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盗賊に捕まった。脱出は簡単だが……

ーーガタゴト、ガタゴト、ガタ……。


 俺はえらく揺れる格子付きの馬車に乗っている。自由意思ではない強制だ。一緒にボロい服を着た少年少女もいる。


「なんで、こんなになったかなー」


 薬草とスライム狩りに商人用の門をぬけて轍が何度も通った後の道をクレイに乗って歩いていた。


 そんで、スライム見つけたから狩ろうとしたらクレイが踏み潰し……。

 薬草見つけたから採ろうしたらクレイが踏み潰し……。

 クレイのたてがみをむしろうとしたらクレイに逃げられ、1人寂しくスライム探していた。


 気がつけば、柄の悪い冒険者風の男達に囲まれ、グルグル巻きにされて格子付きの馬車の中へ。


「誰か、ロープほどいてくれない?」


 回想を修了して回りにいる子に聞いてみる。年長っぽい子がほどいてくれた。キツく縛ってくれたから痛かったのよ。


「前に座ってるお兄さん。俺ってどうなるの?」

「うっせぇ! 黙ってやがれ!」

「俺に姉が1人いるんだけど、お兄さんけっこうストライクゾーンだから紹介しようと思ったのに……」

「何でも聞いてくれマイ・ブラザー」


 ……案外ノリいいな、このお兄さん。しかし、あえて言おう! 仕切りで顔も見えないのに好みもなにもわからないだろうが!


「俺ってどうなるの?」

「奴隷として売られる」

「奴隷って……」

「異国の鉱山かなんかで働かされんだろ。死ぬほどな……あれ? ってことはお姉さん紹介してもらえない?」

「それは置いといて、何処に向かってるの?」

「アジトだ。そこに奴隷商人が買いに来る」


 しばらくすると馬車が止まり、森の中を歩かされる。武器持った奴等が前後につき逃げられそうもない。


「ここに入ってろ」


 掘っ立て小屋のようなアジトに着くと、掘られた穴のような地下室に閉じ込められた。


立て付けの悪い扉ーーもう板と言った方がいいーーを閉じてつっかえ棒を鍵代わりにすると男達が去っていった。少しすると騒がしくなった。飲んでいるんだろう。


 明かりもない地下室で他の子達は集まって眠ってしまったようだ。小さく寝息が聞こえる。外にでるなら今のうちだ。


 ひさしぶりに猫になる。入り口の隅にちょうどいいくらいの隙間がある。そこに体を滑り込ませ……あれ? はさまった? 太った訳じゃないよな。


ナー。(やっと出れた)


 やっとのことで外にでると、上の偵察を行う。そっと階段を上り覗き込む。


ナー。(……寝てるし)


 緊張感もなく、思い思いの場所で酔っぱらって寝ている盗賊達。机の上に食い物が残っている。後で下の子達に持っていってやろう。


ニャ?(お前も飯食いに来たのか?)

ナッ!(誰だ!)


 外から1匹のブチ猫が入ってくる。


ニャ。(今日もごっとうさん)


 机の上に行くと残り物を食い始める。いやいや、誰だよ。


ナー?(飼い猫?)

ニャ。(いんや、野良だ)


 それにしては堂々としてその辺を歩き回り何かないか探している。


ニャ。(よっこいせ)


 しまっていた食い物やら酒を剥ぎ取った盗賊の服に包み込み背中に背負う。


ニャオ。(ここの奴等、バカだから見張りも置かず寝てんだぜ? お前も見つからないうちに逃げろよ)

ナー。(忠告ありがとうございます)


 そう返すとブチ猫は森に消えていった。猫ってたくましいですね。


 俺は人間になると食い物を子供達に与えて、逃げるように外にでる。


 こんな時にクレイがいたらな。


「クレイ召喚!」


 叫んでみるが来るわけがない。仕方がない歩くか。


ヒヒーン?


 クレイか? 本当にクレイだ。背中から猫の頭が生えているが。


「パシュティさん何してんの?」


ニャー。(あんたがいないから探しに来たのよ。そしたらクレイが急に走り出して……)


 落とされないようにそうなったのね。ん? これ、使えねえ?


 この日、夜までにルースハートにたどり着けなかった商人が夜営している目の前を背中にいくつもの生首を生やした馬が通りすぎる。見張りの冒険者が悲鳴を上げ起きた人達に今あった事を話伝える。


 この時からこの異世界で怪談『死者の首を運ぶ馬』が語られるようになったとか。

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