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【アニメ2期決定!】悲劇の元凶となる最強外道ラスボス女王は民の為に尽くします。〜ラスボスチートと王女の権威で救える人は救いたい〜  作者: 天壱
傲慢王女と元凶

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453.義弟は目を逸らす。


「……プライド。」


父上の公務の手伝いも一区切りつき、僕は一度部屋に戻った。

この後に昼食を終えたら昨日と同じ城下の視察と、貿易の確認だ。今日は確か港に三隻船が来ると言っていたから、その品の確認もできる内にしておかないと。

ソファーに一度掛けた僕は、侍女が淹れてくれた紅茶のカップを手に、香りを放つその湯気をぼんやりと眺めた。

昨日、……ハナズオ連合王国の彼らは我が国にやって来なかった。プライドを心配しての滞在延期をするのなら約束の日に来てくれれば我が国の船で送る旨と伝えたけれど、彼らは結局我が国に訪れなかった。船に弱かったヨアン国王の為に陸路で帰ったのか、それともさらに滞在を伸ばしたのか、……プライド、に何かあったのか。

我が国に訪れてくれたら責任持って僕も同乗して、プライドのことについても航海の道すがら聞ければと思ったのだけれど。

我が国とフリージア王国は隣国だ。更には王都同士もとても近い。でも、……こうしているとやはり僕と彼女は遠い地に居るんだなと実感する。

プライドは、どうしているのだろう。やはりまだあの時のままなのだろうか。もし、プライドがいつもの優しい姿に戻ってくれていれば。そんな奇跡があれば今すぐにでも彼女の元へ向か







「ッッッ主‼︎‼︎‼︎」







……突然、血を吐くような叫び声が目の前で発せられた。

姿よりも先にその声に驚いて、思わず肩が激しく上下する。見れば、酷く見覚えのある友人が床に平伏すような体勢で顔を上げていた。苦痛と絶望に顔を歪めたその表情が一瞬だけ目に映り、僕自身の目が見開かれるのが自分でもわかった。


「ヴァル……?」

何故ここに、とあまりに唐突のことに言葉が出てこない僕に彼がもっと驚いたように目を丸くした。扉を守っていた衛兵が「どうかなさいましたか」と扉の向こうから訪ねてくれる。それに一言で返しながら、僕はヴァルを見返す。

「あいつらはっ……⁈」と平伏した体勢から彼は飛び上がるようにして身を起こし立ち上がった。そのまま必死に探すように僕の部屋を見回した。すると、ある一点で彼の視線が止まる。その顔から血の気が引き、息を飲む音が僕の耳まで届いた。


「ケメト‼︎セフェクッ‼︎」

再び声を上げる彼の視線の先を僕も向くと、いつの間にか今度はセフェクとケメトが床に倒れ込み、…その傍にはステイル王子が立っていた。

深刻な表情なまま肩で息をするステイル王子に見向きもせず、ヴァルが倒れたままの二人に駆け寄った。セフェクはすぐにヴァルに気がつくと「ヴァル‼︎」と泣きそうな顔で彼に顔を上げた。何故か両手を砂で拘束されている。同じように拘束されたケメトは意識がないのか、今も倒れ込んだままだった。ヴァルがケメトを抱き寄せ、名前を何度か呼ぶと数度目にやっとケメトが目を強く萎めてからゆっくりと開けた。「ヴァル……?」とぱちくりと目を丸くしたケメトにヴァルとセフェクが、目に見えて息を吐いた直後。


ステイル王子が、ヴァルの胸元を乱暴に掴んで引き寄せた。


さっきまで険しい顔をしながら黙していたステイル王子がケメトの無事を確認した途端、堰を切ったようように「説明しろッッ‼︎」と声を荒げた。

ステイル王子から見たことのない声の荒げ方と、青筋を立てた怒り方に僕まで思わず息を止めた。やっとステイル王子へ目を向けたヴァルは、無抵抗に掴まれたまま、目だけをギロリと鋭く彼へ突きつけた。


「手短に話せ‼︎一体何があった⁈お前は何をしようとし一体姉君に何をされた⁈」

早口でまくし立てるようなステイル王子にヴァルがギリッと歯を食い縛る。言いたくないというよりも、思い出して怒りが込み上げているような表情だった。それからステイル王子からの命令と質問にヴァルが低い声で言葉を返す。


「ッ主の命令でガキ共を殺しかけた‼︎テメェが来なけりゃそれ以上だ‼︎‼︎」

ステイル王子に額がぶつかるほどに顔を近づけたヴァルが牙のような歯を剥いた。忌々しげに声を張り上げながら返す彼の言葉に僕は耳を疑う。すると、ステイル王子は予想していたかのように顔を酷く歪め、突き飛ばすようにしてヴァルから手を離した。「ここで待っていろ!」とだけ告げた彼はその顔を僕に向けると、険しい表情のままに口を開いた。


「レオン王子‼︎申し訳ありませんが少しの間だけ内密に彼らをお願いします‼︎‼︎」

すぐに戻ります!と叫ぶ彼の気迫に押されると、僕が言葉を返すより先にステイル王子は再び瞬間移動で消えてしまった。


「………一体、何があったんだい…?」

再び僕を心配して扉の向こうから声を掛けてくれる衛兵に言葉返し、やっと僕は三人に問いかける。

両手ごと砂で拘束されたままの二人は、未だに状況すら理解できていないようだった。身体を起こした状態でその場に座り込むセフェクと、ヴァルに抱き起こされながら僕らを見比べるケメトに、ヴァルは言葉が出ないように再び歯を食い縛った。

砂……ということは彼らを拘束しているのもヴァルの特殊能力だと思うけれど、自分の意思じゃどうにもならないように彼はその拘束を解かないままだった。能力の暴走か何かか、僕も手伝おうとセフェクの拘束する砂に指を引っ掛けるけどもビクともしない。完全に彼女らの腕を固定したままだった。

ヴァル、ともう一度彼に問い掛けるべく声を掛けると「知らねぇ‼︎」と激しく声を荒げられた。

言いたくないのか、と僕が口を噤むとヴァルは俯き、自身の髪ごと顔を強く鷲掴んだ。まるで顔に違和感でも感じるかのように爪を立て、輪郭を引っ掻きながらフーッフーッと抑えるような荒い息で言葉を絞り出した。


「……ッ主の皮被ったバケモンがいやがった……‼︎‼︎」


クソが‼︎‼︎と一人叫んだ彼が指先の震えを止めるように拳を床に叩きつけた。

それを見たセフェクとケメトは、彼の声よりもその怒りに歪んだ表情から目が離せないようだった。

血走った眼で忌々しげに放たれた彼の言葉。そして先程のステイル王子とのやり取り……。


……恐らく、それは間違いなくプライドだ。


動揺を隠しきれない彼へ僕は言葉と共に口の中を飲み込んだ。まだプライドの心がまだ戻っていないことだけを静かに理解して。



……



「一体ッ……なにをしているのですかプライド‼︎‼︎」


身体の震えを抑えるように俺はプライドへ声を張り上げた。

俺の叫びにプライドはステイル、と全く悪びれもなければ驚くきもせず寧ろ楽しそうに笑みを向けてきた。


配達人が来ている、と。


その報告を衛兵から受けた途端に、言い知れない恐怖と胸騒ぎに襲われた。

ヴェスト叔父様に許可を得て、俺はすぐにヴァルが待たされているであろう玄関前へ向かった。プライドの部屋どころか、今は宮殿にすら誰も入らせないように指示をしている。更にアダムのことがあってから、プライドの部屋の窓も施錠を固めた。命令さえ届かなければ、奴は大人しく俺が来るまで宮殿前で待たされている筈だと自身へ言い聞かせた。今のプライドに隷属の契約者であるあの男は、絶対に接触させてはいけないという確信と焦りがあった。

考えれば考えるほど嫌な予感と取り返しのつかないことが待っている気がして仕方がなかった。

更には宮殿が見えてきたところで馬車の窓から目を凝らせばプライドの部屋の窓が割れていた。一気に鼓動が速くなり、耐え切れずに俺はヴァルの元へと瞬間移動した。

プライドと一秒すら奴の接触を許せず、移動してすぐにレオン王子のもとへ問答無用で引き剥がせば、……地獄が広がっていたことを俺はその直後に理解した。

すぐにケメトとセフェクも考えるより先にヴァルの元へ瞬間移動させてみれば、二人とも身体を砂で拘束され、ケメトは力尽きるように倒れていた。二人の首の回りにまで一瞬砂が巻き付いているように見えたが、ヴァルが声を上げた途端にそれは解除された。

あまりに酷い惨状に言葉も出なかった。まさか、本当に、と言い知れぬ不安に吐き気さえ込み上げた。

そして聞けば、最悪の予想は的中した。


「貴方は‼︎ケメトとセフェクを殺そうとしたのですか⁈」

信じられない。いくら自分の手を汚さないとはいえ、プライドがケメトとセフェクを殺そうとするなど。しかもプライドがティアラと共に可愛がっていたあの二人を!

更にはよりによってヴァルに二人を拘束させ、本人の能力によって。残酷の域を越えている。


「……ちょっとだけ違うわよ?」

怒りのままに声を荒げる俺に、プライドは大したこともないように答えた。笑いながら指先に巻き付けていた自身の髪を軽く払う。

何が違うというのです⁈と怒りが収まらない俺にプライドは引き攣ったような笑みをゆっくりと向け、訂正した。


「殺そうとした、じゃないわ。〝殺させようとした〟の。……ヴァル本人にね。」

ぞっっ、と。

怖気が全身を走り抜け、身体が勝手に激しく身震いを起こした。息苦しくなり、上手く口の中さえ飲み込めなくなる。心臓がドグンッと拍動し、大きく身体を内側から振動させ、気持ち悪く血を回した。

まるで、それこそが大事なことだったと言わんばかりに笑うプライドの笑顔に吐き気がする。その間にも本人は思い出したように恍惚と顔を火照らせ、爛々と目を輝かせて笑っていた。

アハハハハハハッ!と腹を抱えて高笑いを上げるプライドが、もう俺と同じ人間なのかも疑わしい。


「すっっごく……楽しかったわぁ……。二人を殺すように命じると言った時のヴァル。とっても素敵な表情だったもの。」

ハァ……とまるで焦がれるように恍惚としたまま頬を緩まず彼女は「あと少しだったのに……」と小さく呟いた。


「見たかったわぁ……。あのヴァルが、ケメトとセフェクを自分で絞め殺す姿。……ップ……ハハハハハハッ‼︎絶対素敵に決まっているわ!もう、あの顔が絶望に染まるの想像しただけでー…………ぞくぞくしちゃう。」

一人だけ楽しそうに声を高め、嗤い、最後は顔を赤らめ唇を舐めた。

俺の知るプライドの欠片もない〝女性〟がそこにいた。あまりの嫌悪感に言葉を飲み込み、吐き気と戦えばその間もプライドは足をバタバタと遊びながら言葉を続けた。


「でも、やっぱり折角なら自分のこの手で絞め殺させてあげた方が良かったわよねぇ?……アッハハ!次はそうしましょうっ!」

手を叩き、まったく楽しさの欠片もないことを傑作と言わんばかりに笑い出す。

早くまた会いたいわ、と明るい声で紡ぎながら口端が釣り上げたように笑みを作った。ソファーの端に肘を置き、頬杖をついた彼女は俺でもないどこか遠くを見つめるように視線を浮かせ、愛を囁くようなうっとりとした声色で一人呟いた。





「ケメトとセフェクを殺させて、それからたっぷり可愛がってあげるんだから。」





ぞぞぞぞぞぞぞっと鳥肌が夥しいほど全身に及び、あれほど速かった筈の血流が止まったように身体が冷えきった。

目が逸らせずに身体だけが反応していると、手が違和感を覚えるように不自然にビクビクと動いた。その目にはプライドの紫色の瞳が恍惚と輝き、気持ち良さそうに揺れていたのがはっきりと見て取れた。

ヴァルは、プライドとの隷属の契約で彼女に逆らえれない。どんなに悍ましいことを命じられようとも、どんなに屈辱的なことを命じられようとも、どれほど拒絶しようとも身体が逆らうことは不可能だ。そして今、プライドは何を考えているのか。想像するだけで冷水を浴びせられたかのような冷たさと、全身を虫が這い回るような不快と嫌悪感に襲われた。

必死に冷静になるように自身に言い聞かせながら、拳を握りもう一度プライドに語り掛ける。もはや俺の知るプライドとは別物となってしまった女性が、別人格に乗っ取られているのではないかと本気で考える。

「プライド。……一体どうしたというのですか。何故、そのような残酷なことばかりを望まれるのですか。ッそれに、ヴァル達はもともと貴方が救った者達では」


「ええ?ヴァル達を助けたのは騎士団とステイル、貴方達じゃない。」

当然のように言い放つプライドが「馬鹿ねぇ」と笑いながら腹を抱える。俺を馬鹿にするように、……そして本気でそう言っている。

あまりのことに口を動かさず固まってしまうと、プライドは当然のことのようにまた語り出す。


「だあって。私は貴方達に助けられただけよ?な〜んにもしてないもの。計画を練ったのは貴方とジルベール宰相。戦ったのはアーサーと騎士団。アッハハ!私なんてヴァルを追い掛けて崖から落ちただけだもの!」

本当に馬鹿なことしちゃったわぁ!と笑うプライドは、一度だけ遠い目をし、裂けた口で嗤った。そのまま「たかが罪人と浮浪児が死んだところで誰が気にするの?」と笑う彼女に視界が真っ赤になる。駄目だ、これ以上プライドと会話をしては毒だ。

耐え切れず「もう結構です」と断り、俺は扉の方へ瞬間移動する。内側からかけられた鍵を開け、避ければ、勢いよく衛兵達が雪崩れ込んできた。

プライド様‼︎ご無事ですか⁈配達人達は無事か‼︎とそれぞれ心配は違えど、一気にプライドの部屋に溢れた衛兵達に俺が指示を出す。硝子の始末と代わりの硝子の嵌め直し。部屋の片付けと、……プライドを別室へ移動させ、見張れと。

配達人は無事に帰った。姉君が命令して暴れさせただけで彼らに責任はないと事実を衛兵達に伝えたところで、衛兵に囲まれたプライドが笑いながら俺に声を上げた。


「優しいじゃないステイル‼ヴァルのこと良く思ってなかったくせに‼︎︎やっぱり〝自分と同じ立場〟の人には優しくなっちゃうわよねえ⁈」

アッハハハハハ!と高笑いを上げるプライドに俺は眉を寄せる。

同じ立場?俺が⁇何故ヴァルと。そう思えば衛兵の隙間から大きな瞳を覗かせたプライドが、信じられないほど低い声で俺に言い放った。



「貴方のお母様も〝まだ〟生きてるものねぇ…⁈」



……身の毛がよだち、手のひらが信じられないほどに湿った。

凍りつくような感覚に思わず肩を硬ばらせる。息も止まり、唇を結んで固まる俺にプライドはにんまりと笑みを浮かべてみせた。


「ヴァルに感謝なさい?貴方で楽しめなかった代わりに彼が遊んでくれたのだから。」

アッハハハハハハハハハハハッ‼︎と最後に笑う彼女は、……もう本当の怪物にしか見えなかった。

意味不明な言葉の数々にぞわぞわと身体中が湿り、気持ち悪く疼き、俺は現実から目を逸らすように衛兵達に彼女を任せた。今はヴェスト叔父様や母上達に報告すべくその場を後にする。

早歩きで去りながら、未だに気持ちの悪い何かが身体中に纏っているようで息すら難しい。顔色に出ないようにと口の中を噛み締めながら必死に進む。


もう別の生き物にしか見えないプライドが、あまりにも衝撃的過ぎる反面。……もう一つの事実を認めてしまった途端に胸が抉れるように痛んだ。

あれほど今までのプライドと異なっていても、残虐で非道なことに手を染め続けていても、いくら常軌を逸していても



やはり、彼女はプライドだ。



『ヴァル達を助けたのは騎士団とステイル、貴方達じゃない』

人を救ったことに、……自覚がない。俺が知るプライドそのままだ。

当時の記憶もある、忘れたわけでも記憶が改竄されているわけでもない。本当に彼女はプライドで、……そのプライドが酷く歪んでああなっている。いっそ「私が助けてやったのだから殺すのも勝手でしょ」と言い放つか、記憶がともに抜け落ちていてくれれば、まだ別人だと何かに取り憑かれていると諦めきれず踠き続けていられたというのに。

彼女が全くの別物のように歪みきった怪物に成り果ててしまったことも、……だが確かにそこにプライドがいるということも。思い知らされる度に身体の内から裂けるような痛みが響き、不吉な拍動が音となって耳を侵した。手足が不自然に動こうとし、俺は纏わりつく違和感を払うように拳を握って力を込めた。


「ッとにかく。……報告を終えたらすぐに行かなければ。」

頭を無理矢理切り替える為にわざと声に出し、思考を潰す。

そうだ、まだやるべきことは残っている。プライドの補佐として、今の過ちも全て母上達に報告しなければならない。罰するべきことまで包み隠しては改善どころか更に歪みを広げるだけなのだから。そして、報告を終えたらレオン王子にお詫びをしなければ。瞬時に思いついた知り合いで、奴を匿ってくれそうな人物がレオン王子だったからとはいえ、一国の王子をこのようなことに巻き込んでしまうなど。だが、今は何より……


ヴァル達に、確実な対処をしておかなければ。


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