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ソウルキャッチャーズ~私は一般人でいたいのだ~  作者: 熊出
第二章 冒険を、望んでいた

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包囲脱出戦

「ヘリコプターが邪魔だな」


 そう言ったソウルイーターの周囲には、五本の巨大な腕が現れている。

 それは、僕らを囲んで守るようにして配置されていた。


「ああ、それなら、片付けるよ」


 僕はこともなくそう言う。

 数十人の超越者。

 それを相手にするには、まずは防御できる状況を整えなくてはならない。


 僕は長剣を消し、唱えた。


「来い!」


 声が周囲に響く。

 戸惑うように、数十人の超越者が立ち止まった。


 空から巨大な剣が振ってきて、ヘリコプターを串刺しにした。

 そのまま、ヘリコプターは田んぼに縫い付けられる。


 そして、僕は更に唱えた。


「降り注げ!」


 四本の巨大な剣が、正方形を作って僕らの姿を隠した。

 これで、残るは数十人の超越者だけ。


「前方だけ開いて、前面の敵を突破。そのまま逃亡って手はどう?」


 響が、戸惑いがちに言う。

 ソウルイーターは、邪悪に微笑んだ。


「その必要は、ない」


 ソウルイーターは手を掲げる。


「面白くなってきやがった。アラタ。お前のスキルと俺のスキルは非常に相性がいい」


「全然嬉しくない」


 僕のぼやきを気にせず、ソウルイーターは手を振り下ろした。

 五本の巨大な腕が、その場から消えた。



+++



 伊藤勤は今回が初の任務だ。

 仲間は数十人もいる。

 そう思い、楽な仕事だと思いここまできた。

 ヘリコプターが落とされた時も、対策すべきスキルがわかって良かったと思ったほどだ。

 その楽観的な思いは、次の瞬間なくなった。


 剣の籠の外に、巨大な手が五本現れる。

 その五本は、高速で移動を始めた。


 炎の術者が、氷の術者が、風の術者が腕へと呪文を唱える。

 しかし、腕は止まらない。

 そのまま、数人を飲み込んだ。


「スキルを食われた!」


 悲鳴のような声が上がる。


 そして、剣の術者が腕に斬りかかった。

 腕は後ろに退き、次の瞬間高速で剣の術者を飲み込んでいた。手に持った剣が消える。


 その時、新たな悲鳴に勤は気がついた。

 見ると、剣の籠の一部が消えている。

 そこから、一組の男女が飛び出した。


「鬼の力、喰らえええ!」


 あれは、響という名の少女のはずだ。それが、ものすごいスピードで腕を振り上げ、跳躍し、勤の仲間に拳を叩きつけた。

 人知を超えた力。

 仲間は吹き飛び、血を吐いて動かなくなった。

 突然の強襲に、準備が整わず、仲間は次々に吹き飛ばされていく。

 そして、勤は気がつく。

 あの一味の最年少。ヘルメットにスーツ姿のアラタに、自分が見つめられていることを。


「来い!」


 アラタが叫ぶと、田んぼの上に巨大な剣の道ができた。

 アラタは駆けてくる。

 しかし、勤はまだ余裕を持っていた。

 自分のスキル、雷撃。それは、いかなる敵も一瞬で無力化する最強のスキルだ。

 勤は手を構え、雷撃を放つ。

 しかし、アラタは止まらない。


「何故だ?」


 戸惑いながら、もう一撃を放つ。

 アラタは止まらない。


 アラタとの距離が五十メートルほどになって、ようやく勤は恐怖した。


「これが、超越者同士の戦い。これが、ソウルイーターの戦い……」


 勤は逃げ出そうとする。

 しかし、田んぼのぬかるみがそれを邪魔する。

 周囲の仲間達がいいようにやられているのも、それが原因か。

 遠距離スキルを過信しすぎたのだ。

 勤の心は、恐怖で一杯になった。死んだほうがマシかとも思った。

 その意識は、アラタの剣の峰の攻撃で途絶えた。



+++



「ふー、美味しかった」


 ソウルイーターが満足そうに言う。


「敵はあらかた気絶したか、撤退したわね」


 響はしゃがみこんで、言う。


「足が泥だらけだわ。シャワー浴びたい」


「お前、そういうとこやぞ」


 ソウルイーターは呆れたように言う。


「このまま行こう、滋賀へ」


 僕は力強く唱えるように言う。


「行こう、滋賀へ」


 響も、同調する。


「そうだな、行こう」


 ソウルイーターも、複雑そうな表情で頷く。

 全ての謎の答えが、そこに行く。

 僕らの冒険は、まだまだ続く。



+++



「馬鹿な。数十人の超越者部隊を三人でしりぞけただと……?」


 大きな机についた中年男が、戸惑うように言う。


「こんな結果、どう報告すればいいというのだ……」


 そう言って、椅子に深々と背を預け、溜息を吐く。


「もう、なりふりかまっている暇はないのでは?」


 中年男に報告しにやって来た細身の男が、言う。

 中年男はハンカチで額の汗を拭いて、一つ溜息を吐く。


「毒を持って、毒を制すか……」


 そして、しばしの沈黙の後、決意を持って言った。


「斎藤翠を呼ぼう」


「それが上策かと」


 細身の男も、そう答える。

 現状、警察サイドで最強の超越者。それはソウルイーターの三割を捕縛した斎藤翠を除いて他にいなかった。



第八話 完

次回『旅の終着点』

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