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【アニメ2期!】悲劇の元凶となる最強外道ラスボス女王は民の為に尽くします。〜ラスボスチートと王女の権威で救える人は救いたい〜  作者: 天壱
慢心侍女と敗北

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Ⅲ330.転落王子は決別し、


『エルヴィン、ホーマー。今のうちに己が過ちを省みよ……!』


どこから、何がバレたのかはわからなかった。

せっかく隣国へいなくなる筈だった兄の婚約を白紙にし、アネモネ王国にとどまることになったと知らされた。やっと兄がいなくなって正当な扱いを受けると思ったのに冗談じゃない。


『僕の方こそ兄としてお前達には何もできなかったというのに』

あの時、どれほど「その通り」だと吐きつけてやりたかったものか。

兄を騙すことも陥れることも難しくなかった。ラジヤからなら秘密裏に奴隷用の薬を買い付けることもできた。奴隷を捕える用の薬は、奴隷の産出は行っていないアネモネ王国では広く知られていない。俺とホーマーの本心にも気付かず、言われた言葉をそのまま飲み込み受け入れるような人形は、ワインに入れた薬にも気付かなかった。

大国の婚約者がいるにも関わらず酒場で夜に出歩き飲んだくれていれば、今度こそ父上も見限る筈だった。

しかし、全てはまた綺麗に兄へ都合が良いように転がった。

兄は周囲に認められ、父と母の盲信は変わらなかった。さらには大国の王女まで短期間で兄は手懐けた。たかが女の分際で偉そうに能書きを垂れる王女が出しゃばったせいで、俺とホーマーは投獄され国外追放された。


「……国王陛下より最後のご伝言だ。遠き地で己が」

「己が過ちを省みよ、だろ。……フン。最後まで父上らしいご立派な言葉だ」


いくぞ、と。ホーマーに声を掛け、船を言われるまでもなく降りる。アネモネ王国の船に乗るのもこれが最後だとわかった。

船に王族は一人も同乗せず、アネモネ王国の騎士と衛兵により連れられたのはアネモネ王国から遠く離れた地だった。

異大陸で、国に分類されない地と言われた通り、港もないただの海辺だった。地図も見せられず、船の中で食事の回数以外朝か夜かもわからない窓のない檻に収容されたせいで全くどこなのか見当も付かなかった。

背中で縛られた両手の縄を切られ、俺とホーマーだけが下ろされた。身分を剥奪された途端俺達に手の平を返し偉そうにふんぞり返る騎士と衛兵達は、もう顔も覚えていない。

ただ、船の中で何度か覚悟したような騎士達からも報復や拷問には合わなかった。国外追放と名付けて結局は殺すのではないかとも思ったが、すんなりと逃がされたことだけは意外だったとも言える。

「東は山岳が続いている」という忠告だけを受け、俺とホーマーは何も宛てがないまま南へ向かった。奴隷落ちか国外追放と選ばされたが、やはりこちらで正解だったと思った。アネモネ王国で下民に嘲笑されながら生きるのと、あのレオンのいない地で勝手に生きていくのならば比べるまでもないと。しかし結局、……奴隷落ちと大差はなかった。


「何故この俺達がこんな目に遭わなければならない!?」

自由な部分も勿論あった。今までレオンや父や周囲の目ばかりを気にした言動も全て不要になった。拾った塵を地面に叩きつけようとも、味の悪い果物を吐き出そうとも誰にも咎められる恐れはない。


俺とホーマーが辿り着いたのは、寂れた田舎町だった。

民家のある地にたどり着けただけ助かったとは思ったが、井戸の数は町全体でたったの一つ、公共の水場は一時間以上歩いた先の小汚い湖と呼べない小さな池という始末だ。

今まで王族として相応しい食事しか食べてこなかった俺達にとって、檻の中以下の食事というものはそれだけでも拷問に近かった。この時既に、奴隷だったら食事ぐらいは無条件で与えられたなと一度思った。

身分を剥奪されたとはいえ高潔な王族であるこの俺達が何故粗末な食事など口にしなければならないなどと、いっそ空腹の方がマシだと井戸の水以外口にしなかった日もある。三日もすれば生活に嫌気が差し、食料と水を確保次第次の町へ向かうことを決めた。

町の人間と会話をしたいとも思わなかったが、幸いにも俺もホーマーも理解できる言語だった。尋ねれば南へ四日ほど歩いたところに大きな街があるということだけは知れた。

街に行けば少なくとも田舎よりは良いものが揃っている筈だと、田舎町を出た。馬でも使えれば良かったが、金など持っていない俺達が買えるわけもなかった。いくら歩いても進む距離はたかがしれている中、最初の一夜目で野宿にあけくれたところで



奴隷狩りに、捕まった。



「どっちも顔は整ってるじゃねぇか」

「こりゃあ高く売れるかもしれねぇぞ」

人身売買。俺のいたアネモネ王国もまた奴隷容認国ではあるが、奴隷の売買もアネモネ王国の民を刑罰でもなく奴隷にすることも禁じられている。当然、違法である奴隷狩りも人狩りもその数は少ない。

地図もまともに流通していない町で、必要な情報収集しかしなかった俺達はそこで初めてこの地帯が裏家業達の巣窟だと知った。あんな田舎町でくすぶっている人間が多い理由もそれかと、遅れて理解した。寝ているところを襲われ、あっという間のことだった。


顔がフリージアにも近い顔つきだと言われたが、誇り高い俺達の血にそんなもの微塵も混じっていない。

ホーマーと共に荷車に放り込まれ、もし特殊能力者なら名乗り出ろと言い放たれた。中級と上級、そして特上級では奴隷としても扱いは違う。フリージアの血を引いていれば中級は間違いないが、下級奴隷になどなれば死んだ方がマシな生活だ。

等級による奴隷の扱いや値段の違いは俺もよく知っていた。いつ処分しても良いような使い捨てる奴隷は下級、そして上級や特上の奴隷ならば主人によってはまともな食事や部屋、最低限の財産が許される場合もある。俺とホーマーも、兄を酒場に捨てる為に使い捨てたのは下級奴隷だ。立場も低く、たとえ途中で見つかって捕らえられても雇い主が王族だったなど言おうと誰も信用しない。


「あに……兄様(にいさま)、どうしますか?アレを言えば上級ではなく……」

「ッ言いたければお前一人が勝手に言え。まだ兄弟だとバレてないんだから勝手にしろ」

荷車に揺らされながら、逃げることよりも自分が奴隷になることを受け入れだしていた役立たずのホーマーに腹が立ち、それ以上は会話も俺がしなかった。ここに来るまでも全部俺一人が決めさせられて、奴隷狩りに捕まっても尚聞いてくることにうんざりした。

裏家業連中の前では俺を「兄君」とも「エルヴィン兄様」とも呼ばなかったホーマーは、奴隷となってからの俺達の市場価値程度はわかっていた。


俺達は、王族だ。たとえ身分を剥奪されていようとも、その事実は奴隷としては等級に強く影響する。

アネモネ王国の王族と言えば、特上は間違いない。連中からは絶対逃がさないようにと監視の目も厳しくなるだろうが、同時に売られる先もいくらかはまともになる。俺もホーマーも兄が際立っていただけで、奴さえいなければ女に困らない容姿ではある。良くて婦人の飼い奴隷か収集品か。少なくとも、田舎の町でくすぶるよりはきっと楽な生活だと思えば、ホーマーがそちらに揺らぐのも理解はできた。

荷馬車から暫く、そして今度は貨物船に乗せられた。日の光のない空間で今度はまともな食事もなく何日も何日も波に揺らされた。

やっと久々の地上につけば、また荷馬車へ詰め替えるように乗せられて長い期間運ばれた先で屋敷に辿り着き……もう抵抗自体を忘れた頃。


結局、奴隷狩りから奴隷商人へとホーマーだけが〝アネモネ王国の王族〟として売りつけられた。


「まさかアネモネ王国の王子だったとはなぁ!」

「ははっ良い拾い物したぜ!高く買ってくれよ?アンタとは長い付き合いだろ?!」

「おい特上だ!!丁重に地下に入れておけ!」

俺は、言わなかった。いくらかはまともな生活だったとしても、奴隷であることは変わらない。せっかく国外追放を選んだというのに、この先永久に奴隷として「落ちぶれたアネモネ王国の元王子」と蔑まれることなど死んでも嫌だった。

あの忌まわしい過去を知られるくらいなら、このまま従者として売り飛ばされる方がマシだった。いい加減、ホーマーから離されるのも都合が良い。同じ買取先でも、等級が違えば馬車でも檻でも場所は変わる。これで今度こそアネモネ王国の痕跡全てを捨てることができると開放感も、……少しはあった。

縄を引かれ馬のように連れられていくホーマーが、視界の端から消えるまで何度も何度もこっちに目を向けてきたのも虫唾が走った。

従者と判断された俺は、それでも容姿と文字の読み書き以外にも教養もあるからと上級の奴隷に入れられた。隙を見て逃げだそうにも、上級の奴隷も特上ほどではなくとも拘束は厳しくなり、荷車では縛ってまとめて放られるだけだった立場から、奴隷商では個別の檻で壁に鎖で繋がれた。売り出されるのは明日、それまで足手まといのホーマーがいない分まだ逃げ出す可能性はある筈だと考えていた時。





鼓膜を破る破壊音が、天井を揺らした。





牢獄まで聞こえる野蛮な声。裏家業同士の抗争かと考えながら、これを好機と思う。

繋がれた鎖をなんとかできないかと手足を交互に引っ張ってみたが、やはり外れない。さっきの振動でカギがこっちに転がってきていないかと、暫くは牢屋の外の壁に目を凝らし続けた。

その間、破壊音も衝撃も止まることを知らず、何人もの野太い絶叫が繰り返された。いっそこのまま共倒れになってくれれば良いとも思うが、そうなっても逃げる方法がなければ飢え死にだ。

あいつらが商品である上級奴隷のところに来るまでに逃げられればと、考えられる手は尽くす。考えるのは俺だけではなく他の奴隷達も挙って暴れ出していた。こんな連中よりも早く俺が誰よりも先に逃げてやると奥歯を食い縛った。


しかし、とうとう檻まで足音が近づいてくれば一番最初に暴れる手を止めたのも俺だった。抵抗したなどと知られれば動物頭の連中にどういう目に遭わされるかもわからない。

足音を聞くだけで、大股に歩いているとわかった。図体のでかさまで想像できた相手を口を閉じて迎え見据えたが、扉が開かれた瞬間。


……まさか、翼が生えていることまでは想定外だった。


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― 新着の感想 ―
こうして、ホーマー達と出会ったんですね。
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