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【アニメ2期決定!】悲劇の元凶となる最強外道ラスボス女王は民の為に尽くします。〜ラスボスチートと王女の権威で救える人は救いたい〜  作者: 天壱
来襲侍女と襲来

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2319/2320

Ⅲ272.来襲侍女は立ち止まり、


「……どうやらオスカーのことではないみたいね……?」


ネイトの発明と共に騎士達の中心で気配を消しながら、なるべく小声で投げかける。

マートと共に去ったオスカーを見送ってから、退散する為に来た道を戻っていた私達だけれど、灯りがある住宅街の方に近付けば近付くほどに夜中とは思えないほどに住民がざわついていた。唇を結んで耳を澄ませれば「レオナルド」「首領」という言葉がいくつも聞こえてきたから、やはり彼のことだということはわかったけれど逆に「毒の犯人」や「井戸」みたいなオスカーに関わるだろう単語は全く聞こえてこなかった。

「そのようです」とステイルもゴーグルの端を押さえながら周囲を気にするように見回していた。人混みに紛れるように歩き、とうとう騎士達が周囲と肩がぶつかるくらいに人口が密集してくれば、彼らの会話もはっきりと拾えるようになってきた。


「どうすりゃあ良いんだ聞いてねぇぞ……」

「私達は残って良いのよね……?!」

「せっかく首領が帰ってきたと思ったのによぉ、全面戦争なんざ聞いてねぇぞ」

〝全面戦争〟

その言葉が聞こえた瞬間、思わず真正直に声のした方向に振り返った。聞き違いかと思いたかったけれど、私だけでなくステイルや騎士達も目を向けていたから間違いない。一度その単語を聞き取れてしまったら、更に周囲からも同じような言葉がいくつも拾え出す。「全面戦争」「戦争」「衝突」とどれを取っても全く穏やかではない。

貧困街の問題ならと素通りするつもりだったけれど、これは流石に聞き捨てならない。人混みを抜ける為に早足にしていたところを、今度はゆっくりと全体で足並みを落として耳を立てた。オスカーの件で知られているところで「何かあったんですか」なんて藪から蛇を突くことにもなりかねない。ここは尋ねるとしても彼らではない、レオナルドに聞いた方が良い。どうせ首領テントも通る先だ。

足並みをゆっくりと、人混みの中を抜ける。すれ違う誰もが焦燥や戸惑いを隠せない様子だった。私達以外は全員が知っている話題らしく、今更「何があったんだ?」と尋ねる人もいない。子どもすら「やべぇ!」「俺も行きたい!」「ばか死ぬに決まってんだろ!」ともう共通の話題としている。


「……レオナルドによる騒ぎで間違いはないようですね」

「つーか、何度か〝避難誘導だけ〟って聞こえましたけど」

「女性や子どもは貧困街に残るそうです。全員に武器を取らせるという意味ではないようですが……」

「〝首領〟が二つ混じっていますけれど……負傷したとか交代とか。件の収容所はあのまま壊滅するとレオナルドはわかっていないのでしょうか」

「あーどうだろうな気絶したし。ていうか明日って今聞こえなかったか?なぁハリソン、ロドニー」

「聞こえた」

「幹部が集められているとも聞こえたな」

ステイルを初めに、アーサー、カラム隊長、エリック副隊長、アラン隊長。続いてハリソン副隊長とロドニーも聞き拾えた情報を私に聞こえるように共有してくれる。……もう不穏な気配しかしない。

ヴァルも何か聞き拾ったかしらと振り返れば、一番後方を歩きながら周囲には気を払っているようには見えた。騎士達を挟んで距離が離れているから今は会話は難しいけれど、もの凄くめんどくさそうにすれ違う人達へ顔を歪めているからやっぱり良い情報ではないのだろう。むしろ一悶着と顔に書いてあると遠目にも思ったら、視線に気付かれたのかちょうど目が合った。途端にぐっと眉間の皺が更に狭められて凶悪な顔付きが更に眼光が鋭くなる。何故いま私に向けて睨むのか余計に気になった。


渦中だろう首領テントの前まで戻れば、人が密集し過ぎて通るだけでも苦労した。まるでライブ会場のように人と人が密着したまま一方向へと意思を持って立ち止まっている。完全に通行止めだ。

このまま時間を掛けて出口に進むか、それともエルドかレオナルドに事情を聞くかの選択に一度立ち止まる。ざわざわと人の声が混ざって耳が塞がれるけれど、それでもレオナルドの声が聞こえればその度に全体が一度口を閉じ聞き入った。

最後尾といっても良いほどレオナルドのいる首領テントからは離れたままだけれど、それでもレオナルドの堂々と通る声はなんとか拾うことができた。

「何度でも言うぜ?」とあの笑みが目に浮かぶような余裕たっぷりの声色だ。本当は今も横になっていて欲しいくらいなのに、どうやら人前に立ち続けているらしい。それ自体は意外ではないけれども。


「お前らはあくまで避難誘導だ。後は今までと変わらねぇ、暴れるのは全部俺一人がやってやる」


暴れる、とは。

今の発言だけでもう足を止めるしかなくなった。レオナルド本人からの全面戦争発言という時点で想定はできたけれど、ちょっと待って。貴方明日我が国に同行するって言ったわよね?!!

ちょっとあまりにもの発言に、どういう状況なのか視界でも確かめたくてつま先立つ。背は女性としてはかなり高い方ではあるけれど、前方にがっしりとした男性達も大勢いるからレオナルドの声は拾えても姿は全く見えない。顎を大きく反らす勢いで、そのままぴょんぴょんと小さく跳ねたけれど当然ながらチラチラ見えるだけだ。

ステイルが見かねて「前に行きましょうか」と提案してくれる。マナー違反ではあるけれど、確かにそれが一番良さそうだ。もう、ここまでだけで対岸の火事と思える域を超えている。ステイルに頷きで返したところで、騎士達が動きだす。人混みを抜ける時と同じ、肩や腕を使ってなるべく平和的にかつ強引に道をねじあけてレオナルドの元へと進



ボコボコボコォァッ!!



……これは。

なんだ?!きゃあっ!と悲鳴が重なる中、突如として眼前で人の波が二手に分けられる。二日目にも見た、ヴァルの強制道開け技だ。

一本の地割れが起きたことで、足下の異変に気付く誰もがその場から左右に跳ね逃げる。お陰で海を割ったかのように人混みに一本の道が開けられた。既にヴァルの手法を知っている私達は驚くだけで避けることはなかったお陰で、振り返った人達の注目を浴びながらまるで私達の為に開けられた道のように錯覚しそうになる。

ちょうど先頭を押し開き始めてくれていたアラン隊長とエリック副隊長の足下から亀裂が走っていたから、最後方にいるヴァルではなく彼らが亀裂を作ったように見えてしまった。

全く合図もなく突然の特殊能力にもう一度彼へと振り返れば、今度はすぐに目が合った。ただし、自分がやりましたと手を上げるまでもなくまるで他人事のように顎で前方を示された。さっさと進め、と言いたいのであろうことは嫌でもわかるけれども!!


「よーお、テメェらまだ帰ってなかったのか」

集まっていた人達が地割れと原因らしい私達へ騒然とする中、気楽な調子でレオナルドの声が掛けられた。

前を向けば真っ直ぐに開けられた地割れ混じりの道に、レオナルドが仁王立ちしている。地割れにもそこまで驚く素振りがないのは、やはりフリージアの騎士が一緒だからだろうか。レオナルドが私達に呼びかけたことで、二手に分かれた道がそのまま維持される。「進みましょう」とステイルの促しに応え、私達は開けられた直線距離を進む。

恐ろしく視線が刺さって、騎士達の中に紛れているとはいえそれでも私やステイルにもいくらか視線の熱が刺さっているのを感じて唇を絞る。仕方ない、もう仕方ない。ヴァルが珍しく協力的なのだからここは目を瞑ろう!!

地割れのせいで少しだけ歩きづらい道を、アーサーが肩に腕を回して支えてくれた。侍女役なのにと思うけれど、主人役のステイルならまだしも騎士のアーサーなら良いだろう。女性であることは変わらない。お陰で足下を気にせずに視線を上げてレオナルドを見据えられた。

アラン隊長とエリック副隊長が引き続き先頭を進み、その後にステイルが続き彼へ「騒ぎが聞こえましたので」と通る声で返した。


「どういうことでしょうか。全面戦争とは」

「気にすんな。お前らフリージアには他人事だろ?」

直球のステイルからの問い掛けにも、平然と笑い返すレオナルドは全く焦る様子もない。

幹部も道を空けてくれる中、レオナルドから二メートルほど距離を置き立ち止まる。包帯からうっすらと血がさっきよりも滲んでいるのが、幹部が持つランプの明かりでわかった。更には、……エルドが。

えっ!?と気付いた瞬間口を片手で覆ってしまう。レオナルドから少し離れた場所で、エルドがぐったりと倒れていた。ホーマーや他の幹部が傍に付いているから大丈夫だろうけれど、顔から胸元までにべったりと血の跡がついていた。苦しそうな表情でこちらに向いていて、意識があることにほっとする。一体何があったのか。まさか敵襲でもあったのかと思うけれど、そういった痕跡は全く無い。第一、レオナルドがいたなら敵襲も大概は撃退できた筈だ。

「他人事ではありません」と、ステイルが鋭い声でレオナルドに返すまで、まさかの怪我人に目が離せなかった。


「解放した貴方に犯罪を行われれば、責任問題として騎士団に迷惑がかかります。最悪の場合、国際問題にもなり得ます」

「そんなの知るかよ。ここはラジヤだぜ?お前らの国で暴れるわけでもねぇ」

「件の約束。……保証どころか貴方を捕らえることになります。詳細は知りませんが、内容によっては今この場で〝現行犯〟で正式に捕縛することにもなり得ます」

「相手が人身売買に関わるクソ共でもか??」

ン、と一拍分ステイルの返事がそこで止まる。人身売買、と聞いて思い出す組織はステイルも私達と一緒だろう。

我が国であれば、その言葉だけで充分に傾聴の価値はある。ただしここはラジヤ帝国だ。人身売買は、残酷ではあるけれどこの国では合法だ。奴隷という存在が認められている以上人身売買というだけでは判断できない。

いくら他国のことでも、解放した翌日に暴動騒ぎでも起こされたらフリージア王国が野放しにした責任を問われかねない。それこそ第二戦争の引き金だ。

件の約束、とわざわざステイルが人前を鑑みて言葉を選んでくれても全く怯む気配もない。むしろ織り込み済みといった反応だ。…………。織り込み済み…………?

次の瞬間、思わず息を飲む。まさか、この人最初から?!!

「そういうことですか」と私より一手早く結論に辿り付いたのだろうステイルが溜息を吐く。ゴーグルを指で押さえ付けながら眉の間を狭めるのがわかった。


「言っておきますが、フリージア王国の保護は罪人には適応しません」

「裁くのはフリージアで、だろ?」


っっっやっぱり!!!!

間髪入れず返すレオナルドに、肩が上がり自分でも目が見開かれていくのがわかる。最悪だこの人!!!

一気に、救出直後の発言と目を覚ました後の発言の理由を理解する。矛盾ではなかった。彼の目的はずっと変わっていない。


『俺はフリージアにまだ帰る気はねぇ。ここを出たらパパッと話を済ませて離してくれ』

『片付けることがあるからよ、それだけ終わらせたら合流ってことで良いだろ』


つまり、彼の言う〝全面戦争〟の後に我が国に逃げ込もうとしたわけだ。

「バッドエンドから一年後~誰にも期待されない魔法使いの私が、伝説の精霊魔法使いに実力を認められ王子を救う~」 略して「バドいち」連載中です。




第二章まで完結しました!!!


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こちらも是非よろしくお願いします。

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