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【アニメ2期決定!】悲劇の元凶となる最強外道ラスボス女王は民の為に尽くします。〜ラスボスチートと王女の権威で救える人は救いたい〜  作者: 天壱
来襲侍女と襲来

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そして降りる。


「お疲れさまです……」


私達が全員入って再び慎重に扉が施錠されてから、声を抑えつつも改めて私は二人に声で労う。

扉の先の部屋は想定以上にこじんまりとした狭さだった。他の扉も全て等間隔だったから、同じくらいの大きさなのだろう。横幅だけでなく、奥行きもあまりない。一人用のテーブルと椅子を置いたらもう簡易ベッドを置く幅もないくらいだ。

特にこの部屋はカモフラージュだからだろうか、箱に詰められた荷物が無造作に積み上げられているから余計に狭い。更にはアラン隊長とエリック副隊長が意識を奪ったのだろう男達三人が今は自立することができず倒れている。

エリック副隊長が部屋にあった縄で縛り上げているのをそこでカラム隊長も手伝い始めた。倒れた男達から大ぶりのナイフを腰の装備から取り上げるのを見ると、今回も武器を出す暇もなく意識を奪われたのだろうとわかった。全員寝転がっていたわけがないから、やっぱり一瞬で気絶させて倒れるのを受け止めてのあの物音の少なさだ。

カラム隊長が「見事だった」と物音の少なさをだろう褒めたら、エリック副隊長が「ありがとうございます」と柔らかく笑いながらも首を横に振った。


「フィリップ様が絶好の位置に送って下さりましたから。背後だったので一瞬でした」

二人同時はアラン隊長ですし、と。それにしてもあの殆ど無音で済ませてしまうのは充分すごいと思うけれども。少なくともラスボスチートの私でも無音は多分難しい。……というか、意識を手放した男性に潰される図しか悲しいことに想像できない。

男性三人を壁に寄り掛からせた状態でもやっぱり床の幅を取る。私達全員が入りきったところで今は殆ど足の踏み場もないくらいのぎゅうぎゅう詰めだ。

ヴァルに至っては迷わず荷物の箱の上に避難していた。あまりの狭さにアーサーも「失礼します」と私の肩に腕を回して支えてくれた。本当にそれくらいないと一歩進もうとするだけで転びかねない荷物の多さと足場の少なさだ。

肝心の地下室への入口はと、皆の靴と荷物で埋まった床を注視する。可能性としてはやっぱり積み上がっている荷物の真下だろうと思ったけれど、既にアラン隊長の靴先がコンコンとその入口を示していた。


「入口は最初から剥き出しでした。荷物の跡はあるんで、多分普段は隠しているんでしょうね」

さっきの騒ぎで飛びだしてきたままなんでしょうと、アラン隊長は真横にずらされた箱の山に手をついた。そのまま試しに持ち上げようとしてみたら結構な重さだったらしく「自分でも多分一度に二箱が限界ですね」と言うから、一番隊隊長でそうなら普通の人じゃ二人で一箱が限度ではないだろうかと検討付ける。


地下の入口は人一人入れるくらいの正方形をした鉄製の扉だった。取っ手はなく、手を掛ける為の溝で開く方式だ。しっかりと厳重に鍵穴が存在している。

試しに軽くアラン隊長が扉に手を掛けて確かめたけれど、やっぱり鍵が閉まって動かない。カモフラージュは重くて面倒でも鍵はきちんと掛けたらしい。

エリック副隊長が「アラン隊長」と男達の持ち物から回収したのだろう鍵を投げ渡す。弧を描いた鍵を片手で受け取るアラン隊長が、そのまま流れるように扉の鍵穴に差し込んだ。ガチャリとしっかり施錠が解けた音がし、再び同じように手を掛けてアラン隊長が引っ張った。けれど、ぐっと微弱に持ち上がる程度で開く兆しがない。

どうやら内側からも施錠されているらしい。ここまで厳重だとただの保管庫ではないのはもう確実になってきた。内側からも鍵がないと開けず、更には外側にも鍵が掛けられてその上であんな超重量の荷物で蓋がされているなんて、明らかに外からだけでなく〝内側〟からも逃がさないという意思だ。考えるだけでぞっとして自分で自分の腕を抱き締めてしまう。

鉄製の入口から考えても、この先も鉄で舗装されている可能性があるからヴァルに頼むのも難しい。アーサーが「できるか?」と入口を指差してステイルに投げかけたけれど、その返事を得る前にカラム隊長が一声かけて前に出た。必要ない、と第一王子に手伝わせるのも断り、歩み寄る。

アラン隊長が譲った入口の前に今度はカラム隊長が代わりに片膝を立てて腰を下ろした。そのままアラン隊長がやったのと同じように手を掛けた、次の瞬間。


バキバキバキィィ……


鉄の、扉が。

まるで粘土でも剥がすように、半弧に曲げられながら強制的に取り外される。ゆっくりと時間をかけて分厚い鉄の板が持ち上げられているのはその強固さよりも、単純になるべく音を立てない為だろう。前世のマンホールくらいの厚さは優にある鉄の板が施錠の意味もなくベリベリと剥がされる光景は理解できても凄まじい。しかも騎士の中では細身のカラム隊長の手で行われるから余計に驚異的な光景に見える。

〝怪力〟の特殊能力にかかれば施錠も全く意味を成さない。物音さえ気にしなければ今までの扉も全部カラム隊長一人でポンポン引き剥がせたのだろうなと思うと余計にその驚異がわかる。床に固定されていた金具も外れて飛んで、ぽっかりと正方形の穴だけが残った。覗き込めば木材だけでなく鉄か銅だろうかでもしっかりと舗装された上に梯子がはめ込まれるように固定されていた。


「アラン、エリックが先行を。ハリソンはここで見張りを頼もう」

音を立てないように丁寧に鉄板を床へ置いたカラム隊長からの指示に、アラン隊長とエリック副隊長が短く応じた。ハリソン副隊長は、……無言のままもの凄い不満そうに眉が寄っていた。それでもアーサーが「頼みます」とお願いしたら今度は声で肯定はしてくれた。多分本音は「何故私が待機を」と言いたいのだろうけれど、温度感知の特殊能力のロドニーは私の傍から離れられない。

一番隊のアラン隊長とエリック副隊長が先行は得意だろうし、カラム隊長も今と同じように特殊能力がこの先に必要になる可能性がある。アーサーもステイルに私の護衛をがっつり任されている。それに、ハリソン副隊長なら万が一この部屋に誰かが入ってきても一瞬で対処できるだろう。それこそ何十人相手でも、恐らく問題無く。もうこの部屋まで看守達に入ってこられたらこちらも隠しようがないし、その時は思う存分戦闘して頂いても問題無い。


ハリソン副隊長の了解を得たところで、ヴァルはと荷物の上に顔を向ければ、意外そうにちょっと眉を上げてカラム隊長を凝視していた。カラム隊長の特殊能力はハナズオで彼も救出の際にがっつり目にした筈だけれど、もしかして忘れていたのだろうか。いや単純に近衛騎士達の特殊能力自体彼は気に留めてなかった可能性もある。

それでもアラン隊長とエリック副隊長が最初に降りれば、そこで思い出したようにこちらへ歩んできてくれた。アラン隊長とエリック副隊長の後に私とステイル、追ってアーサーの次に降りてくるようにと順番をステイルがヴァルに指示する。最後がカラム隊長、そしてロドニーだ。


「どう思うヴァル。地下ということはまた特上用か?」

「だろうな。こんだけ良い基地なら他も揃ってるんだろうが」

ケッ、と。ステイルからの投げかけに吐き捨てるヴァルは、ヒラヒラと手で虫でも払うような動作で天井を仰いだ。

そういえばまだステイル達にレオナルドの詳細は話していない。予知した民ということで特殊能力者であることは前提だけど、まだ彼の特殊能力を私が把握していることまでは話していない。エルドも敢えてぼやかしていた。

しかも彼の特殊能力はさらに貴重な要素があるということで、つまりステイルの推察通り彼はランク付けすれば間違いない〝特上〟だ。

今回はそうでなくてもフリージア王国の民という彼らにとっても違法奴隷だから厳重に隠しているのだろうけれど、たとえ違法になる前でも彼はここに入れられていただろう。

「他も?」と眉を顰めて聞き返すステイルにヴァルはニヤリと敢えてのように嫌味をまじえた不快に見える笑みを浮かべてみせた。


「拷問部屋ぐらいは期待できるだろうぜ」

いや調教部屋か、と。悪戯に言い直すヴァルの言葉に思わず口の中を飲み込んだ。胸を押さえながら背筋に冷たいものが駆け巡る。

頭ではわかっていたつもりが、ここがどういう施設なのか改めて思い知らされる。奴隷をただ育成管理するだけじゃない。残酷だけれど、当然そういう場所も設備として必要とされる。表向きのそういう部屋も別にあるのだろうけれど、ここまで厳重に閉じ込めている奴隷をわざわざ調教の度に出すとは思えない。

つまりは商品として出すまで地下で全てが〝完結〟できるようになっている可能性が高い。


「内部の構造にも覚えはあるか」

「〝そういう〟場所で雇われていた奴が同業者にいただけだ」

崖地帯じゃそこまで凝った造りはできなかったと、そう思い出すように続けるヴァルの言葉にステイルはゴーグルへ指先を添える。

崖地帯、ということはと聞くとあの頃かと思い出す。たしかにあの地帯じゃそれこそ殲滅戦のような洞穴と同じ構造が精々だろう。ヴァルの前科は把握しているけれど、その前は人身売買関係ではなかったのか。まぁ少なくとも裏稼業に変わりはないだろう。……というか、当時はヴァルも何歳ぐらいかと思い出せば確かにまぁ組織を渡り歩きするような年でもない。ゴロツキが良いところだろう。

ステイルが「なら拷問部屋はお前も初見か」と返したら「どうだかな」と短く呟いてからまたケッと吐き付けた。不快なことを思い出したように視線を浮かしてから舌打ちまで鳴らしたヴァルにステイルも上目に気付いたけれど、それからは「まぁ良い」と切った。私も口を意識的にぴっちり閉じる。現状でここまで貢献してくれてる人に言及するのは流石に不誠実だ。ステイルもそう思ったのだろう。ただでさえ今日一番の嫌っっそうな顔だ。

もう彼の前科はわかってることだし、掘り出す必要はない。……と、そこで一瞬気付いてしまった気がするけれど思考を止めた。うん、これ以上考えても誰も幸せにならない。


先に最下層まで降りたのだろうアラン隊長からの安全確認後、一度途中で上がってきたのだろうエリック副隊長からも「大丈夫です」と私達に合図がかけられる。

それからすぐ梯子で引っ込んでしまったエリック副隊長を追うように、私達もまたは梯子に手をかけた。


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