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【アニメ2期決定!】悲劇の元凶となる最強外道ラスボス女王は民の為に尽くします。〜ラスボスチートと王女の権威で救える人は救いたい〜  作者: 天壱
来襲侍女と襲来

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2311/2312

《祝!Season2アニメ放送とうとう前日!!》騎士は武勇伝を聞きたい。

ラス為アニメの2期がとうとう明日放送致します!!!!

感謝を込めて書き下ろさせて頂きました。

急ぎ書き下ろしたので拙い部分もあると思いますが、感謝が伝われば幸いです。


─ 落ち着け、落ち着け、落ち着け


音にならないように意識しながらも、騎士はフーーーッと息を吐き出し呼吸を深くする。

今回の任務を任命された騎士達は、それぞれが控える位置から標的の建物を見据える。騎士団本部でもある騎士団演習場にも距離的に近い、城下に位置する武具商館だ。

約半年前から城下で店を構え武器を格安かつ大量に売買し、開業して早々に城下で固定客が付くほどに繁盛していた店だが、商店やその付近で怪しい荷車の行き交いを深夜に見回りの騎士が目撃していた。調査を行えば人目を避けた裏家業らしき人間の出入りも多く、更には民からもこの付近での行方不明者捜索の願いがいくつも届いている。恐らく商館で違法取引、誘拐から人身売買を行っている可能性も高いとして、今回騎士団による捜査と討伐任務が決定した。

任務内容は商会の実態調査と、裏家業の確保と討伐。被害者や盗品の捜索。そして、周囲の店や家に被害を出さないようにと騎士団長からの命令に、騎士の誰もが緊張感を持って配置についていた。一度戦闘が激化もしくは逃亡を許してしまえば簡単に被害が広がるほどに、その商館は周囲とも近接した場所に建てられていた。

今も、突入する前にとまずは建物の包囲に迅速かつ建物内の警備に気付かれないようにと気を払う。その中でも特に緊張感を隠しきれていないのが


「よっ。大丈夫か?エリック」

「ッはっはいアラン副隊長……!」

先月入隊したばかりの本隊騎士エリック・ギルクリストは、突然背中を叩かれそれだけでも声を思わず上げないようにと歯を食い縛った。

入隊してひと月経つが、大規模任務に参加するのは今回が初めてである。もともと大規模任務にも抜擢されやすい一番隊だが、その中でも先月入隊したばかりの新入り騎士が今回は班に組み込まれたのは騎士団演習場からも距離の近い城下であったことも大きい。しかし、いくら厳しい試験を通って本隊騎士に選ばれた隊員であろうとも、ついひと月前まで新兵だった騎士に何も補助を付けない一番隊でもない。そして今回、新入り騎士が同班に所属されたのは若き副隊長アランの所属する小隊だった。

今もエリックの顔色を伺い声を掛けたアランは「大丈夫大丈夫」と軽い口調で言いながら、歯を見せてニカッと笑ってみせる。


「建物はでかいけど、今回は特に安心な布陣だし、そんな気を張らねぇでもなんとかなるって。三番隊と連携で、しかもカラムもいるし、前も後ろも安全だからさ」

むしろ、たかが〝容疑〟でしかも〝包囲しやすい建物一つ〟に関わらず贅沢な布陣だとアランは思う。だからこそ、隊長も新入りであるエリックを経験として今回班にいれたのだともわかっていた。一番隊だけではない、エリックと同期の騎士でもある七番隊の騎士も同じように上官を含めた先輩騎士と共に配属されている。三番隊も一番隊も、そして七番隊からも隊長格が率いた任務であり、建物を包囲できる人数の騎士を出動している、下手な小規模任務よりも遙かに安全性の高い任務だ。


カラム、とその名を聞けばエリックも思わず口を閉じ、三番隊のいる後方にと自然に目が向いた。

若き副隊長であるアランと同世代でありながら、既に騎士隊長を任されている三番隊騎士隊長もまたここに来ているのだと、それだけでも心強さが更に確固たるものになるのを実感する。合同演習で何度か間接的に共に演習を行ったこともあれば、新兵の頃は気をかけ無理をしないようにと声を掛けてくれたこともある騎士隊長だ。

一つの任務に三隊もの隊長格がずらりと関わることは大規模任務の中でも珍しく、それだけ勝利は間違いないとエリックは今日までも何度も自分に言い聞かせてきたことをまた頭の中で繰り返した。


「!行くぞ。エリック、俺らから離れるなよ」

はい、とその声もエリックは思わず気合いのままに張り上げかけ、直前に飲み込み頷いた。まだ、騎士は全員潜伏中だ。

気配を消し商館へ一番隊は真正面から突入する。門兵の衛兵に阻まれながらも、難無く押し入り門をこじ開け扉を叩き、開かれたところで強引に中へと入る。一番隊隊長が正面門から騎士を引き連れ突入する中、副隊長アラン率いる小隊は裏口から同様の突入だ。

商館員や従業員を含める使用人から「なんですか?!」「やめてください!」と騒がれながら、今はなるべく危害を加えない方向で押し入っていく。アランも、部下達の動きに神経を張り巡らせながらも周囲の異変に気を配る。今回の任務は制圧ではなく調査である分、騎士の方から決して手を出すわけにはいかない。


パァンッ!!と乾いた音が最初に鳴り響くのは、正面門の方からだった。


アランも、他の騎士達も目を見開き、騎士隊長の小隊が突入した正面門へと意識を向ける。更にはその音が合図になったかのように、今度はアラン達のいる裏口側からもドタドタと乱暴な足音が聞こえてきた。「今のはなんだ!!」と野太い声を上げる男達は、誰もが武器を当然のように掲げて現れた。その人数よりも、エリックは彼らの武器の方に目を剥く。殆どの男達が、銃を掲げている。裏家業でも所有することは難しいとされる銃を、全員など軍ほどの規模でなければ珍しい。しかし、考えれば当然でもあった。その商館そのものが、武器を取り扱う店なのだから。

ドタドタ出てきた男達はすぐにアラン達に気付き、ぎょっと顔を歪めた。「騎士だ!!」と一人が声を上げた瞬間、引き金を引いた。馬鹿やめろと冷静な仲間が叫んだ時にはもう遅かった。

エリックは思わず床を蹴るのと、同時にアランからも肩を掴まれ幸いにも二人揃い同じ方向に飛び退いた。他の騎士達もそれぞれ銃弾を避けたが、明確な攻撃意志に次の瞬間には騎士も武器を構える。回避は足並み揃ったエリックも、武器を抜くタイミングは一拍先輩騎士より遅れた。

武器を捨てろ、これ以上は処罰の対象になるぞと声を上げる騎士に、男達は「うるせえ!!」と倍量に声を荒げた。自分達のところに騎士が乗り込んできた時点でバレたも同然、皆殺しにするまで暴れるか逃げるかしか道はないと考える。


『伝令ーッ!!発砲と人身売買を確認!!〝調査〟から〝掃討〟に移行せよ!!』

ガン、と殴るような声量は拡声の特殊能力者だ。アラン達のいる裏口から後衛の三番隊にも聞こえる報告が堂々と騎士全体に伝わった。

発砲は既にわかっていたものの、人身売買という言葉にアランも目を鋭く研ぎ澄ます。まだ突入したばかりにもかかわらずの報告ということは、奴隷にされていた被害者の現場を見たか、もしくは人質に取られたかのどちらかだろうと考える。「迎撃準備!」とアランも声を上げ、小隊と共に男達へと突入する。向こうもまた銃を構えることに躊躇いがない以上、自分達もまた躊躇いはしない。


直後には物陰に隠れた者同士の撃ち合いが開始する。

パァン!パァンッ!!と音に、壁に背中を預けながらアランは目で自分の小隊の安全を目視する。攻撃を避けたとはいえ、途中の狭い通路だったせいで全員が一箇所に身を隠すのは難しかった。エリックも含め全員にまだ怪我はないことを確認すると、そこでエリックの傍にいる騎士以外の中から一人一人指差しだけで指名した。まだ裏口から入ったばかりだというのに、ここで自分達だけが悠長に撃ち合いなどしていられない。人身売買ということは、被害者の存在が確定している。

アランの合図と共に、最初に銃撃無効化の騎士が飛び出した。銃弾が撃たれてもびくともしないまま駆け抜け、一番近距離にいる男の銃を持った腕ごと切り裂く。騎士一人の派手な動きに他の銃撃も集中させれば、そこで次に指名された騎士四名が飛び出した。銃弾を避け、剣で弾きながら次々と発砲する男達を無力化し、一瞬静まった通路に今度は合図も要らずアラン達は物陰から飛び出し一気に通り抜けた。


「ッ動くな!!この女が死んでも構わねぇのか騎士共!!」

甲高い悲鳴と共に、か細い女性の首に大振りのナイフを突き付ける男が喚いたのは、狭い通路を抜けた直後だった。武器商品の在庫だろう倉庫は広く、しかしいくつもの荷箱が積み上げられて視界が狭い。アランが喚起する前には他の騎士から「銃をしまえ!」と声が上がる。火薬がどの箱に入っているかもわからない以上、安易な発砲では大被害もあり得る。

目の前で人質を取る男もまた、腰の銃を使っていない理由もまた同じだ。


助けてと、震えながらか細い声を上げる女性は、既に顔を含めて数カ所に痣があった。やはり誘拐された女性だろうと考えながら、一度騎士達の動きは止まる。男から「武器を捨てろ」「早くしろ」「ぶっ殺してやる!!」と喚かれる中、アランは自然な動作で左手を背後に回す。自分の後方にいる騎士へと手の合図で指示を示した。

エリックも含め、誰もそのサインを注視していると気付かれない目の動きのまま読み取り、理解する。次の瞬間、騎士の一人が剣を鞘ごと外し横に放り捨てるように投げ積み上げられた箱にわざとぶつけ、その動きに合わせ反対側にいた騎士が気付かれないように靴先で近くにあった積み荷の箱をわざと蹴り崩す。一人二人ではない、小隊の半分近い騎士が機転を利かせアランの指示通りに周囲の積み荷を倒し、崩し、わざと音を立て敵の注意を散らした瞬間、アランは飛び出した。


倒れる積み荷に紛れるように姿勢を低め、男が視界の中で動きのあった積み荷にばかり目や耳が向いてしまう隙に、一気に懐まで距離を縮めた。男がはっと息を飲んだ時には、ナイフを握った手は掴まれ、そして剣を抜くまでもないアランの反対拳が顎を砕き意識を奪った。

女性が糸が切れてしまうように膝から崩れるのを受け止めるアランは、騎士達もすぐ駆けつけてくる中で今度は別方向からの悲鳴も聞き取った。倉庫から目でも捉えられる扉からではない、恐らくは隠し扉がどこかにあると違和感の覚えるくぐもった悲鳴と方向に神経を研ぎ澄ます。


「ッデルト達は被害者を三番隊にッその後ここで合流!!ブルーノ達は残って隠し部屋が閉じ込められている人がいないか捜査頼む!俺らはケビン隊長と合流を優先する!!」

最小限の言葉で指示を飛ばすアランに全員が一斉に応じた。アランが声を拾ったように、悲鳴が聞き取った他の騎士も怪しい場所はないかと目星を付ける。ただでさえ積み荷が多く、巨大なものもあれば何が隠されているかも、荷の中に人間が縛られているかもわからない。

倉庫を抜け、アランを含めた数名が次へと向かった。



………………



「カラム隊長!!一番隊ケビン班から奴隷被害者が運ばれてきました!」

「迅速に避難させろ!!ウォルト副隊長にも念の為伝令するように!!」


屋敷をぐるりと包囲した、後衛でカラムは報告に先行した騎士へと向かい指示を飛ばす。

七番隊の副隊長が新入りと共に突入班に加わっているものの、万が一にも緊急の治療が必要な場合も鑑みて早々に七番隊の動きを共有させる。

その間にも先行していた前衛の一番隊から奴隷被害者が担がれ運ばれ、三番隊へと受け渡されていた。正面突破したところで、商品が並べられた店内までは無人だったものの、それを抜けた広間ではまさに裏家業と商会が金と被害者達を交換している現場だった。最高のタイミングで最悪の現場を押さえた正面突破班の行動は流石早いとカラムは思う。

銃声が最初に聞こえた時点で、三番隊に被害者の受け入れ準備と商館からの退避経路封鎖を呼びかけたカラムの読み通り、次々と保護された被害者を安全な最後方へと足を止めさせることなく避難させていく。通り過ぎる被害者を目で追う限り、全員が自分の足で歩ける程度の心身だが、怪我や痣が必ずあることに僅かに顔を顰めた。一刻も早くどうか商館に強制調査をと当時提じたのは自分だが、こんなに早く日が決まったのは副団長であるクラークの提案、そして突入が決まったのは騎士団長ロデリックの決断だ。

そうでなければ、彼らは城下より遠い場所に売られていたかもしれないと思えば、背筋に一瞬だけ冷たいものも走った。


「騎士様!!助けて!助けてください!!」

ふと聞こえたいくつもの悲鳴に、カラムだけでなく周囲の騎士も目を向けた。

見れば、同じように汚れた服をした老若男女がバタバタと飛び出してきていた。正面門でなければ、アラン達の裏口でもない、恐らくは商館の荷馬車小屋だろうかとカラムは頭の中の建物全体図から見当をつける。

既に騎士が包囲内ではあったものの、荷馬車と馬小屋は離れた位置にあったことと監視時から人の出入りが見られなかった為、突入からは外されていた。そこから出てきた人々は半狂乱に近い顔のまま近くにいる騎士に飛びつき、若い男や女から捲し立てる。そこの馬小屋と馬車庫でずっと奴隷として強制労働させられていた。騎士が現れて助けを求めて飛び出してきたと、その叫びに近い悲鳴にカラムも耳を傾けながら、…………それにしては数が多いと思う。

子どもが一人、年配者が一人、若い女性が一人、男が三人。全員が汚れた恰好で泥と藁や馬の糞で汚れ粗末な薄着だったものの、いくら大規模な商館とはいえ馬車の管理と馬の世話だけに六人もいるものかと考える。三番隊の中からひと班に馬小屋の方へと捜査へ命じながら、カラムはゆっくり歩み寄る。


「……三番隊!捕縛を許可する!」

はっ!!と、カラムの発声と共に騎士達も動きは迷わなかった。

悲鳴を上げ、中には絶望に顔を歪め、自分は被害者なのに、酷いと泣き叫ぶ者もいる中、一瞬で騎士に身動きを奪われた。

奴隷被害者とはいえ、自分から逃げてきた者ほど加害者が中に〝紛れ込み〟やすい。騎士隊長であるカラムの許可のもと、実力行使で押さえつけた騎士達は連携して彼らの衣服から所持品も調べる。二名の男の衣服の下からはナイフ、もう一人からは銃が見つかった。


「男性はそのまま確保、他の三名は別々の場所で聴取するように」

クソッ!!と悪態吐く男達が、また三名のそれぞれを睨み、あいつらも全員こっち側だと喚き出す中、それぞれが騎士により別々の場所へと監視と護衛もかねて連れて行かれた。特に、女性については警戒と入念に確かめるようにとカラムは近くにいる騎士へと耳打ちで命じる。恐らく彼女も、商会側の人間だと考える。

若い男三名が労働力にいれば、老人と子どもまでそこに配備する必要はない。むしろ腰の曲がった老人と幼い子どもでは成人男性と組ませても労働の足手纏いになり得る。しかも老人と子どもは逃げてきた時、明らかに男達とは反対方向へと怯えた様子で逃げ、引き離された後は互いのことを心配しあうように顔を向けていた。おそらくあの二人が実質狭く暗く汚れる馬小屋と馬車の管理をやらされていたのだろうと考える。

女性は紛れ込むように老人と子どもと同じ方向に逃げてはきたが、女性は若く、パッと見ても一般的に男性から好まれやすい容姿をしていた。そんな女性を人と関わらない労働に置くのに違和感がある。若くて綺麗な女性ほど別の行為を強制されるものだと、今までにもあった奴隷被害者保護で学んでいる。いっそ、何かの理由でただの馬小屋管理に配属されていたのであればそれで良い。その納得できる理由を騎士が聞くだけである。ただ、弱い立場の奴隷被害者を最後まで脅し、加害者でありながら被害者のふりをするような外道であれば到底見逃すわけにはいかない。


「ッカラム隊長!!緊急です!!!」

どうした!と、突如放たれた三番隊からの報告にカラムもすぐに声を張り上げ、返す。駆け込んできた騎士は、今カラムがいる正面門側でもなければ裏口方向でもない、両隣に隣接する建物側に控えていた班の騎士だった。

足の速さとまた本隊騎士になって二年の騎士は、走ってきたことよりも報告すること自体にバクバクと心臓を跳ねさせながら直属の上官である騎士隊長に肺を膨らませた。こんな事態は初めてだと、本人も未だ混乱しているのをカラムはその形相ですぐにわかった。しかし被害者ではなく騎士である以上、迅速な報告が最優先だ。


「ルース、君は確か北側の配備だったな。隣接建物に被害か?」

「!はっはい……商館の窓を割り飛び出してきた男達が複数おりましてッ二名はそのまま落下しましたが、他は隣接の屋根に飛び移りっ……」

「人質は?」

「おりません!逃亡者も三番隊で追走し確保いたしましたが、しかしその、その逃亡者の中に商館の店主がおりまして!!もっ申し訳ありません……」

どうした、と。そこからはカラムも落ち着いていた。建物に被害はなく、人質が取られたわけでなければ殺されたわけでもない。商館の店主がと今回の最重要人物についての緊急事項であれば、少なくとも被害者の生死が関わらないだけ急かす必要はない。騎士もあくまで言いにくい言葉に汗を流しながらも口を止めるわけではない。騎士がここまで言いにくくなることは、二年目とはいえ珍しいと思いつつカラムは「ゆっくりで良い」と促した、が。



「はっ……()()()騎士隊長殿が、死亡()()()しまい……!!!」



「……………………」

一瞬、言葉を失ったのはカラムだけではなかった。混乱する騎士の話に耳を傾けていた騎士達も一瞬意味がわからない。

今回の任務、任命されたのは一番隊と三番隊から複数小隊、そして七番隊の小隊だ。八番隊の任務ではない。重要参考人死亡も大ごとであることは間違いないが、一番隊でも三番隊でもない騎士がここで出てくるのが一番の謎だった。

カラムから意識的に落ち着けた声で「もう一度頼む」と繰り返させたが、やはり八番隊のそして騎士隊長。さらには現騎士隊長であれば、確かに死亡させてしまったことも納得はできた。


「…………それは、ハリソン・ディルクで間違い無いか?」

はい!と、その名が出てこなかった騎士から迷わない返答をされ、カラムは集中力が切れかけた。

何故、どうして、今回の任務は別段騎士団長とも副団長とも因縁のない任務であり、ハリソンは関わりがない筈であり、しかも今日彼は休息日で早朝演習でも姿を見なかったと、カラムは思考を巡らせかけ、途中で止める。今はハリソンよりも、商館摘発に自分は頭を使わなければならない。

状況は、後で報告を受ける。ハリソンは決して帰さず保護した者と同じく最後衛で待機させるようにと命じ、一度頭から追い出した。



…………………



「ハリソン!!!!何故お前が今回の任務に参加している?!八番隊には任命されなかっただろう!!」

「参加してはいない」


東側最後衛で、ハリソン・ディルクは誰よりも大声で騎士に怒鳴り散らされていた。

今は騎士隊長になったハリソンの方が立場は上であるものの、少し前までは隊員騎士どころか新兵かつ問題児であるハリソンを相手に、経験の長い騎士ほど敬語がまだ馴染まない者は多い。ハリソンが若いからでも、騎士隊長になったのが最近だからでもない。ただ問題児であり、まだ騎士として不相応な人格であるからだ。

足下には、七番隊の傷を癒やす特殊能力を持つ騎士がそれを使うまでもないと判断した最重要人物の死体が横たえられていた。


「じゃあ何故ここにいるのだ!!?」

「武器の調達だ」

は?!!と、今度は騎士も思わず耳を疑った。最重要人物である店主を追いかけ、確保する直前で急にハリソンにより始末された。どう考えてもハリソンが隊の区分を越えた行為をしたようにしか思えない。

しかしハリソンは言い訳のつもりもなければ、決して手柄を横取りしようとして誤って死なせたわけでもない。むしろ今日の大規模任務さえハリソンは気にも留めず、さっきまでほぼ覚えていなかった。

休息日となり、ナイフの本数が減り始めていることに気付いたハリソンが珍しく私用で城下に降りた。目的はナイフの補充だ。他の騎士団の武器と異なり、ナイフは所持は認められるものの公式のものではない。その為、補充も自分で買わなければならない。

大量のナイフをその分格安で売ってくれる武具商館はこの上なく都合が良かった。市場で買うよりも一度に大量に手に入るお陰で手間もなく、そして大量に買えば買うほど市場よりも安くなることもある。品質が市場の投げ売りと同程度か以下でも、新品の筈なのに中古がまじっていようと構わないハリソンが何度も足を運んだ店だ。

しかし、来てみれば店はちょうど休館日であり、しかも騎士が大勢囲んで突入している。そういえば人身売買の疑いもある武具商会摘発任務があったようなと思えば、目の前で商会の店主が屋根伝いに逃げているところだった。知らなかったとはいえ、自分が騎士として得た報酬で購入したナイフが薄汚い裏家業の人間が仕入れたものであることも、騎士団から支給された金が結果として裏家業に流れていたこともただただ不快で腹立たしかったハリソンが、ちょうど「店主だ!!」という騎士の叫びを聞き、取るべき行動は一つしかなかった。


「お前っ………まさかここで武器を買っていたというのか?!」

「返品した」

信じられないと、目を見開く騎士にハリソンは迷うことなく人差し指で足下を指差した。………………猟奇的殺人としか思えないほど、顔面から首、腹から足にいたるまで至る所に十本以上ナイフが刺さり絶命している店主を。死体を見慣れた騎士でさえ、思わず顔を顰めるほどの無残な死体だ。

相手は人身売買と違法な武器売買を裏家業を行っていた重要犯罪者であり、結果として死罪ではあったと騎士も思う。しかし、それをなんの反省の色もなく見るも無残にナイフでメッタ刺しにした上で報復でも処罰でもなく「返品」と宣う目の前の騎士隊長に、やはり彼は騎士団から除名するべきだったと怒る騎士は本気で思う。

怒り、怒鳴り、始末書では済まない覚悟しろという説教に、面倒がり帰ろうとするハリソンを何度も止める三番隊騎士の健闘は商館の完全制圧完了まで続いた。



………………



「アラン!!!!お前は!!なんの為にエリックを任せたと思ってるんだ!!」


申し訳ありません!!!とここでも響く怒声に、アランは深く頭を下げた。

制圧が完了し、被害者の保護と敵勢力の鎮圧と確保を終え後処理の大部分を三番隊に預けた中、今回の任務で奴隷狩りの親玉を無力化し、人質に一人も被害を出さずに活躍した一番隊副隊長は上官に大目玉を受けていた。

周囲の一番隊もなんとも言えない表情でアランと騎士隊長、そして背後に座るエリックを見つめてしまう。

アランが功績を立てたことは間違い無い。そして、新入りであるエリックのいる班に保護した被害者の三番隊への引き渡しと、その後に武器倉庫内の捜査を任せたことそのものは間違いではないと全員が思う。新入りの騎士を、わざわざ前線の中でも最も危険な最前線にまで引っ張り込む必要はない。……しかし。


「お前が最善線に来てどうする!!!エリックをお前の班にして共に被害者の受け渡しに立つべきだろう!!」

申し訳ありません!とアランも言い訳ができない。

突然始まった臨戦態勢と、ついいつもの感覚でまだ戦場が慣れていないエリックと自分との行動を分けるべきだと考えてしまった。もともと副隊長である自分がエリックを守り補助する為もあり、預かったというのに別行動しては意味がない。たとえ安全な役目を与えたとはいえ言い訳にならない。



しかもその結果エリックに怪我を負わせてしまった今、責任もある。



「け、ケビン隊長……本当にこれは自分の不注意……いえ、実力不足ですので………」

七番隊の騎士に包帯を巻かれながらも、怪我以外は元気なエリックの顔色は悪くなる一方だった。まさか自分のせいで、副隊長のアランが大声で叱られるなどどうすれば良いかわからない。

まさか初の大規模任務で自分だけが負傷するなど、情けなさよりも恥ずかしくなってくるエリックは、いっそ自分に怒鳴って欲しいと心底思う。しかし、アランを騎士隊長が怒鳴っても、エリックを責めようと思う騎士は一人もいなければ、アランに怒鳴る騎士隊長でさえエリックを叱る気は毛頭ない。むしろ


「エリック!お前はよくやった!!今回の一番隊で最功労はお前だ胸を張れ!!」

叱られるアランに反し、今度は大声で褒められるエリックはしかしアランの後では素直に喜べない。

一番隊の先輩騎士達と共に、保護した女性を連れて三番隊へ受け渡すべく来た道を一度引き返し外にでたエリック達だったが、そこまでは良かった。外に出た、もう大丈夫ですと三番隊に女性が保護対象者であることを口答で伝えたその最中。



音もなく頭上から落ちてきた子どもを、エリックが受け止めた。



突然保護対象の女性から離れたエリックに、騎士達が声を上げたのとほぼ同時だった。建物の窓から放り投げられた子どもは気を失っており、そして高所から子どもとはいえ人間一人を飛び込み受け止めたエリックは落下の衝撃をそのままに地面に肩からぶつかり、負傷した。

ちょうど建物の二階で、先行していた騎士隊長ケビン班に追い詰められた裏家業が一瞬でも気を引こうと商品の子どもをわざと窓から投げた時だった。

幸い子どもに落下による負傷はなく、生きて保護できたのもあの一瞬で急に降ってきた子どもに気付けたエリックの功績だ。初任務でそこまで動けた騎士は、それこそ一番隊ではアラン以来の快挙でもある。

しかし、………………そのアランがエリックと共についていれば、間違い無くエリック一人が子どもを受け止め負傷することはなかったとケビンは思う。隊長である自分よりも遙かに身のこなしに長け、そして身体能力も高い若き副隊長だ。だからこそ、ここはしっかり叱るべきだと判断した。


「本当にエリック、よく子どもが降ってくるの気付けたな」

「俺達どころか三番隊も気付けていなかったのに」

事態も収束した中、騎士達も褒めるようにエリックに笑いかけ、素直に褒める。アランが叱られるのは仕方が無いとはいえ、若干アランが不憫に思い庇いたい気持ちとエリックが素直に喜べる状況を作ってやりたい気持ちが重なった。アランも、功績そのもので言えば活躍したのだから。

撤退準備が進む中、よくやった、すごいぞ、視野が広いなと口々に褒められながら、エリックもようやく「いえそんな」以外の言葉と共に、痛まない方の腕を動かし、頬を掻いた。


「……落下物には特に、注意を怠らない癖がついたので………」


そう、最後は褒められすぎて痛みよりもはにかむエリックは、責任を持ったアランに肩を貸され謝られながらも初大規模任務を終えた。





………………



………




「………ということがありまして。始末そのものはあっさりでしたが、色々後処理が大変な事件でしたね……」


あはは、と近衛騎士エリックは苦笑しながらそこで話を一度切った。

ぽかんと口を開けたプライド達が、数秒の沈黙を作ってしまえばやはり話すべきではなかっただろうかと若干の羞恥がはやくも襲う。

遅れてパチパチと、拍手を送ったのは是非聞かせて欲しいと希望した第一王女と第二王女だ。


「本っ当に大変なことがあったのね……!聞けて良かったわ、エリック副隊長の初大規模任務。まさに武勇伝ね」

「あれ?お姉様っ。武勇伝はアラン隊長とエリック副隊長との初合同任務のことでは?」

「カラム隊長の混乱に乗じた奴隷商人全員摘発も充分活躍としては聞き応えありましたね」

「………………すみません、自分。ハリソンさんの始末書話がちょっと頭に残りすぎて………」



「いえ、………騎士団が関わった中でも、ある意味〝大騒動〟になった任務の話です……」



プライドとティアラだけでなく、ステイルや頭を抱えたアーサーまでそれぞれ印象が強く残った内容のせいで本題を忘れてしまった中、エリックは苦笑いしながらも正答を返した。

もともとは「武勇伝がないか」と王女二人に聞かれて話したエリックだが、最初に「武勇伝というよりも……」と訂正した上で話したのに、王女達の中でもしっかりこれも武勇伝として聞かれてしまった。


確かに見方によっては武勇伝と言えなくもないが、アランは怒られ、自分は負傷し、ハリソンは始末書を含めた処罰も受け、違法商館よりも騎士団内の後始末が大変だったそれは「武勇」というよりも「向こう見ず」に近かったと、エリックは苦笑しながら密かに思った。


ラス為アニメSeason2放送が明日です!

https://lastame.com/


TOKYO MXで明日から毎週火曜22:00~

無料のABEMAでは明日のから毎週火曜22:30~


に放送です。

近衛騎士四名も再び出番がございます!!

是非、よろしくお願い致します…………!!

皆様に心からの感謝を。


==


「バッドエンドから一年後~誰にも期待されない魔法使いの私が、伝説の精霊魔法使いに実力を認められ王子を救う~」 略して「バドいち」連載中です。

ncode.syosetu.com/n9682ly/

こちらも是非よろしくお願いします。

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いつも更新ありがとうございます。明日からのアニメも楽しみにしてます♪
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