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【アニメ2期!】悲劇の元凶となる最強外道ラスボス女王は民の為に尽くします。〜ラスボスチートと王女の権威で救える人は救いたい〜  作者: 天壱
来襲侍女と襲来

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Ⅲ309.騎士団長は判断する。


「どうか、ご許可を。刻一刻と事態は悪化している可能性があります」


そう、フリージア王国騎士団長は低めた声で再び迫る。

ロデリックによる深刻な表情と高身長で見下ろされ、警備責任者の一人である兵隊長は表情だけでなく顔全体を強張らせた。鍛え抜かれた喉から太い音が落ちる中、しかしまだ肯定は返せない。自分一人で判断するにはまだ確証が足りない。


王国最大の催しである大規模オークション。

世界各国から参加者が収集されるとはいえ、開催国であるミスミ王国の権威は他国と比べてもこの場では強い。たとえ急を要する異常事態であろうともそれは変わらない。フリージア王国のみならず、多くの国々の兵団騎士団がミスミ王国兵団に詰め寄っていた。


オークション会場の扉が突如として閉ざされてしまってから。


予定にはない会場の締め切りという異変に、最初に気付いたのは当然ミスミ王国の警備だった。

内部の者に尋ねようとも、扉は叩いても呼びかけても返答はない。もともと来賓の安全を守る為に内側がら立てこもることができるほどの強度を誇る扉はどうやっても外側からは開けない。このようなことは聞いていない、打合せとも異なると首を捻りつつも最初は警護隊も大ごとにはせず水面で動き続けた。

急遽の演出により、内部にいるスタッフが国王の命令により扉を閉じた可能性もある。単なる扉の不備である可能性も捨てきれない。少なくとも外部を警備している中では、何の不備も不審人物の報告もなかったからこそ決断を焦るわけにはいかなかった。


多国が参列する大規模オークションを成功させる為には、まず水面下での解決が大前提。観客や外で見張っている護衛隊に気取られることなく解決することが最善とされる状況下では無理矢理扉を押し破るなどできるわけがない。

内部の状況に確証を得られるまであくまで水面下で動くことが望ましい。

なんとか会場の扉を開くことはできないのか、もしくは内部のスタッフや警備と連絡を取ることはできないか、せめて内部の状況でもわかればとスタッフ関係者や警備が動いたが、各国要人を守る為の鉄壁の会場は密室を簡単には崩さない。スタッフ専用の通用口や極秘の非常口も試みたが、どれも外部からの侵入を防ぐ為に一方通行の構造となっていた。


そして時間が経過すればするほどに、当然のことながらミスミ王国側の不穏は優秀な護衛や警備達にも読み取られてしまう。

フリージア王国騎士団長であるロデリック以外にも、複数の護衛代表者が詳しく話を聞こうと建物の前まで詰め寄っていた。しかし、ミスミ王国の警備責任者が許可を下ろさない限り、彼らも勝手にロビーに突入することは叶わない。ロビーを前に受け付けで立ち止まるしかなかった。

自分達の主君に恥を掻かせない為にも、強行手段に出ることはできない。

しかし同時に、自国の主君の安全こそが最優先でもある。


「どうか、正直にお教え願いたい。先ほどから何を揉めておられるのか」

ミスミ王国の警備と異なり、来賓の警備隊はその殆どが同行されることなく会場である建物の外周に控え、警備体制を取っている。内部の情報はミスミ王国の警備に共有してもらうしかない。

既に不穏を感じ取ってから、短いとはいえない時間が経過していた。不穏を感じ取った護衛から他の護衛にも不穏を気取られ伝染し、どこの護衛隊も同じ問いを繰り返してはやはり同じ言葉が返答される。次第には会場に何かあったのではのみならず「ミスミ王国が大規模な人質や戦争行為の為に要人達を監禁しているのでは」という疑いまでが少なからず湧き出していた。

あくまで表面化で収めたいミスミ王国の警備隊が顔色まで悪くしていく中、王族不在で彼らに強く出ることができる次点こそがミスミ王国よりも力を持つ大国の所属護衛隊である。


「大ごとにしたくないお気持ちはわかりますが、会場には我が国の女王陛下、摂政殿下、第二王女殿下もおられます。我らが王族の安全を確認できないのであれば、こちらも黙ってはいられません」

特に、大国フリージア王国騎士団の権威は強い。

他の大国やミスミ王国以上の権威を持つ国々の所属隊も前に出る中、白の団服の存在は際立っていた。あくまで強行手段ではなく相手の理解を求めるロデリックだが、それでもフリージア王国騎士団までここで敵に回せば、最悪の場合戦争もあり得るとミスミ王国の警備隊も安易に無碍にはできない。

いえしかし、まだ確認がとれてから、もう少々お待ちくださいと言葉を重ねるが、ロデリックもそれで納得できるわけがない。異常事態であると判断できる以上「許可を得られなかったから」という理由で王族の危機に駆けつけないなど、騎士としての恥だと判断する。


「どうか、ご決断を」

更に威厳を重ね、低めたロデリックの声に上から押しつぶされるような圧迫感を覚えながら歴戦の警備隊長はまた喉を鳴らす。紛争地帯での戦闘でも感じたことのない圧だった。

騎士団長だけでなく隊長格も並び睨みをきかせる中、何十分も時間を掛け言葉を重ね続けるロデリックも表情には出さずともじりじりと限界を感じていた。予定通りであればまだオークション時間内、しかし昨夜プライド達から共有された情報と今も会場の水面下で何が行われているかを知っている身としてはこの場の誰よりも事態を重く受け止めていた。自国の催しで問題を起こせないという相手の警備隊長の立場もわかる以上、少々手荒でもここはもう少し強引に言葉選びで誘導するか、もしくはフリージア騎士隊から別働隊を編制するかも視野に入れる。ミスミ王国警備隊にも気付かれないように、内部状況を探る方法はいくらでもある。

そしつ「わかりました」と、目の前の警備隊長の了承を諦める言葉を深く長い溜息と共に告げようとした、その時。


ヒラリッとカードが表出した。


「!」

視界から突然振ってきたそのカードに、高身長のロデリックは警備隊長に気付かれるよりも前に素早く掴み取った。虫を潰すような短い動作で鎧の手に隠す。

騎士団長の素早い聞き手の動きに、警備隊長は思わず剣を抜きかけた。「失礼致しました」と謝罪されたところでほっと肩を下ろし剣を手放せば、ロデリックも礼をして一度下がる。カードの所在こそ確信したが、どのような内容かはまだ読めない。差出人がいるのは会場ではなくその足下であることも知っている。


他の国の護衛代表者達が代わりに詰め寄っていく中、ロデリックは二歩下がった位置で掴んだ手を解いて確かめた。

握りつぶされグシャついたカードだが、中身を読むには問題無い。それよりもまだインクも乾ききらない内に瞬間移動されたせいで、一部文字が滲んでいた。

眉間を狭め書き殴られた文字を読み取ったロデリックは、……直後に大きく目を見開いた。何が書かれていたのかを他の隊長格も潜めた声で尋ねる中、ロデリックは一言返しまた足を進ませる。ダンッ、と地を踏む音だけで詰め寄る護衛代表者達を振り返らせた。

今度は飲み込む余裕もないほどに、眼前へと迫るロデリックに警備隊長は喉を干上がらせる。今まで自分に詰め寄っていた彼は、まだ威圧的に振る舞っていたわけではなかったのだとたった今理解する。


「今、我がフリージア王国の()()()()()()知らせがありました。……会場が今、大勢の裏稼業を含む侵入者で占拠されていると」


一度握り潰したカードを読みやすいように開く。名前のサインもなく、必要事項のみ記載されたカードを、第一王子からではなく部下からとして彼らに掲げ示すロデリックは蒼の眼光が鈍く光っていた。身に纏う静かな覇気に傍にいる隊長格すら張り詰める。

つまりは自分達が異変に気付いてから今に至るまで、そしてそれ以上の間、自国の王族は危機的状況下にあったことにそれだけでもロデリックの冷静な身に熱が灯る。

「今すぐ」とその言葉を飲み込み、騎士団長としての言葉を選ぶ。目の前に集まる他国の護衛代表者も、そして詰め寄られ続けた警備隊長すらをも驚愕に目を見開き顔を青ざめる中で、誰一人ことの深刻さを正しく理解している者はなかったと思案する。


「……陛下並びに我が国の王族の危機と知った今、我々も黙ってはおられません。観客救助の為、建物内立ち入りの御許可を」

たとえ頂けずともと、そう今度は声に出し告げた。

その言葉に、一度は気圧された他国の護衛代表者達も同じ眼差しで警備隊長を捉え直した。フリージア王国だけではない、自国の王族もまた同様の状況下であることに指を咥えていられる者などいない。

ロデリックのみならず全体からの覇気が膨らみ、一歩も譲らぬ覇気に警備隊長はとうとう肯定を喉から搾り出した。


ただ代わりに、この場の中だけの話に留めて欲しいと公表を制止する言葉にロデリック達も了承する。

あくまで隠蔽ではなく、混乱を避けるべく口を閉ざしたロデリック達護衛代表者達を連れ、警備隊長は会場建物へと歩き出す。


自分の許可の元、建物から受付を通しロビーに入る。

固く閉ざされた分厚い扉の並びには今も大勢のスタッフや警備が静かに奮闘をしていた。他国の護衛隊を複数引き連れた警備隊長に一度は目を剥く彼らだが、事情を聞けば血色まで変えていく。

開かない扉に張り付いていたスタッフ達も一度手を引き離れ、場所を譲る。大勢の用心を人質にとられ会場占拠となれば自分達の手に負えるものではない。


変わらず扉は固く分厚く、そして内部の音は殆ど拾えない。会場に繋がる殆どの扉がそうであることを説明される。

占拠側の要求も未だなく会場の状況がわからない今、目的が大量殺戮である可能性も大いにあり得る。少なくとも現時点でテロ行為であることは断定された。

壊して入るなら正面の扉群よりも非常用避難口の方が比較気づかれにくいと助言を受ける中、各護衛代表者達が考えを巡らせる。刺激して人質に危害を加えられ、もしくは自爆などを行われるのだけは避けなければならない。


スタッフ通用口と非常用出口も続けて回り込むが、どちらも突入には適さない。

避難口は一度に通れる人数は多いが、隠されているだけで人の目には付きやすく破ればすぐ侵入者にも気づかれる。スタッフ通用口は気づかれにくい位置にあるが、狭く突入には不向き。

避難口も一つしかない以上、どうせ気付かれるのならばやはり正面扉全てを一斉に破り突入した方が良いのではないかと意見も出る。そのうちの別動隊を避難口とスタッフ通用口に回せば良い。主催国であるミスミ王国の他に、現状を正しく把握する四カ国分の護衛代表者が立つ中、その隊を動かすだけでも充分に会場を埋め尽くすほどの数にはなる。

まずはスタッフ通用口を破壊しこじ開け、内部の確認を可能な限りと話が進行した時、フリージア王国騎士団長が頭の位置で挙手をした。



「我々が」と。



各国陣営の顔を立てつつも、最善は自軍の騎士だと驕りなしに判断した。

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