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【アニメ2期決定!】悲劇の元凶となる最強外道ラスボス女王は民の為に尽くします。〜ラスボスチートと王女の権威で救える人は救いたい〜  作者: 天壱
傲慢王女と元凶

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452.傲慢王女は味わう。


「主!良かったです!もう目が覚めたんですね!」


最初に嬉しそうに声を跳ねさせたのはケメトだった。

更にはそれに続くようにセフェクが「もう平気なんですか⁈」と声を掛けた。だが、その間もプライドは二人に答えない。それどころか見向きもせずにヴァルを真っ直ぐと見つめ続けている。プライドに無視されたことも気にせず二人は「どうして窓が閉まってたんですか」「割っちゃって大丈夫でしたか」と次々と続けている。


「会いたかったわぁ、……ヴァル。」


ねっとりと、いつものプライドとは思えない粘着のある声にヴァルは目を強く開いた。

なんだ、と思いながら声が出ない。ここまで部屋に来たのは自分の意思もある。だが、何故プライドが自分にそれを命じたのかはわからない。むしろ彼女なら窓を割れどころか侵入すら人前で許す筈はないというのに。

敢えて返事をせず、疑うようにプライドを見つめ続けるにヴァルにプライドは笑いを噛み殺す為に口を両手で押さえた。肩を丸くし震わせる姿は、大笑いを我慢するような動作だ。どういうつもりだ、とヴァルが口を開こうとした瞬間


プライドが突然飛び込むようにして抱きついてきた。


軽いステップでヴァルの元へ飛び込み、その首に両腕を回す。

身体が密着しながら、背後に窓の破片が飛び散っていたヴァルは寸前のところで下がらず踏み止まった。反射的にプライドをそのまま両腕で受け止める。息が詰まるような音だけを口から僅かに漏らしたヴァルに、プライドの深紅の髪だけが眼前へ舞った。ふわり、と花のような香りが広がり、柔らかな感触とともに彼女の吐息がうっすらと彼の耳にかかった。


「……………………どういうつもりだ、主。」

自分の首に腕を巻き付けたまま、何も言わないプライドにヴァルは数十秒経ってから片眉を上げて訝しむ。

フフッ…と笑い声しか漏らさないプライドに気味の悪さすら感じられた。窓の外の衛兵が騒ぐ声が目覚ましのように改めて彼に現実味を帯びさせていく。プライドの身体へ回した腕を緩め、自分から腕を離したヴァルは、そのまま自分に巻き付けるプライドの腕を外そうと手を掛け











「私への全許可を剥奪する。」











「⁈ッグ、ガァアアアッ‼︎……何、のッ!」

耳元で囁かれたその言葉を皮切りにヴァルはプライドから完全に手を離し、その場に崩れるようにして平伏した。

アッハハハハハハハハハハハハハハハハハッ‼︎‼︎と、楽しげなプライドの笑い声が噴き出すように響き渡る。

腹を抱え、天井を仰ぎ大口で笑う彼女は目の前で平伏すヴァルの姿に目を輝かせた。

突然のヴァルの平伏と、プライドの高笑いにセフェクとケメトが目を丸くして首を傾げた。どうしたの、どうしたんですかと二人へ交互に言葉を掛けるが返事を返す者は誰もいない。


「アッハハハッ……嗚呼、貴方と契約しておいて本当に良かったわぁ……。」

ハハハッ……とまだ笑いが収まらない彼女は、呑気に目元に溜まった涙を指先で弾き、ヴァルを見下ろした。

プライドへの全権利を奪われた彼は、王族に敬意を払いその場から許可なく動くことどころか、平伏したまま頭を上げることすら叶わない。言葉に詰まり、抗うように手足に力を込めながら「主ッ…何の、おつも、りでッ」と呻くが、王族へ言葉すら整え縛られた彼は発することすら屈辱のように顔を歪めた。その姿にプライドが更に笑い声を高らかに上げる。アハハハハハハハハッ‼︎と珍しい動物でも見つけたかのように指を指して彼を嘲笑った。


……嗚呼っ………楽しい。


楽しい、楽しい、楽しい愉しい愉しい愉しい愉しい愉しい愉しい‼︎

ゾクゾクゾクゾクッ‼︎と興奮で全身が震え上がるのを感じ、恍惚と顔を悦に歪ませた。

俯いたヴァルには見えなかったが、その顔を間近で見たケメトとセフェクは同時に顔色を真っ青にし、言葉も無くして動けなくなった。いつものプライドと異なるどころか、人としても常軌を逸したその表情は、他者からの悪意に受け慣れた二人にすら恐ろしく感じた。

主……と言葉は漏らすが続きが出てこない。次第にまた笑いが収まったプライドは、その大きく開いた目をぎょろり、と今まで目もくれなかったセフェクとケメトへ向けた。


「……さぁ、どう遊ぼうかしら?」

目の前に可愛い玩具が二人転がっていることにプライドは楽しげに顔を歪ませる。フフッ…とまた声を漏らしたところで一歩、その足を二人へ向けた。


「ッさっさと逃げろ‼︎セフェクケメト‼︎‼︎」

今の危険を誰よりも理解したヴァルが平伏したまま声を張り上げる。

その途端、満面の笑みでプライドが余計な事を言うヴァルの頭を蹴飛ばした。ガンッと顔が弾かれ、更に無抵抗に上から踏まれ、勢い良く顔面が床に叩きつけられる。その様子にヒッ!と息を飲み込む二人だったが、ヴァルの危険にセフェクはケメトの手を握り締めた。そのまま相手がプライドだということに少し惑いながらも、セフェクが手を構える。すると、彼女が水を放つより先にプライドは引き上げた笑みで口を動かした。


「命令よ?私を守りなさい、ヴァル。」


悠然と放たれるその声とセフェクが水を放ったのは殆ど一緒だった。

ケメトの特殊能力で増幅された凄まじい勢いの水柱が放たれ、同時にヴァルの荷袋の砂が飛び出し、壁を作ってプライドを守った。ブシャァアアアッッ‼︎と壁に弾かれた水が部屋中に撒き散らされ、跳ね返った水がセフェク達を濡らした。

目の前で起きたことに理解が追いつかず、目を丸くするセフェクとケメトに再びプライドの笑いは止まらない。

その場に動けないままプライドの命令通りに砂を操るヴァルと、まさか自分の攻撃をヴァルに防がれるとは思わずに硬直した二人が面白くて仕方がない。「良いからさっさと逃げやがれッ‼︎」とヴァルが再び声を荒げ、二人が咄嗟に背後の扉を振り返った。

扉からは、窓が割れた音を聞きつけた衛兵と窓からヴァル達が侵入したのを目にした衛兵がプライドの部屋に入ろうと扉をガチャガチャと押し、早く鍵をと騒いでいた。既にプライドにより内側から鍵を閉められていた扉を二人が開ければ、逃げられずとも衛兵に保護はされる。更に助けを呼べばヴァルも助かるかもしれないと、今度はセフェクより先にケメトが扉へ手を伸ばす。


「命令。ケメトとセフェクを封じてちょうだい。……私の邪魔をしちゃ駄目よ?」


冷酷に言い渡される言葉の直後、ヴァルの砂が二人へ伸びる。

怒りでヴァルがその場で咆哮したが、構わず砂は手を繋ぐ二人の手とそして反対の手を身体ごと拘束するように巻き付いた。それでもケメトの手を離さないセフェクだったが、下に向けられた手のひらではプライドに攻撃することも出来はしなかった。ヴァル‼︎と何故自分達を拘束するのか、一体どうなっているのかセフェクが声を上げた途端に歩み寄ったプライドに、その腹を蹴り飛ばされて床に転がった。

セフェク‼︎とケメトとヴァルが同時に叫ぶ。だが、背中を丸めて呻くセフェクを確認した時には、プライドが躊躇なくケメトの頭を蹴り飛ばした後だった。小柄なケメトはそのまま背後の扉にまでガンッ!と音を響かせて頭をぶつけ、呻きもなく気を失うようにして床に倒れ込んだ。ケメトの名を再びヴァルは叫んだが、今度は全く反応が返ってこなかった。


「嗚呼っ……愉しい。ハハッ!……ありがとうね?ヴァル。私いますっごく愉しいわ。」

ニタァァァアア……と裂けんばかりに口端を引き上げ歪ませたプライドが笑う。

苦渋に顔を歪め、鋭い眼差しをプライドへと向けて睨みつけたヴァルを見て、余計にその顔は醜く笑んだ。「貴方様ッは……どなた……でしょうかッ……」と言葉を詰まらせながら搾り出すヴァルに、プライドはまた笑う。決まってるじゃない、と言葉を繋げながら動かないケメトと、そして腹を抱えるように丸まって動けないセフェクを跨ぎ、ゆっくりとヴァルの方へと歩み寄っていく。


「私は私よ?貴方の主、貴方の自由も全てを縛った全ての元凶。……わかっているのでしょう?」

フフフッ…と笑いながら、ヴァルに歩み寄る。平伏し、ギリギリと歯が砕けんばかりに食い縛るヴァルの硬い髪を撫で、そのまま顔を覗き込むように膝をつく。

自分の意思で顔すら上げられないヴァルを愛おしそうに眺めたプライドは、砂汚れでザラついたヴァルの髪からそっと両頬に手を添えた。

無抵抗にプライドに触れられ、手を払いのけたい衝動と隷属の契約が鬩ぎ合い、身体を震わせた。口を開けて笑うプライドが、そっと添えた手に力を込める。そのままゆっくりとヴァルの顔だけを自分の方へと向かせた。ギギギッ…と油を注していない機械のようにぎこちなく上げられる。顎を震わせ、触れられた頬を汗で湿らせ、素早く唾を飲み込んだ。血走った眼が凶悪な顔つきと相まって、小心者であれば目だけで殺せるほどに殺気を孕んでいた。怒りと屈辱、そして困惑とが混ざり合い、まっすぐとその目をプライドへと突き刺した。

ヴァルのその顔に愛おしげに頬を綻ばせるプライドは「良い表情ね」と一言でそれを称した。


「……そんな顔が見たかったの。嬉しいわ、もっともっと私にその顔を見せてちょうだい。」


まるで美術品でも眺めるようにうっとりと目を紫色に輝かせるプライドに、ヴァルの顔は更に歪んだ。

逸らすように僅かに顔の角度を変えたが、それ以上は叶わなかった。嫌悪と拒絶を全身で示せば余計にプライドの表情は恍惚と輝き、興奮からヴァルの頬に僅かに爪を立てた。

ギョロリ、ギョロリと大きな瞳を左右に泳がせ、満足できるまで堪能した後。ふと、扉の前で倒れ込んでいるセフェクとケメトへ目だけで指し示す。

ケメトは指先一本も動いていないが、痛みから少しだけ回復したセフェクは少しずつ震える腕で身体を起こそうとしていた。ヴァルもそれに気付き、まさかまたプライドがセフェクに何かするのではと肩を強張らせた、その時。



「ねぇ?…ここで私が貴方に「二人を殺しなさい」と命じたら、貴方はどれだけ抗うのかしら。」



引き上がった唇と爛々と輝く瞳で告げられたその言葉に、ヴァルは一気に血の気が引いた。

瞬きも忘れ、全身を命令とは関係なく硬ばらせた。なっ…⁈と言葉を漏らし、心臓が一度動きを止めた。目の前のプライドが本気でそれをしようとしていることが、嫌なほどヴァルにはわかった。喉仏を上下させ、開いた口を硬直させるヴァルにプライドは笑みを広げた。

抗えるわけがない、隷属の契約の主からの命令は絶対なのだから。


「嗚呼っ……その表情、すっごく素敵。ほらほらほらぁ?……もうお別れは良いかしら。」

平伏した体勢のまま縫い付けられたように身動きも取れず、顔だけを無理矢理プライドに向けらる。必死でこの場から逃げようと抗うが、隷属の契約には逆らえれない。慌て、取り乱しかけるヴァルの表情を間近で堪能しながら、プライドは頬に添えた手の指先で優しくヴァルの痙攣する目元を撫でた。


「プライド・ロイヤル・アイビーの名の下に命令します。」

穏やかに、なだらかな声がプライドの唇から放たれる。

ヴァルの表情の変化を味わうように少しだけ顔を離し、小首を傾げた彼女は心から楽しそうに笑みを見せた。


「ケメトとセフェクをいますぐ…」

フフッ…ハハッ!と堪らずそこで笑い声が漏れた。あまりにも限界まで目を見開くヴァルの表情が楽しくて仕方がない。


「こ」

〝止めろ〟という意思をと堪らず言葉が整ってしまうことも構わず荒げた声で叫んだヴァルに、突然の音量で少し仰け反った。そのまま手を離し、数歩ヴァルから離れるとプライドは傍にあったソファーに腰掛け、また口を開いた。


「ろ」

セフェク逃げろと、扉を開けろ、ケメトを連れてけと叫んだが、セフェクは何が起こっているのかもわからない。倒れてる手足を拘束されたまま何とかケメトに駆け寄るが、何故ヴァルがその場から一歩も動かないのか、プライドが何故そんな楽しそうな顔でヴァルを眺めているのかわからない。


「し」

早くしろ、殺すぞと言葉が放たれる。殺す、の一言を自分でセフェク達に放つことができたことにヴァル自身が驚き、背筋が凍った。契約で脅迫行為をできない筈の自分がそれを言えたということは、その言葉が脅迫ではなく〝忠告〟と〝宣言〟に変わっていることに他ならなかった。

いっそ舌を噛んで死のうかと思ったが、その途端に先程のプライドの「私の邪魔をしちゃ駄目よ?」の言葉が脳裏に過ぎる。プライドの命令の邪魔をすることは、たとえ自殺であろうとも隷属の身である彼には叶わない。


「な」

サラサラ、と部屋に散乱した荷袋の砂が動く。

プライドの命令をすでに理解しているヴァルが、本人の意思とは関係なく命令を実行すべく動き出す。自分達の手足を拘束していた以外の砂が、蛇のように彼女達の首へ巻きつくべく這い上る。気を失っているケメトは無反応だが、セフェクからは悲鳴が上がった。セフェク、と叫んだがヴァルからそれ以上の言葉が出てこなかった。


「さ」

一定のリズムで遅らせることなくプライドが言葉を紡ぐ。

殺させるケメトとセフェクには全く興味を示さず、二人を殺す寸前から直後までのヴァルの顔をじっくりと眺め堪能する。引き上がりながら笑い、涎が溢れそうになる口をゴクンと軽く鳴らして目を光らせた。決定的瞬間を一瞬すら見逃さないようにと、先に一度だけ瞬きをしてから見開いた。

二人の首に砂が巻きつき、今かいまかとプライドの最後の一文字を待っている。ヴァルが全身を激しく震わせ、強く食い縛った歯で獣のような唸りを上げ、プライドの言葉を打ち消そうと血を吐くような声を張り上げようとした瞬間。





















消失した。



















「!…あら。…、…………………あぁ…。」

ヴァルが消えたことに少し驚き、すぐに気が付いたプライドは、諦めたようにセフェクとケメトの方に目を向けた。予想通り、さっきまで扉の方に転がっていた二人もいなかった。

ハァ…と大きく溜息を吐き、足をソファーから組み直す。扉の向こうでは未だに部屋に入ろうと多くの衛兵の騒ぎ声が聞こえている。ダンダンダン‼︎と響く音を聞きながら、まだ破れないことに流石第一王女の部屋よねと頑丈な扉へ感心する。折角の極上の時を邪魔されたわとプライドは指先で自分の髪をくるくると弄びながら暇を潰す。そのまま、まだかしらとつまらなそうに唇を尖らせ



「一体ッ……なにをしているのですかプライド‼︎‼︎」



これ以上ない、静かな怒声が放たれた。

振り返り、怒鳴られた直後とは思えないほど楽しげな表情でプライドは彼に笑い掛ける。


怒りで顔を赤く燃やし、荒い息と共に自身を睨む、ステイルへ。


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