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再びの異世界、可愛かった皇子様が俺様竜帝陛下になってめちゃくちゃ溺愛してきます。  作者: 新城かいり


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第65話


 その瞳を知っている。

 いつもすぐ傍で見ていたから。


 その金色を知っている。

 いつも、私をまっすぐに見つめてくれていたから。


「リュー?」


 もう一度呼びかけると、その大きな金の瞳が優しく細められて確信する。


 ――ああ、やっぱり。

 彼が、“竜”の姿となって私を助けに来てくれたのだ。


 嬉しくて、愛おしい気持ちが溢れて、そんな彼に両の手を伸ばした。


 でも。


「――りゅ、竜帝!?」


 背後で上がった裏返った声に、ぎょろりとその大きな瞳が動いた。


「ヒっ!」


 竜に睨まれ悲鳴を上げたカネラ王子は後退り、足がもつれたのかそのまま床に尻餅をついた。

 ゆっくりと首をもたげた竜が、そんな彼を見下ろす。

 その怒りに染まった金の瞳を見て、マズイと思った。


「リュー、待って!」


 だから私は咄嗟に、カネラ王子の前に出て大きく手を広げていた。


「私はもう大丈夫です! 大丈夫ですから、リュー」


 でないと、このままではリューがカネラ王子を殺してしまうと思った。


 酷いことをされた。酷い裏切りを受けた。

 でもカネラ王子はこの『砂漠の国』の王子様で。

 そんな彼をリューが……竜帝が殺めてしまったとなったら、間違いなく『竜の国』と『砂漠の国』の関係に大きく亀裂が入るだろう。

 最悪、国同士の争い――戦争になってしまう。


 それに何より、リューが誰かを手にかけるところなんて見たくなくて、咄嗟に身体が動いていた。

 でも。


(――!)


 その金の瞳が大きく揺れるのを見て、私は即座に自分の行動を悔いた。


「リュ、……っ!?」


 もう一度彼の名を呼ぼうとして、同時、バサリと彼が大きく翼を動かし大量の塵が舞い上がる。

 目を開けていられなくて、なんとか開けられた時にはもう、その姿はなかった。


「リュー?」


 目を凝らして空を見上げてみても、あの美しい竜の姿は闇に溶け込んで見つけることは叶わなかった。


「助かったぁ。ありがとね、聖女サマ」


 その安堵の声にゆっくりと振り返れば、カネラ王子が立ち上がりながら己の衣服についてしまった塵を払い落していて。


「や~、まさか竜帝が出てくるなんて思わな」


 パンっ


「!?」


 乾いた音が響いて、ローサとメリーが息を呑むのがわかった。


「……聖女、サマ?」


 私に思いっきり引っ叩かれた頬を押さえて、カネラ王子が呆然と呟く。

 そんな彼を睨み上げて、私は言う。


「勘違いしないでください。私は貴方を助けたわけじゃない」

「え?」

「あなたは、人として最低なことをしたんです。そのことを忘れないでください」


 その目が大きく見開かれるのを見て、私は彼から視線を外した。


「ローサ、メリー、大丈夫?」


 声を掛けると、ハッとしたようにメリーがもう一度私の胸に飛び込んできた。


「コハルさまぁ~怖かったのです~。あいつマジ何なんですか~~」

「コハル様、やはりあの竜は……」


 そう掠れた声で訊ねたのはローサだ。


「うん。リュー……リュークレウス竜帝陛下に間違いない」


 私が答えるとローサは「やはり」と顔を引き締め、静かな夜空を見上げた。

 私もその視線を追うように再び空を見上げて。


「早く、追いかけなくちゃ」

「え?」


 前にも、私はあの瞳を見ている。

 あの大きく揺れた、傷ついた金の瞳を私は知っている。


 だから早く彼の誤解を解いて、その身体を強く抱きしめたいと思った。



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