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再びの異世界、可愛かった皇子様が俺様竜帝陛下になってめちゃくちゃ溺愛してきます。  作者: 新城かいり


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第39話



  ――覚えていろ――


  ――必ず……必ずオマエを――



「――っ!」


 ハっと目を開ける。

 まだ夜が明けていないのか視界が暗い。

 ずっと息を止めていたかのような苦しさを覚えて深い呼吸を繰り返す。

 ……何か、嫌な夢を見ていたのだろうか、内容は覚えていないけれど酷い寝汗をかいていた。

 ゆっくりと首を回すと傍らにリューの穏やかな寝顔があって少しほっとした。


(あ、れ……?)


 異変に気付いたのは身体を起こしたときだった。

 なんだか全身が重怠い。顔が火照って、頭がぼうっとする。


(嫌だな。もしかして熱ある……?)


 昨日うだうだと悩み過ぎたのかもしれない。

 きっと知恵熱みたいなものだろう。

 気にせず身体を動かしていればすぐに良くなるはずだ。

 そう思って、私はリューを起こさないよう静かにベッドから下りた。


「コハル……?」

「あ、ごめんなさい。起こしちゃいました?」


 振り返ると、リューが寝ぼけ眼でこちらを見上げていた。


「もう朝か……?」

「はい。まだ少し早いですが」


 窓の方に行って分厚いカーテンを少しだけ開けると、もう夜は明けていた。

 今日も良い天気みたいだ。


「私、ちょっと汗かいちゃったんで先に部屋行きますね」

「あぁ……?」


 リューはのそりと起き上がりながら、寝室を出ていく私を少し不思議そうに見つめていた。



「コハルさま! おはようございます~」

「メリー、おはよう」


 朝からお花を食んでいたらしいメリーがふわふわとこちらに飛んできて、私は「あっ」と声を上げた。


「そうだ。メリー、癒しの魔法をかけてもらっていい? ちょっと身体怠くって」

「お安い御用なのです~!」


 メリーは張り切るように一度大きく飛び上がってから私の周囲を舞うようにくるくると回った。

 キラキラとした輝きに包まれて、気怠さがスーっと消えていく。


「どうですか?」

「ありがとうメリー。凄いすっきりした!」

「良かったのです~!」


 嬉しそうに笑ったメリーをもふもふと抱きしめる。

 これまで何度メリーにこの癒しの魔法を掛けてもらったかわからないけれど、本当に素晴らしい力だ。


(向こうの世界にもこの魔法があったら、もっと効率よく仕事出来てたかもしれないのになぁ)


 そこまで考えて、ハっとする。


 ――もう、向こうの世界には帰れないのだった。


「コハル様?」

「……よしっ!」


 私は暗い考えを振り切るように気合を入れてソファに向かった。

 ソファ前のテーブルには昨日セレストさんと作ったアルファベット表が置いたままになっていて。


 ――やっぱり、考えすぎは良くない。

 ティーアからの手紙のことは次の知らせが来るまで忘れよう。


 答えが出ないことであれこれ悩むより今はひとつでも多くこの世界の文字を覚えようと、私は朝からそのアルファベット表を睨んだのだった。




「今日の定例会議にコハル様も出席されますか?」

「え?」


 朝食後セレストさんからそう訊かれて、ティーカップを持ちながら一瞬呆けた顔をしてしまった。

 今日は午前中にまた会議があると今彼の口から聞いたばかりだけれど。


「昨日、出席したいと言っていただろう?」


 リューから言われて、私は慌ててカップをソーサーの上に置いた。


「はい! 是非出席させてください!」

「かしこまりました。それではコハル様の席もご用意させていただきます」


 きっとほぼ見学になってしまうだろうけれど、会議でいつもどんなことを話し合っているのか、今この国でどんなことが問題になっているのかちゃんと知っておきたかった。


「よろしくお願いします!」




 ――でも、その会議の最中だった。


(マズイな、また身体おかしくなってきた……?)


 起きた時の気だるさが再び戻ってきていた。

 熱も上がっているのか先ほどから悪寒が治まらない。

 でも今は大事な会議中だ。


(終わるまで、しっかりしなきゃ!)


 会議の出席者は私たちの他、先日挨拶を交わした大臣たち数名。

 私の席はてっきり末席か部屋の隅の見学席かと思ったがリューの隣に用意されていて常に気を張っていなければならなかった。

 会議の内容はこの国の復興事業についてや、昨日聞いた世界各地で起き始めている小規模な争いの件も上がり皆真剣に話し合っていた。


「我が国としましても砂漠の国への援助はしたほうが良いと考えますが」

「しかし下手に介入してはこちらにも火の粉がかかるやもしれん。やはりここは慎重に……」


(今一番争いが起きているのは砂漠の国なんだ)


 話の内容に精一杯耳を傾けながら7年前に訪れた砂漠の国を思い出していると。


「コハル?」

「え?」


 急に名を呼ばれてそちらを見ると、リューが私を見て怪訝な顔をしていた。


「なんでしょうか?」


 大臣たちも一旦話を止めこちらに視線を向けた。

 リューはがたりと椅子から立ち上がるとこちらへとやって来てその大きな手で私の頬に触れた。


(んなっ!?)


 皆のいる前でいきなり何をと思った次の瞬間、リューはそのまま私をひょいと抱き上げた。


「――りゅ、陛下!?」


 思わず出た声がひっくり返ってしまった。

 案の定大臣たちは皆揃って唖然とした顔をしていて、元々火照っていた顔が更に熱くなった。


「おおお下ろしてください!」

「大人しくしていろ」

「……っ!」


 有無を言わせぬ低い声音に私はバタつかせていた足をぴたりと止めた。


「すまない。コハルは体調がすぐれないようだ。少し席を外す」


 そうして皆がポカンと見守る中、リューは会議室を出たのだった。



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