こうに見える屋根の並び、遠くで揺れる風車。


 カイルは窓の外を眺めながら、ぽつりと呟いた。


 「随分変わったなぁ……って言いたいところだけど」

 肩をすくめて、苦笑する。

 「たった三年だもんな。あんまり変わってねぇな」


 その言葉に、ハルはむっと頬を膨らませた。


 「もー! 父さんはそうかもしれないけどさ」

 腕を組み、ぷいっと顔を背ける。

 「僕なんて、一回死んでるんだよ? 父さんに会えるまでに、軽く十年分くらい時間たってるんだから」

 少しだけ声を強めて、続けた。

 「その間、すっごく大変だったんだからね?」


 その様子に、カイルは一瞬きょとんとしたあと、はっとしたように頭をかいた。


 「……そうだったな」

 少し照れたように笑う。

 「すまん、すまん。軽率だった」


 それから、窓の外に視線を戻し、しみじみとした声で言った。


 「でもさ」

 「本当に、ハルの元々の時間軸に戻って来れてよかったよな」

 「しかも、ほとんどズレなしで……ドンピシャだ」


 ふと、何か思い出したように、カイルはハルの方を見る。


 「そういえばさ、ハル戻るとき……何を願ったんだ?」


 列車の走る音が、規則正しく響く中。

 ハルは少しだけ首をかしげてから、ぱっと顔を上げた。


 「それはねぇ——」


 どこか楽しそうに笑う。


 「本当は、帰還石を使ったその瞬間に戻りたかったんだ。だから、そのときのことを、できるだけ細かく思い出したんだよ」


 ダンジョンの空気、時間帯、立っていた場所。

 自分の鼓動までなぞるように、指を折りながら続ける。

 「実際は……ほんのちょっとズレちゃったみたいだけどね」


 カイルは「なるほどな」と低く唸り、腕を組んだ。


 「やっぱり、当人が完全に同じ場所に同時に存在するのはタブーとか」

 「使った場合、多少の時差が生まれる……とか、そういう制約があるのかもな」

 窓の外に流れる景色を眺めながら、続ける。

 「アイテム名が“願いの石”だしさ。

  願いは叶ってるけど、方法までは指定できない——ってことなんだろうな」


 肩をすくめて、苦笑する。


 「ほんと、ダンジョンアイテムは不思議なもんばっかりだ。でもさ、だからこそ面白いよな。

 いろんな仕組みがあって、考えるほど奥が深い」


 その言葉に、ハルは大きく頷いた。


 「うんうん!」

 目を輝かせて、身を乗り出す。

 「この間のダンジョンもその前のダンジョンもすごく面白かったし、またすぐにでも、ダンジョン行きたいよ。

 今度はもっと、ちゃんと準備してさ」


 そう言って笑うハルに、カイルは懐かしそうに目を細めた。


 それから二人は、列車の揺れに身を預けながら、ぽつりぽつりと話を続けた。

 カイルは若い頃に潜ったダンジョンのことを語った。

 無駄に遠回りをしたこと、準備不足で引き返したこと、仲間と笑い合いながら突破した小さな罠の話。

 ハルはそれを身を乗り出して聞き、今度は自分が体験したダンジョンの出来事を思い出すように話す。

 怖かった場面も、うまくいった作戦も、失敗して学んだことも——。


 会話は途切れては、また自然につながり、

 気がつけば、笑い声と静かな沈黙が交互に流れていた。

 列車の中の時間は、どこか柔らかく、穏やかだった。


 しばらく窓の外を眺めていたハルが、ふと思い出したように口を開いた。


 「そういえばさ……母さんの目、視力が落ちてきてる話したじゃん?」


 何気ない調子を装ってはいたが、その声には小さな引っかかりがあった。


 「今回みたいな……願いの石、もしまた見つけられたらさ。

 もしかして、治ったりするのかな」


 カイルはすぐには答えず、列車の揺れに合わせて小さく息を吐いた。


 「……確かになぁ」

 「あの石なら、その願いも叶えてくれそうだな」


 そう言ってから、少し苦笑する。


 「まあ、そうそう都合よく手に入るもんでもないだろうけどな」


 ハルはうなずき、でもどこか前向きな光を目に宿した。


 「だよね。でもさ、あるってことは分かったし、素材探しのついでに、気長に探してみようかなって思って」


 その言葉に、カイルは思い出したように笑った。


 「それも悪くないな。他の方法も探しながら、いろんなダンジョンを回るってのもさ

 ロザたちも、ギルド職員辞めて冒険に出る気、満々だったしな」


 ふっと、楽しそうに肩を揺らす。


 ハルは少しだけ眉を寄せて、半分冗談めかして言った。


 「えー……帰ってきた途端、また冒険?

 できるだけ近場にしてよね」


 その言い方に、心配と甘えが混じっていて、カイルは思わず吹き出した。


 「はいはい…… 母さんにもハルにも泣かれたくないからな。ちゃんと帰ってくるさ」


 列車は、変わらぬリズムで走り続ける。

 父と子の会話もまた、同じ速度で——

 自然に、未来へと進んでいった。

POTENハウスでの大歓迎のお話はツムギの物語に詳しく載っています


ツムギの物語は水曜日と土曜日、ハルの物語は月曜日の23時ごろまでに1話投稿します


同じ世界のお話です

⚫︎ 僕だけ戦う素材収集冒険記 〜集めた素材で仲間がトンデモ魔道具を作り出す話〜

https://ncode.syosetu.com/N0693KH/

⚫︎ 異世界で手仕事職人はじめました! 〜創術屋ツムギのスローライフ〜

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