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第二十一話「仮定」

ルカーノ・ビアジーニ視点2

 学園が長期休暇から再開して一カ月後、ガストーニ砦の実習訓練でシスティナ嬢が治療スキルの過度な使用で気を失ったらしい。予想通りあのスキルは鬼力の消費量が半端ではないようだ。


 砦から戻られた王太子アルカンジェロ殿下は我々教授に向かい命令を下した。


「以後システィナ・ソァーヴェの理鬼学実習及び学園の私的な行使を禁ずる!学園の教授方には是非お聞き届け頂きたい!!」


 この国の王太子と言えども学園ではいち生徒に過ぎないのでこの要求は突っぱねる事は問題ない。


 だが成績優秀だからと資料整理を手伝わせたり、治療スキルに長けているからと実習に同行させていたシスティナ嬢もいち生徒に過ぎない。彼女を使い回していた我々も反省すべきところだ。誰もが反対する事無くその申し出に賛成した。


「ビアジーニ教授、貴殿はシスティナ・ソァーヴェにご自分の研究を手伝わせていたようだが・・・彼女は俺の婚約者だという事をお忘れなく」


 職員会議の終わった後で殿下が僕にそう警告してきた。普段なら恭しく了承するところだけど何故か反抗心がムラムラと湧きあがる。


「もとより存じております、しかし恐れながらソァーヴェ嬢も高貴なご身分のためか周囲から孤立されているご様子・・・どなたかの支えが必要かと」


 今までシスティナ嬢との会話でアルカンジェロ殿下の話が出た時の表情は暗く迷いのある顔だった。恋愛経験ゼロの僕が判断するのはおこがましいが、断じて恋する乙女のモノではない。


 彼は普段からシスティナ嬢に対して優しくはないのだろう。あんなに素敵な彼女を邪険に扱うとは全くふざけた婚約者様だ。


 しかし殿下の反応は意外なものだった。


「そんなこと・・・貴殿に言われるまでもない、失礼した!」


 殿下は顔に怒りを見せてから去っていく・・・なるほど、彼も所詮は人の子。やがては王者になるとは言ってもまだまだ未熟。自分の婚約者だと言うのならもっと大事に扱って欲しいものだ。



◇◇◇



「あの三人?ああ、アイツラならしっかり訓練してますよ・・・おい、お前ら集合だぁ!!」


 今度はガストーニ砦へ向かいシスティナ嬢に治療を受けた三人を引き合わせてもらう。やはり欠損した腕や足にはなんら障がいが残っていない・・・まさに神のごとき力。

 その時復元したハズの足の甲に古傷が残っているのを見逃さなかった。


「失礼ですがこの傷は・・・かなり古いですね?」

「ああ、これぁ5年前にビッグアリゲイターに噛まれた傷でさぁ・・・指が少し動かしにくいが走り回ったりするのは平気でさぁ!!」


 そう言ってズボンをはく兵士。協力してくれた兵士達に礼を言って砦を後にする。





 システィナ嬢の治療スキルは完全復元、それも怪我自体がなかったかのような回復ぶりだ。通常のスキルならばいくら綺麗に治そうとも運動障害が残るハズなのに。


 しかし先ほど見た足を復元させられた兵士の古傷は完治していない。もし神のごとき力だとすればそれすらも治してしまうものだろうに・・・何かが気になる。


 理鬼学の基本をもう一度おさらいする。


 人体の生命エネルギーである「鬼力」を扱う技術(スキル)、それが理鬼学

 その力は光・電・火・風・水・土・念の7種類の属性に振り分けられる


 ・・・だったな。

 通常の治療スキルは止血や縫合に接骨、これらは固定する「土」の鬼力から生み出されるスキル。そして病気などの体調不良を治すのは血液の循環を促す「水」の鬼力からのスキル。他の属性も症状によって使い分ける事で人体の調整が可能だ。


 しかしどの属性もそれ単体ではとてもシスティナ嬢の完全復元には遠く及ばない。未だ正体不明の念属性ですら不可能だろう。だいたいアレは何を対象に影響を与える力かまるでは分からな・・・。


 僕の思考は一つの仮定に辿り着く。まさかそんな事があり得るのか?それこそ神のごとき所業と言う事になる・・・逆にそれが正しければ以前に行ったチューリップでの検証実験も肉体の完全復元も納得が出来る!


 想像を絶する仮定に恐ろしくなり・・・身体全体が震えてきた。役目があるとは言えうかつに報告できる内容ではない。


「報告書、システィナ・ソァーヴェ嬢の鬼力及びスキルの詳細は未だ掴めず・・・ただ肉体欠損を復元する場合、当然ながら莫大な鬼力量を消費する事が認められる・・・本人へ過度の使用を警告すべき案件である、とこんなところか?」


 叶わない想いだけど・・・システィナ嬢は僕がお守りしよう。

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