夏希
冬も本格的になってきて、雪が積もるようになった。
現実世界へ帰ってきた僕は、ただひとつのことを病気のように調べ、そしてその答えを得ていた。
車の運転席には僕。助手席には、翠。
僕らは、墓参りに行っていた。
夏希の、墓参りだ。
夏希の墓を参りたいと言うと、彼女の家族は喜んで場所を教えてくれた。
墓に花を添え、そしてしゃがみこんで、手紙を開いた。
それは、いつの間にか彼女が僕のポケットに入れていた手紙だ。
恭司へ。
これを読んでいる時、私はこの世にいないでしょう。
というか、私が存在できるのが、あの空間だけだったのだと思います。
恭司は強い人でした。
強いけど、だからこそ自分を認められない人でした。
そんな恭司と友達になれたら、と何度も思いました。
私と恭司は友達になれたかな? 友達だったら嬉しいです。
そこまで読んで、涙腺が緩んだ。
そんなことすら自信がなかったのだ、僕達は。
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私は魂だけの存在だから、くっついて一緒に現実世界へ行ったら恭司の中に溶け込んでいくと思います。
だから、恭司に私のスキルを託そうと思います。
いつか言ったけど、もう一度言います。
泣かないで、あなたは私が守るから。
私のスキルが、あなたを守るから。
もしも、現実世界で会えたら、ちょっと恥ずかしいね。
一緒にカラオケでも行こうよ。楽しみにしてる。
追伸、と書かれた後に手紙は続く。
お母さんにはごめんなさいって言えそうにないから、ありがとうって言ってたって伝えてください。
そこで、手紙は、僕と夏希の接点は途絶えた。
あの世界は、石神の作った箱庭だったのだ。
ソウルイーターが集めた莫大な数の魂を少量利用した、遊び心が作ったような空間。
魔物と戦わせることで超越者への覚醒を促し、そこに至った者は石神が吸収する
そんな空間だったのだ。
その機械は、既に僕の雷撃によって破壊されている。
光が蛍のように散って、様々な魂が帰っていくのがわかった。
「俺、もうちょっとなんかできなかったかな。情けないことに、励まされてばっかりだった」
翠が後ろから抱きついてくる。
「あんたは囚われていたこの子を救ったんだ。なにも、悪くない」
「……見ててくれるかな、俺達の戦い」
「見ててくれるさ」
そう言って、翠は僕の背から離れた。
「帰ろう。今日は凍えるぞ~」
呑気な調子で言う彼女に、つい微笑む。
「元気でね、恭司」
そんな声が、聞こえてきた気がした。
「夏頃に、また来るよ」
そう、僕は墓に向かって言った。
そして、前を見て歩いていった。
失ってしまったものも新たに与えられたものも、胸に抱いて。
第五章 完
次回、第六章へ続く。
今週の更新はここまでです。
祝二十万文字突破。ちまちま積み上げようと思います。




