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恋の成就も、ネコしだい?  作者: 朝姫 夢
第六章 恋の成就も、ネコしだい?

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7.叶ってる

 ただ不思議なんだけど、ボクがフィリベルトの目の前でネズミを捕まえたその日から、セレーナとの仲がグッと近くなったように見えるんだよね。他のニンゲンたちは遠巻きにしてたのに、自分たちだけは意気投合して同じ反応をしてたからかな?

 どっちにしても、前より距離感もすごく近いし。なんかフィリベルトがセレーナを見る時の目が、すっごく優しくなったというか、柔らかくなったというか。


『なんか、セレーナがフィリベルトを見てる時と同じ感じな気がするんだ』

『だから言ったじゃない! フィリベルトはそのメスに恋してるのよ!』


 相変わらず楽しそうに、キラキラした目で自信満々に言い切るビアンカ。実はネロとも話してたんだけど、やっぱりあれって両想いだよね。

 ってことは、ホントにビアンカの予想が正しかったってこと?


『すごいね、ビアンカ。なんですぐ分かったの?』

『分かるわよ! だって全然普段のフィリベルトの反応と違うんだもの!』


 それは、確かにビアンカじゃないと気づけないかも。ボクだって、セレーナが少しでも普段と違ったら気づけるから。きっとそれと同じなんだろうな。


『そもそも秘密の手紙のやり取りなんて、フィリベルトは一度もしたことないのに! しかもニンゲンのメスだっていうのなら、なおさら警戒するはずなんだから!』

『それって、つまり最初からセレーナが特別だったってこと?』

『ある意味そうよ。そもそもワタシたちのことを話せる相手が欲しくて、手紙を書いていたんだから。それが最終的に恋文になっただけで、最初は相手が誰なのかすらフィリベルトは知らなかったのよ?』

『確かに』


 言われてみれば、一番最初は誰宛てに手紙を書けばいいのかすら分からなくて、色々迷いながらすっごく時間かかってたもんね。今じゃ当然のように、スラスラ書いてるけど。


『ある意味フィリベルトも成長したのよ。素直に自分をさらけ出せるニンゲンが見つかって、本心を言葉にするのも難しくなくなったんじゃない? そのメス限定でしょうけど』


 なぜか、最後の一言がすっごく力強かったんだけど。というか、嬉しそうに尻尾がピンと立って、先っぽがフワフワ揺れてた。

 そんなに嬉しくなる要素あったかなって思ったんだけど、それは口にしないでおくことにしたんだ。たぶんだけど、それが一番平和な気がしたから。


「おや? 今日はルシェも一緒だったのか。ちょうどよかった」


 フィリベルトのことを話してたらタイミングよく現れたんだけど、いつもは戻ってこない時間だし珍しいね。


『ん? ちょうどよかったって、どういうこと?』


 今日は早く終わったのかなーなんて考えてたんだけど、ボクに向かってちょうどよかったってどういう意味だろうって引っかかったんだよね。それに、いつもだったらすぐビアンカのとこに行くはずなのに、なんか今日はボクたちがいるソファーの向かい側に座ってるし。どうしたの。


「手紙を、届けに来てくれたんだろう? ありがとう。ただ今日は、先に君に話があるんだ」

『ボクに? 話? なんの?』


 そんな改まって言うようなこと、なんかあったっけ? もしかして、もうここには来るなって言われちゃう? いやでも、理由がないしなー。

 なんて全く予想がつかないまま、それでもちゃんと真剣に話を聞こうと思って首と一緒に耳を傾けてたら。


「その……。まだ、決定ではないんだが……」

『うん、なぁに?』


 なんかちょっと言いにくそうにしながら、手の指を組み替えたりしてるけど。実はさっきから、隣にいるビアンカが小っちゃい声ではしゃいでるんだよね。『これ、きたんじゃないかしら!? もしかしてついに!? ついにそうなるの!? きゃー!』って。


(小声のつもりなんだろうけど、さすがにこれだけ近いとボクには全部聞こえてるんだよなー)


 なんて心の中で思いながら、それでも視線はちゃんとフィリベルトに向けてた。ただし片方の耳だけは、どうしてもビアンカに向いちゃってたけど。

 ただ、そんなビアンカの様子なんて、次のフィリベルトの言葉でどうでもよくなっちゃったんだけどね。


「私は、その……セレーナ嬢に、婚約を申し込もうと思っているんだ」

『……えぇ!? ホントに!?』


 だってフィリベルトの口から、しかも真剣な顔してそんなこと言われたら、驚くに決まってるじゃん! そっちのほうがずっと重要だよ!

 というか、これってつまり……!


「だから、それが上手くいってセレーナ嬢と結婚することになったら、ルシェも一緒にここに住むかい?」


 そうだよね! ニンゲンの場合、オスの住んでるとこにメスが行くのが基本だもんね!

 やったよセレーナ! セレーナの恋、叶ってるよ!


「もちろん、今まで通りの自由な暮らしは保証する。どうかな?」


 ちょっとだけ不安そうに、ボクの顔を覗きこんでくるフィリベルトだけど。答えなんて、決まってる。

 ボクは急いで向かいのソファーに飛び移って、フィリベルトの足に頭をこすりつけてから。


『そんなの、いいに決まってるじゃん! むしろフィリベルトがイヤって言っても、ボクはセレーナについてくからね!』


 ちゃんと顔を見上げてから、元気よく返事をしたんだ。

 だって、当然でしょ。ボクとセレーナは、ずっとずっと一緒なんだから。離れるなんて、あり得ないよ。


「そうか、受け入れてくれるのか」


 真剣な顔から安心したように力を抜いて、フィリベルトはそう言って笑った。よかったよ、ちゃんとボクの言葉の意味が伝わったみたいで。


「あとは、次回ネロにも確認してみないとだな」


 その直後に、天井を見ながら小さく呟いてた言葉も、ボクには聞こえてたんだけど。たぶんネロも同じこと言うと思うから、安心していいよ。

 あと、それとは別に。


『きゃー! ようやくじゃないー! いいわね、ニンゲンの恋って!』


 それはそれは楽しそうに嬉しそうに、ビアンカがずーっと興奮しながらなにか言ってた。尻尾も時々ピーンと立ったり、ユラユラピコピコ揺れてたりしたから、相当楽しんでたと思う。

 ボクもセレーナの恋が叶って嬉しいとは思うけど、ビアンカの喜び方はそれとはちょっと違うようにも見えたんだよね。ただ正直、それがなんなのかはボクにはよく分からなかったんだけどさ。


(ビアンカが楽しいなら、それでいっか)


 って思っておくことにしたんだ。



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